第9歩 ヌサギのマッスル王子

「うひひひひひ……おや?」

 おとなしく可愛らしいネッコたちが部屋中を歩き回る姿を離れたところからしばらく堪能していた寝音子でしたが、その中にネッコではない何かを見つけました。みはねに尋ねます。

「どうしてネッコカフェにヌサギが?」

 そう、それはヌサギです。ウサギのようなフォルムをしていますが、筋肉がとても発達していてムキムキです。

「その子はあたしのペット。名前は『ニクザベス2世』。」

「へぇぇ。『1世』はどこに?」

「1世はあたし。プロテイン王国を支配する女王として、重労働を課す悪政によって民の筋肉をいじめぬくの。」

「そういうのってもうちょっとメルヘンな感じじゃないんですか⁉︎ あと国力でなく筋肉増強を目指すその理由とは⁉︎」

「民が鍛えた筋肉をニクザベス2世ちゃんが魔力に変換・吸収してもっとムキムキなる。国民はいわば『搾取するプロテイン』なの。」

「そんな『食べるラー油』みたいな感覚で言われてもっ! それに魔力の概念がありながら魔法ではなく筋肉がメインの世界観は謎です!」

「実は魔力は————」

 みはねの妄想と寝音子のツッコミが熱を帯びかけますが、

 ネァ゛ン……。

 ヌパァ……。

 2匹のアニマのドスの効いた鳴き声が部屋に響きました。

 ニクザベス2世と、キャストの一員であるネッコのネイちゃんです。

 2匹は睨み合いながら円を描くように公転し、ときどき探るようにジャブを打ちます。ネイちゃんは尻尾や前足で、ニクザベスは前足、というよりいかつい腕で。

 しかしそれも長くは続かず————、

 ネア゛ァァァギヴァァァ!

 ヌプヌゥゥゥゲサァァァ!

 ついに戦いの火ぶたが切られました。

 ニクザベスのムッキムキの腕から繰り出される強力なパンチを、しなやかな動きで回避するネイちゃん。隙を突いて実質複数の尻尾で反撃します。

 が、ニクザベスも負けてはいません。

 連続テールパンチを自慢の脚力で軽やかに避けながら、ジャンプして間を取り、そこから一気に距離を詰めるヒット&アウェイ戦法でネイちゃんを翻弄します。

 今、こぶしと尻尾の先端が真正面からぶつかりました! 力比べです! 拮抗しています! さあ、勝つのはどちらか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る