第3話 必殺・脳天チョップ。
あれから私とアイツは、何故か頻繁に廊下ですれ違った。
その度に戦争を繰り広げては、周りに止められる。
ある日、友達に「それにしても何でアンタとアイツ、そんなに仲悪いの? アンタ、他の人にはフツーに優しいじゃん」と聞かれた。
しかし私の知った事じゃない。
アイツが一々、腹が立つ事をしたり言ったりして来るのが悪い。
しかし私とアイツの関係は、何も廊下だけには終わらなかった。
学級委員。
体育祭実行委員。
文化祭実行委員。
年二回の球技大会の実行委員、等々。
私が行く先々で、事ある毎にアイツに会うのだ。
私は昔から、何故か所謂『運営サイド』の役割を割り当てられる事が多かった。
小・中学とそういう経験を積んできているし、皆と一緒にワイワイとやるもの好きである。
だから私はそういう役割に対して立候補まではしないものの、頼まれた場合は特に抵抗なく引き受けていた。
しかしその結果、毎回アイツに会うのは頂けない。
何度目だっただろうか。
あまりに一緒になるので「何でアンタは毎回居るのよ!」とちょっと八つ当たり気味に言ったら、仏頂面でこんな答えが返ってきた。
「俺は『押し付けられて、仕方が無く』だ」
私に対しては尊大な態度を取る癖に、意外にも他の人達に対してはそうでもないらしい。
どうやら困っている人は見過ごせないし、言われたら中々断れない性質の様だ。
「あんなに普段眉間に皺寄せてる癖に、意外だよね」
とは、アイツの友人の言である。
「アイツ、断れない性質の上に無駄にスペック高いから、任された事は大体何でも
等と、笑いながら説明してくれた。
しかしその途中で、いつの間にかとある人影が彼の後ろに迫ってきている事に気が付く。
「あ、ちょっと、後ろ……」
なんてまごついている内に、アイツからの鉄拳制裁がその脳天に舞い降りる。
「余計な事喋ってんな」
振り下ろされたチョップは、つむじ辺りに直撃していた。
声も出ず、ただただ床を転がり悶絶する。
そんな彼を見る限り、どうしようもなく痛そうだ。
私は思わず彼に、同情の籠った視線を向けた。
そう、同情はする。
でも。
(ごめん、変わってあげたいなんてことは、絶対に思えない)
だってアイツのチョップは、冗談抜きでとても痛そうだ。
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