第34話 状況
義昭さまははじめは河内の三好の下に、さらに紀伊へと落ち延びていったらしい。
ひとまず河内三好を義昭さまを匿った罪ということで潰す。
阿波三好は対立しつつも共闘していた本家がいなくなったことをどう思うだろうか。どうでもいいか。
さてぼくの本拠は美濃尾張であるが、この度ここに近江を加えることになる。
幕府がいなくなった以上京の守りもぼくの仕事になり、山城の国も含め、織田の最重要地域である。
相変わらず本願寺及び一揆勢、六角が蠢動しており、予断を許さない。
また、美濃には体勢を立て直したらしい武田がちょっかいを出してきている。
徳川は一度押し込まれたところから立て直している最中だ。
そのほか、比較的近隣にあるめぼしい勢力として毛利、上杉がある。
彼らは義昭さまともぼくとも懇意だった勢力である。
現状では様子見しているが、ともすれば敵に回りかねないため、外交でこれに対処しなければならない。
それだけではなく、より遠国の有力な勢力に対してもだ。
外交は義昭さまが熱心に取り組んでいたため、苦労を分かち合っていたわけだから、労力が増えたことになる。
味方が敵になるというのはいかに厄介なことか、思い知る。
名目上の権威だけは残っている義昭さまを担ぐことは容易だ。
対織田を名目に勢力を広げたい者が居るならそうすることだろう。
足元を固める時間を稼ぐためにも友好的立場でいてもらわなければ。
地力が安定すれば戦うまでもなくなるのだ。
義昭さまとの競争である。
さて、領内に改めて目を向けると、やはり一揆勢が目につく。
特に長島一揆は喉元の短刀のようなものだ。
他に畿内で活動している者たちとの戦いも長い。
さらに年明けに、越前で一揆が起きた。
これは元は本願寺派の一揆ではなく元朝倉家臣の内輪もめが発端だったのだが、その旗頭が一揆衆と仲違いをしたことで、一揆衆が隣国の加賀や本願寺から本願寺派の一揆指導者を呼び込んだのだ。加賀派本願寺派の一揆の本場なので、その隣国の影響を受けたのだろう。
結果、越前は一揆衆の国となった。
ぼくはこの流れを無視していたわけではないが、越前は手に入れたばかりの外の地。
長島や畿内、そして武田や六角への対応と比べると優先順位が下がるため、置いておくことにした。損切りというやつである。
先にも述べたばかりだが、足元を固めることが先決だった。
そのために畿内から三河まで走り回り、朝廷の催しに顔を出し、と多忙を極めた。
そうやって動いている間は余計なことを考えないでいられるのだ。
そういう心持でいるから失敗をすることになるのだが。
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