第3話 初めての上洛
上洛に協力する大名はたくさんいて、ぼくはその中の一大名だった。中には斎藤も名を連ねていたけれど、協力することになった以上は信用しなければならない。
といきなりそういわれても難しい。他の大名もそうだろうし、立地の都合で戦力を送れないところもあったようで、なかなか交渉は難航していたようだ。
その一環として、織田と浅井の同盟が斡旋された。
浅井というのは美濃斎藤を挟んで反対側にある北近江を支配する家だ。
織田からぼくのかわいい妹で世間でも美人と評判のお市を嫁に出すことになった。
この婚姻同盟によって、斎藤は下手なことができなくなる。
斎藤が織田を攻めようとしても、背中側に織田の味方がいることになる。
逆もそうだ。斎藤が浅井を攻めようとしたら織田が何やってんだおらぁ!って怒れば斎藤は動けなくなるってわけ。
浅井と織田両方と同時に戦うのは二正面作戦っていう愚考だって昔から言われているんだ。前と後ろから同時に殴られたらまず勝てないし、勝てても痛いのは間違いない。
少しは安心して上洛に力を注げるようになったわけだ。
そうしてついに、上洛の時が来た。
三好が義秋さまとは別の将軍を立てようとしたり、義秋さまが拠点としていた近江の矢島御所が三好に襲われ辛くも撃退したりと、状況が差し迫ってきたこともあり、少しでも早く達成しなければ。しかし大名間の連携も必要。うまく段取りをつけた義秋さまとその直属の部下の皆さんは立派なことだ。
それでも幕府の後ろ盾である権威、朝廷がこちらよりだったので時間は稼げているのだけれど、あいにく朝廷は京にある。つまり三好の勢力下で、三好は将軍を殺すほどの無茶をやる相手だ。朝廷がいつか無理を押し通される可能性は否定できない。
少しでも早く上洛し、幕府を再興しなければならない。
そんな状況のなか、ぼくは兵を起こし、上洛に向けて義秋さまの下に向かったのだ。
そして、斎藤の攻撃を受けて、尾張に撤退した。
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