第8話 高校生には荷が重すぎる仕事


「久しぶり…ではないか、根黒さんこんにちは。」


根黒さんというのは僕の担当の人兼この車の運転手だ。


「おう、旅人も元気そうでよかった。……その髪型、まさか学校でしてきたのか?」


「うん、髪がうざすぎてくくった。」


「まじか……。」


めちゃくちゃ悔しそうにしながらも根黒さんは車を出す。

なぜだろう?かなり気になるが、今はそんなことを考えている時ではない。


「で、今回の仕事はなんなの?四宮さんが直接僕に電話かけてきて、しかも『今回の依頼は君にとって胸糞悪いかもしれない』とか、いったいどうしたの?」


「ああ、それについてだが、……今回、君がデータを盗んでもらうのは、君も知っているあの『山崎建設』だ。」


………え? 今なんて言ったこの人…………だって、山崎建設って―――――――。


「え?」


僕は驚きと信じられない思いで、ほとんど声が出なかった。


「ああ、信じられないかもしれないが、あの『山崎建設』だ。

……………俺も旅人のことは少し調べさせてもらってるから、旅人の幼馴染のお母さんが山崎社長と結婚、いや再婚したことも知ってる。

よくあることだが、この会社でも社長が売上を改竄して、自分の給料に上乗せされている疑いがかかった。もちろん俺も何回も確認した、なんせ大企業だしな。

……………だが、調べれば調べるほどこの社長が怪しく見えてくる。

…それから、調べている中で、こんなものを見つけた。見てくれ。」


半ば放心状態で今の話を聞いていた僕は根黒さんからファイルのようなものを受けとって、我に返る。


その中身を見て、僕は息をのまずにはいられなかった。




市役所の健康福祉課の書類だろうか。




香奈さん(美鈴の母)の苦悩がすごく生々しく書かれていた。

山崎社長はほとんど家に帰ってこず、帰ってきたら人にあたりが激しく、むちゃくちゃな性格で酒を飲むと家族に暴力をふるっていたこと。美鈴にも、この高校に行かないと家を追い出すと言って脅していたこと。生活費もそんなに出してくれず、自分の娯楽などに費やしていた、など。

離婚してといっても印を押してくれない、騙された、と。

本当に苦しそう、放っておくと何かの障害を抱えてしまうのではないか、と担当になった人の主観での書留もあった。


そういえば、あいつ部活やってないのに最近怪我多かったな。

気づいてやれなかったんだ。僕は。そう思うと美鈴に申し訳ない気持ちと、自分への怒りが込み上げてきた。


「こ、れ………は。」


「俺もびっくりしたよ、あんなに外面の良い社長が?ってね。でも、これを見たら『本当なんだな』って思った。たとえ君の知り合いの父親でも、これはほっておいてはいけない。」


「…………はい。山崎建設のデータを盗むのは分かりました。…でも、それじゃあ、香奈さん達は、美鈴はどうなるんですか?これを公表したら、完全にこの会社はつぶれますし、もしかしたら、美鈴たちも風評被害も……。」


「いや、そのデータのことは香奈さんにも君の両親も了承済みで、この家族へのDVも一緒に公開するから、大丈夫だ。……二人はホームレスになるだろうがな。」


「え?」


「よし着いたぞ、詳しい話はあとでする。頑張ってくれよ、Traveller?」


「いや、めちゃくちゃ気になるんですけど?それ聞かなかったら安心してできないよ。」


「………わがままだな。…そうだな、君の幼馴染は大丈夫だ。。」


「はあ!?ちょっと!…もう、わかったよ。やりますよやります。よくわからないけど、美鈴が大丈夫だってことだけはわかったからね。」


「よく言った。……まあ、そんなに思いつめずにいつも通りやってくれたらいいさ。

大企業だが、旅人なら簡単だろう?」


よく言ってくれる。やるのはか弱い高校生の僕なのに。

まあ、事実だし、とても信頼してくれてるってことなんだろうけど。


少しため息を吐きながら、に入る。





さあ、ここからはだ。






――――――――――――――――

こんばんは、柊 季楽です。

ようやく、タイトル回収っぽい流れになってきましたね。

ストーリーなどについて、質問等がありましたら遠慮なく質問してください!

できればその話の応援コメントに書いてくれると嬉しいです(わかりやすいので)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る