第7話 急変する少年

今回は神崎さんsideです。




「~~~~~♪」


あ、旅人くんが歌ってた曲だ!


そちらの方を向くと、やはり旅人の携帯が鳴っているらしかった。

美鈴が起こり気味に眠っている旅人をおこす。

旅人は眠そうにしながらも目を開き、携帯を見て何かを呟くといきなり席から立ち上がった。


「先生、少し電話するんで教室から出ますね。」


え?普通って謝罪じゃないの?


「…………は、はい、わかりました。どうぞどうぞ。」


え?先生もなんで許可してるの?


それを聞くと旅人はすぐに教室を出ていく。彩萌はもう何が何だかわからない。



それから5分ほどたつと、旅人は戻ってきた。


「……今日も早退で。」


声色がいつもと違った。真剣だ。


「は、はい。」


そういうと、荷物をまとめて、


「ああ、もうこの髪ほんと邪魔だなあ。………あ、美鈴さあ、ヘアピンとヘアゴムもってない?」


「…ふぇ!?…あ、いや持ってるけど。」


「じゃあ、ちょっと貸してくれない?」


「わ、わかった。…はい、これとこれ。」


「お、サンキュ。」


旅人は貰った二つを慣れた手つきで身に着ける。


着けた後の彼を見て、クラスはざわついた。


そう、彼は、………………とても可愛かった。

髪はポニーテールにしており、ヘアピンは普通に前髪に着けていた。


いや本当にモデルかと思うほど美人に見えて、男子用の制服が違和感しかなかった。


「誰、あの人。」

不覚にも呟いてしまうほど、とても似合っていた。


このことは、幼馴染である美鈴も知らなかったらしく、ぽかんと口を開けていた。

それを見て彼は、


「どう?父さんにしか見せたことないけど、似合ってる?」


笑顔を見せながら言う。

私は自分が女子なのにもかかわらず、その笑顔に見惚れてしまった。


その時私が冷静であったのなら、彼が長髪にしていた理由に気づけていたのだろうが、そんなことを考える余裕はなかった。


「いや、僕らしくなかったな。……それじゃあ、ね。今日はさようなら。」


静かに教室の扉はスライドし、そして閉じた。





そのあともクラスの空気は凍り付いて、気づいたら一限目終了のチャイムが鳴っていた。











―――――――――――――――――――

どうも柊 季楽です。

えーと、神崎さんがなぜ旅人の携帯が鳴ったのに驚いているのかというと、

今までは、四宮さんが先生に連絡して、割と自然な流れで早退していたからです。

早退することには大して驚いていません。

あと、前に美鈴の「あれほどマナーモードにしてと言っていたのに」的な発言がありましたが、あれは旅人が中学の時からマナーモードにしていなかったからです。

『まだマナーモードにしていなかったの?』的なニュアンスがあります。

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