第1歩 朝の日課
4月29日、7:30。丘山県丘山市。
この街にも、お仕事と、その報酬を求めて奔走する人たちがいます。
フリーターです。
今日も今日とていつものように、彼らは元気に働こうとしています。
「…………ん……。」
それはもちろんこの少女、
「あんた! そろそろ起きないと朝のリクエスト更新に間に合わないよ!」
「あと5分……。」
ありました。
寝音子は今日もベッドの上で、睡魔を前に戦意喪失。母の呼びかけも虚しく、睡眠時間が無期限延長されようとしています。
朝の日課です。
「ていうか今日は『月刊アニマ×フリーターズ』の発売日じゃなかったっけ? 楽しみにしてたんじゃないの?」
「はっ! 忘れてました!」
寝音子は毎月お楽しみの雑誌を思い出して飛び起きると、1階のリビングに下りてきました。
そして目を見開いて、弱った睡魔にとどめをさすと、テーブルの周りに置かれた3つのイスの1つに脱力したように座り、箸を持ちました。
「ん、おいひ。」
テーブルの上に置かれた白ごはんと味噌汁を不器用な箸さばきで交互に口へ放り込みます。
「あんたさぁ」
「はい?」
「フリーターになったのはいいけど、いつまでもそんな調子でこの先どうするの?」
母・
「だってだって、仕方ないじゃないですか。オフトンさんが私を離してくれないんです。きっと私の事が好きなんですよ。」
「いやいや、あんたがオフトンさんを離さないんでしょうが。」
「まさか私たち、相思相愛⁉︎」
「はい残念。それ片思いだから。オフトンさんはあんたの事なんとも思ってないから。数百年に一度レベルの“失恋オブザイヤー”だから。」
「うーん、確かに“それはイヤー”ですぅ……じゃなくて! 今朝の対乙女用弾道ミサイルも結構高火力です! 私との国交関係考えてます⁉︎」
「なぁにが乙女だ。ろくに稼ぎもしないフリーターがオフトンさまのご寵愛を受けられると思うな。ろくに稼ぎもしないくせに。」
「あぁ! 2回も言ったぁ!」
「ぐうの音も出ないでしょうが。」
「ぱあの音なら出ます!」
「こちとらチョキさえ出しとけばあんたに負けることはないんよ。もういいから、さっさと食ってリクエストを取ってきなさい。自分でお金貯めてサイクルマの免許取るんでしょ?」
「はぁい……。」
寝音子は朝食を平らげると、とぼとぼとした足取りで支度を済ませ、家を出ました。
もちろん、お気に入りのベージュのキャスケットをかぶるのも忘れずに。
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