第24話 反撃

 順に考えた場合、最初に処置すべきは美濃と京の間を安全に通行できるようにすることだろう。

 これができなければ、畿内での活動がおぼつかない。織田の拠点は美濃尾張なのだから。

 そのために必要なのは北伊勢と近江の確保。

 つまり長島一揆と北伊勢の豪族、浅井と比叡山。

 これらの戦力の排除である。

 六角もいるが、こいつらは捕捉できないので後回しだ。本当厄介ではあるので片づけたいのは本音ではあるのだが。何百年も南近江を支配していた六角の根は想定以上に深いようだった。



 年が明けて、ぼくは浅井の前線のひとつ佐和山を落としきることにした。

 朝倉とは和睦したが、隣接する浅井とは臨戦状態が続いているのだ。


 佐和山は琵琶湖の東岸にある城で、美濃から西に抜けるにあたってぶつかる位置に存在する。浅井本拠の小谷の間は先年の姉川の戦いから織田側が抑えているため、飛び地状態だ。

 ここを落とせば交通確保の第一歩となる。


 そのために、まずは佐和山小谷間の物流を遮断した。

 陸路だけでなく水運もだ。


 通行するものは呼び止め怪しければ斬れと指示を出し、物資だけで間者をも遮断。

 北は雪で封鎖され、浅井は孤立する。佐和山はさらに孤立する。

 京への経路上にある佐和山の排除が第一だ。

 そして二月には佐和山は降伏し、詰めていた武将の登用に成功。

 重要拠点を任されていた浅井の重臣であった猛将だ。

 また一つ浅井を弱らせることができたわけだ。


 浅井との戦いは一つ前に進んだが、手をつけなければいけない案件は多い。

 本拠の目の前まで抑えてはいるものの、滅ぼすには時間と被害を覚悟する必要があるだろう。何より潰せば朝倉と接する戦線が広がってしまう。

 優先順位からしても、敢えてじっくり攻めるのが正解だろう。


 浅井への対応を部下に託し、次は織田の喉元をうかがう長島一揆の対処に向かう。


 だがうまくいかなかった。


 斎藤や本願寺の兵が指揮を執っているらしく、地形を生かした防御に攻めきれなかったのだ。

 長島は川を利用した実に厄介な地形なのである。


 くやしいが、これも後回しにせざるを得ないか。

 義昭さまや朝廷が和睦のために動いてくれているのだ。

 地形を利用しているということは逆に言えば数を生かせる場所ではこちらに勝てないということでもある。


 厄介なものを残しておく決断は後ろ髪を引かれるが、無理攻めをして戦力を失うことは避けなければならない。

 戦に負けても戦力があれば巻き返せるが、戦力がなければ戦に勝っても次が襲ってくる。

 潜在的な敵が多いことは去年の戦いで思い知っているのだ。




 その証拠に、三好と三好が手を組んで幕府方に攻撃を仕掛けてきたと報告が来た。


 えっ。

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