第13歩 スイーツと詰めの甘い子

「す、数量限定のやつ! もう夕方なのに⁉︎」

 コンビニスイーツです。それもモーソンのスイーツは、他の追随を許さない美味しさで女性を中心に大人気です。

 しかも今は、毎日十数個しか入荷しない超激レアスイーツ『ザクザクエクレア』、通称『ザクレア』が、雑誌やラジオで取り上げられるほどの人気を博しています。

 寝音子の手が、商品棚に一個だけ残ったザクレアへと伸びていきます。

 そしてそのまま掴んでレジへ。

「これ下さい。」

「990ウェンです。」

 店員さんの言った金額分の小銭を取り出そうと財布の中を見る寝音子でしたが、

「……200ウェン足りない。」

「寝音子、最近のコンビニスイーツは高級路線が多いんだよ。」

「そんなぁ……。」

 隣にいたみはねが耳打ちで教えてくれました。

 話題の数量限定スイーツ……今買わなきゃ次は朝早くモーソンの前に並ばないときっと買えない! でもお金が……。

 何を隠そうこのザクレア、とある老舗高級洋菓子店と共同で開発されたコラボ商品なのです。

 寝音子も、多少値が張ることは分かっていましたが、まさかここまで高いとは、と頭の中で頭を抱えました。

「しかし……」

 寝音子は手元にあるザクレアを名残惜しそうに見つめました。

「あ。」

 ふと後ろを見てそう呟いたのはみはねでした。彼女は即座に、

「分かった。200ウェン貸したげるから、早くレジを済ませよう。後ろの人を待たせてる。」

 かなり焦った口調で寝音子を急かしました。

 寝音子は何事かと思い、みはねがやたらチラチラ見る方向に目をやりました。

 すると後ろに並んでいたのです。鬼の形相をしたせっかちそうなおばさんが。

 今にもバチバチに怒り狂いそうな勢いです。

「ごっ、ごめんなさいぃぃぃぃぃ!」

 寝音子はみはねから小銭を受け取ると、可及的速やかに会計を済ませました。いえ、買う前に財布の中身を確認しなかった寝音子の詰めの甘さはスイーツのようです。

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