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「彼だよ」
老紳士の示す先には 写真が掲げられていた
青年の姿の モノクロの写真が
若い娘には 直ぐには 呑み込めなかった
ただ 呆然とするだけで
遠く写真の青年に目をやった
「わたしが もっと早く 来ていれば
連れ戻せたかもしれない」
老紳士は 悔しそうに写真を見た
「わたしは どれほど 彼に嫉妬したことか
死んだと 聞かされた時は
どれほどまでも 恨んだことか」
「こんな田舎に こんな天才が生まれるなんて
わたしは 彼の全てに嫉妬したよ
わたしの尊敬する先生に 見出されたのだからね
先生は 帰国してたんだ
晩年は 祖国の教育に捧げるつもりで
そんな先生と彼とが 出会うなんて
先生は また 大学に復帰してね
待ってたんだ 彼が来るのを
彼への指導を 楽しみに」
「よき親友に なれたはずなのに
君は あの時のまんまだ
まるで 時間が止まっていたかのように」
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