第6歩 受付嬢の真実

 サカバーガーを出た寝音子は、女の子に連れられて再び砂利道を歩き出しました。依頼書の【集合場所】の欄に書いてあった所に向かうようです。

 道すがら色々とお話をしました。

 寝音子は、彼女の名が『宇佐美うさみみはね』だということ、そして、彼女自身はフリーターで、彼女の母親がネッコカフェを経営していることを知りました。

「そういえば、さっきの受付のお姉さん、私を励ましてくれてすごく優しい方でした。」

 寝音子が上機嫌に話します。

「ああ、それは…………いや、なんでもない。」

「なんですかぁ、言いかけてやめるなんて余計に気になります! 気になりすぎて朝と昼と夜しか眠れません!」

「お腹ペッコペコじゃない? それ。」

「言ってください! お願いします!」

「……分かった。じゃあ言う。」

 さっきとは立場が逆で、みはねが押し負け。ためらいつつも口を開きます。

「実はね……」

「……はい。」

 2人の間に特に必要ない緊張感のある空気が漂います。

「実はね、受付のお姉さんが寝音子を応援してくれたのは————『マニュアル』なんだよ。」

「…………へ?」

 寝音子は顔をキョトンとさせました。

「寝音子みたいなイマドキの若いフリーターは、リクエストがうまくいかないとすぐに心が折れちゃうでしょ?」

「そ、そうでしょうか……?」

「最近問題になってるフリーター不足の問題を解決する政策の一環として、受付のきれいなお姉さん、あるいはイケメンのお兄さんが、若者を特別に激励してくれる——、っていうマニュアルが用意されてる。」

「えぇ⁉︎ じゃあさっきのは……!」

「営業スマイルに騙された寝音子の図だね。」

「そんな! 私の純情を返して! 代引きでもいいから!」

「手渡しじゃなくって郵送を選ぶあたり、直接文句を言う度胸はなさそうだね。」

「私の度胸の有無は関係ないですよね⁉︎」

 寝音子はぷぅっと頬を膨らませました。

 やや童顔なせいで迫力に欠けるしかめっつらです。

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