第17話 月曜日の朝


「ピピピ、ピ、ピピ―――」


うるさい目覚ましの音が耳に響く。


少し近くに置きすぎたか…


手探りで目覚まし時計を止める。そして、ふと今日が月曜であることを思い出す。


「はあ」

自然とため息が出てしまう。


いつも月曜の朝は気が重い。昨日あった出来事も徐々に思いだして、もっと学校に行きたくなくなる。


恥ずかしい。何してたんだ僕は…。


誰かに見られてたらどうしよう。

今日は休もうかな…


でも朝食を作るのは、いつもと変わらない。学校はさぼってもいいが、家事はほとんどまかせっきりだから、これだけはやらなければならない。


もう一度溜息をついて、部屋を出る。


あれ?美鈴の部屋履きがない。トイレにでも行っているんだろうか。


はて、と首を傾げながら階段を下りる。


いつも思うが、この階段狭すぎないか?部屋はあれだけ広いの…に……?



美鈴がいた。リビングの椅子で珈琲を静かに啜っていた。


向こうもこっちに気づいて、目があう。何を言えばいいのかわからなくなって、思わず黙りこくってしまう。


「………」

「………」


「……ねえ、お弁当のことなんだけどさ」


意味ありげに笑みを浮かべて、彼女は喋りだす。


「え?なに?」


「…二人で作らない?」


少しぶっきらぼうに、そして少し恥ずかしそうに彼女は答える。


「なんで?」


料理なんてのは複数人で作るようなものじゃない。

息を合わせて作る練習をしておかないと、ただの足手まといになるだけだ。


「む。だって昨日彩萌とお楽しみだったんでしょ?」


「は?いや、まあ、そうか…」


確かにちょっとは楽しかったかもしれない。


僕としたことが、好きでもない異性と出かけて楽しいと思ってしまうなんて…

気を引き締めよう。


「あー。やっぱりそうなんだ。でも、同棲してるのは私なんだからね?」


「ど、同棲って…」


なんてことを言うんだ。美鈴、君まで――


「あ、」


気づいたのか、トマトみたいに顔を赤くしやがって。…僕はトマト嫌いだから消えてくれ、なるべく今すぐ。


「…とにかく、家にいるうちは私が独り占めするんだからね!」


え?いや、別に僕、君のものじゃないんですけど…。

てか、そんな恥ずかしいことよく言えるな。…人いないけど


痛いぞ。


ていうか、まさか、それを言うためだけにこんな早起きしたのか?

はあ…、救いようがないな。心が痛くなってくるじゃないか…


「…わかった。でも、大したことは任せられないよ?グダグダ時間を遅らせたくないからね。」


「えー。」


「なに?」


「だってせっかく早起きしてるのに、そんなに時間に厳しくしなくてもいいじゃない。」


む、確かにそうだ…


「い、いや、心持の問題でしょ?もうテストも近いし…」


「テストって、私と旅人なら大丈夫でしょ?」


「…優等生にあるまじき発言だね。…もう、君は遠慮というものを知らないの?」


「あら、いつ私が優等生になったのかしら。それに、私はこう見えて我が儘よ?」


「いや、カッコいいけど矛盾してるんだよなー。どうでもいいけど。」


「…で、でも、やっぱりその条件は聞いてないわ!とりあえず、さっきの内容を変更してもらおうかしら。」


んー。

ぶっちゃけ、結構嫌だけど…

まあ、早起きしてまで頼まれたのなら、断れない。

というか断る理由がない。


「わかったよ。はあ、さっさとエプロンかなにか着てくれ。」


言った途端。彼女の顔がパッと明るくなる。


僕も昨日買った髪止めを着ける。


近くから息を呑む音が聞こえる。

どうだ、いいだろう。これは僕もお気に入りだ。

雨がモチーフにされおり、青い宝石が、動くたびに揺れる。


最初は派手かと思ったが、試着してみると、結構抑えられるものなんだなと思った。

かなりカッコいい。学校へはさすがにつけていけないような気がするが…


そこは先生と要相談だな。









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