第6話  いらっしゃい義昭さま

 ぼくの上洛準備が整った頃、義秋さまは元服し、義昭と改名していた。


 近江から逃げて若狭の妹婿、武田を頼っていたのだが、これが内紛でどうにもならなかったのですぐに越前の朝倉を頼りに行ったのだ。

 だが交渉はうまく進まなかった。

 悔しい話だが、ぼくが一度失敗したこともあり、朝倉と、そして上杉の力で上洛を考えていたようなので、朝倉はそれが気にくわなかったのかもしれない。そうではないかもしれない。

 結果として朝倉が動かなかったのは事実であり、すべてだ。

 義昭さまを受け入れておいて力を貸さないとは、朝倉はちゃんとしてない大名だ。よくわかった。


 この膠着した時間がわるい方に働いた。

 はじめ、義昭さまには主要な幕臣が味方していたし、周辺の大名も味方していた。

 だから、三好が立てようとしていた別の将軍候補よりも有利な状況ではあった。

 しかし、有利にもかかわらず、三好を除いて上洛できていないという事実が長く続いたことで、朝廷から将軍宣下されてしまったのである。


 これには義昭さまは焦ったに違いない。ぼくも焦った。

 そういった情勢下で、ぼくの上洛準備が整ったのだ。


 ぼくは朝倉のもとにいる義昭さまに使いを出した。

 朝倉の面子をつぶすことになるかもしれないが、事ここに至っては仕方のないことだろう。ちゃんとしない朝倉が悪いのだ。

 その結果、義昭さまは尾張に移り、ついに上洛が決行されることになった。


 味方は義昭さまについてきた幕臣に加えて織田と浅井。

 敵として、上洛の途上にある六角、そしてその向こうにいる三好。


 横やりや邪魔が入るかもしれない。

 それでもぼくはやり遂げてみせる。上洛を!

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