第12歩 新都の姉とお求めのモノ
「ダメでしたね……あはは……。」
隣を歩くみはねに苦笑いで語りかける寝音子。
みはねの肩に乗ったニクザベス2世もなんだか悲しそうです。
「作戦失敗。無念。」
「どうするんです? このままじゃ今週の日曜日——6日後にはニクザベスとフォーエバイバイしちゃいますよ?」
「それは嫌。これからも一緒にエターナルンルン気分で過ごしたい……!」
「サイクルマの車庫で飼うのはいかがでしょう? あそこならエサやトイレなんかもありますし。」
寝音子が提案して、
「サイクルマがニクザベスを踏んづける可能性がある。危ない。」
みはねが却下しました。
「ん……でももしかしたら……!」
が、何か思いついた様子。
「何です?」
「お姉ちゃんの家なら預かってくれるかも。お姉ちゃん、イシヌ飼ってるし。あたしも居候すれば一緒にいられる……!」
イシヌとは犬のようなアニマで、頭が石のように硬いという特徴があります。
「お姉さんはどちらへ?」
「新都。ペットOKのマンションに住んでる。」
新都は今2人がいる丘山からずっと東に行った先にあるニホヌの首都です。
「遠いですね……。」
「テレファントに乗ろうと思う。」
テレファントとは、背中がバスのルーフとピラーの形をしたゾウのような乗り物系アニマ。
サイクルマと同様、やはり窓ガラスなどはありませんが、多くの人がこれを乗合バスのように利用しています。
「それがいいかと……あ、でもテレファント乗車時の小型アニマ等の携行は禁止だった気がします。衛生とか騒音とか、その他諸々の理由で。」
「そういえばそうだったっけ……。」
「テレファント以外だと、タクシシーとかですかねー?」
タクシシーとは、簡単にいうとタクシーの役割を果たす、ライオンに似た乗り物系アニマです。
サイズと背中のルーフやピラーの形はサイクルマとだいたい同じですが、黄色い札や印が立て髪や尻尾に付いています。
「タクシシーは運賃が高い。それにペット同伴だと追加料金がかかる。新都まで乗ったらお姉ちゃんの財布をくすねないと払えない金額になる。」
「難しいですね……」
「だから財布のスリ方を考える。」
「ほんとに盗む気ですか⁉︎ お姉さんニクザベスを預かってくれなくなりますよ⁉︎」
「お姉ちゃん割と金持ちだから大丈夫。こっそり盗ってお姉ちゃんが認知症を発症した頃に謝りにいく。」
「その頃にはあなたもだいぶボケてません⁉︎ お姉さんとどれだけ歳が離れてるのか知りませんが!」
「姉は24歳。私の5つ上。」
「やっぱりボケてるじゃないですか! 関係ないですが、あなたと私が同い年だということがいま判明しました!」
2人があれこれ思案しながら道路の脇を歩いていると、水色と白の看板と小さな駐車場があるお店が見えてきました。
「あ、モーソンがありますね。ちょっと寄ってもいいですか?」
大手コンビニチェーン『モーソン』です。
「その肩にかけたおばあちゃんみたいな財布、ちっちゃいけどお金入ってるの?」
「あ、あんまりないんですが、買わないといけないものがありまして……ちょっと失礼。」
「あ、待って。」
寝音子がモーソンに吸い込まれていったので、みはねもあとを追って入店しました。
「いらっしゃいませー。」
落ち着いた声の店員さんがマニュアルどおりの挨拶をしました。
「それで、何買うの?」
「これです。」
寝音子が手に取ったのは、毎月月末に発売される『月刊アニマ×フリーターズ』という雑誌。
芸能フリーターやアイドルフリーター、地域の名物アニマまで、今をときめく話題のフリーターやアニマを数多くを取り上げています。
寝音子は嬉々としてその雑誌をレジに持っていこうとしましたが、
「んあっ! あれは!」
レジ前まで来たところで、あるものに目を奪われました。
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