第3話 霊は一人じゃなかった
「はぁ、はぁ、はぁ………」
「な、なんとか逃げれたのかな………?」
あの後俺たちは必死に走って体育館まで来た。
「そ、そうみたいだな………」
俺は息を整えそう言うと、バッグからライトを取り出した。
「ライトあったんだ………」
「あ、ああ………もしもバラバラになった時に使おうと思って三本持ってきてたんだよ」
俺はそう言いながら、鈴に残りのライトを渡した。
「あ、ありがと………」
「いいって………それよりも、樹季の奴どこ行ったんだか………」
樹季はあの後どこに行ったのか分からない。
一応、体育館に行く予定だったのでもしかしたらと思い体育館を調べることにした。
「………やっぱりダメか」
体育館の扉を開けようとしたがやはりダメだった。
ほんとに出られるところは開かないようだ。
鍵はかかっていないのに。
「倉庫かな………?」
鈴は体育館の倉庫を開けた。
そこには、バレーボールやカラーコーンとかがあった。
「おーい樹季いるかー?」
俺はライトで倉庫の中を照らしてみる。
しかし樹季はいなかった。
「うーむ………どこだ?」
ほかの倉庫を探したが結局いなかった。
「ねぇ祐君、あれ………」
「え?」
鈴が指差したところは体育館の放送をするところだった。
そこには人影らしきものがあった。
「………よし行くか」
「う、うん.........」
鈴は俺にぴったりとついてくる。
ステージに上がり放送室に繋がる階段をライトを照らしながらのぼっていく。
「樹季―?」
「え………?」
放送室のドアを開けるとそこにいたのは樹季………ではなく見知らぬ少女がいた。
その少女は後ずさりしていく。
「あ、だ、大丈夫だよ………」
鈴がそう言いながらその少女に近づいて行く。
そして鈴は少女に手を差し伸べる。
「………」
少女は、無言でその手をつかんだ。
「ほら、大丈夫でしょ?」
「う、うん………」
「さすが鈴だな」
「そんなことないってば………」
とりあえず俺たちは、放送室から出ることにした。
放送室には特に目ぼしいものは無かった。
「君、名前は?」
俺がそういうとその少女は若干怖がりながらも、「さ、咲良………」と答えてくれた。
「咲良………ね。咲良は、どうしてここに?」
「わかんない………」
分からない?
「誰かに連れてこられた………とか?」
「ううん、目を開けたら放送室にいたの」
どういう事だろう。
「な、なあ鈴………どういう事か分かるか?」
俺は小声で鈴に聞いてみる。
「わ、分かる訳ないでしょ………」
そりゃあそうだ。
「………とりあえずどこ行く?結局ここから出られないし」
「とりあえず一階は調べ終わったよね………しかも樹季君もいなかったし………もしかしたら二階とかにいるんじゃないかな?」
なるほど二階か。
まだ上の階は見てないもんな。
「それじゃあ二階に行くけど………咲良はどうする?」
一応咲良にも聞いてみた。
「………い、行く」
小さな声でそう言った。
俺たちは体育館から出ようとした。
ペタ、ペタ………。
「えっ………う、嘘………!さっき逃げたはずなのに………!」
その足音は、さっきの教室で会った少女の足音だった。
「や、ヤバい………逃げ場がない………」
ここは体育館なので逃げ場がない。
「と、とにかく、倉庫に隠れるぞ………!」
「う、うん………!」
俺はそういうと近くの倉庫に逃げ隠れた。
「こ、声は出すなよ………?」
「う、うん………」
咲良は、俺にずっとくっついている。
ペタ、ペタ、ペタ………。
「………………」
俺たちは声を出さないように口を手で覆った。
「あれー?どこ行ったんだろー?」
その声は霊の少女の声だった。
俺はそこで考えた。
なぜ少女が霊に?
「うーん………ここじゃないかー。それじゃあ二階かなー?」
ペタ、ペタ………。
少女はそういうと遠ざかって行った。
「ふぅぅ………」
俺は胸をなでおろした。
「な、なあ鈴………?」
「な、何………?予め言っておくけど怖い事言わないでよ………?」
「いや、あのな………どうして少女が霊なのかなって思って」
「あー………確かにね………多分、ここの学校の生徒だったりして?」
なるほど、その考えがあったか。
まあ確かにそういう考えもあるもんね。
「それじゃあ二階行くか………」
「あ、あの………」
「ん?どうした?」
俺を呼びとめたのは咲良だった。
「さ、さっきの霊………二階行くって言ってたから………」
「確かにそう言ってたな………」
「だ、だから………気を付けないとね………」
「ああ分かった………」
俺たちは倉庫から出て、体育館のドアを開けた。
「二階か………あの階段かな?」
体育館から出てちょっと行った先の左側に階段があった。
「うっ、なんだ………!?」
俺はその階段を上がろうとした時、足に違和感があった。
なんというか、ネチョっとしたものが足元に合った。
それは所々固まっていたりした。
「……………まじか」
俺はその足元にライトを当てた。
そこに広がっていたのは、血だった。
「これは………何があったの?」
俺はその光景を見ていると鈴が俺に聞いてくる。
「多分………あの事件だろうな」
「まさかこれもこのまま………?」
普通は片付けると思うのだが、片付けられなかった理由があるのだろうな。
「何があったの?」
すると咲良が不思議そうにこっちに来ようとする。
「あっ、ちょ、ちょっと咲良ちゃんにはまだ早いかな………?そう思うよね、祐君?」
「え?あ、まあ、うん………」
「私にはまだ早いの………?」
「ええと、簡単に言えば………血?」
「あー………私にはまだ早いね………」
自分でもまだ早いと分かるとは。
「とりあえず、行こうか」
「あ、うん………」
俺たちはその血を避けて二階へと上がって行った。
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