第2話 将軍死す

 京の都で殺された将軍は、ぼくもあったことがある足利義輝という人だ。

 殺したのは三好の一派。室町幕府の部下の部下、だけどいろいろあって上司の家の実権を握って、さらに幕府の実権をにぎった三好家、その一部らしい。

 ちょっとだけ織田と似ている立場だ。

 上司にちゃんとする力がなかったら自分が頑張って代わりにちゃんとしないといけない。

 ちゃんとしないとみんなすぐに喧嘩をしたり殺し合ったりする。それぞれの立場で命が懸かっているから仕方ないんだけど、偉い人がちゃんとすればひどいことになるのは抑えられる、はずだ。

 だけど、ぼくは幕府を好き勝手にしたいとは思わないし、できることならもとの枠組みでうまくやるのが一番だと思う。

 だから将軍を殺すなんてことはありえないことだ。

 偉い人を殺せば舌は混乱する。そうすればだれもちゃんとすることができない。どうするのがちゃんとすることなのかわからなくなる。

 そうなればひどいことになるのは目に見えている。飢えて、奪って、争って。


 ああ、こんな哀しい時代でぼくにできることはなんだろう。


 そんなことを考えていると、またまた大変なことが。


 亡くなった義輝さまの出家していた弟君が生きていて、足利の家督継承を宣言、以降義秋さまと名乗るようになったのだけど、その義秋さまがお手紙をくださったのだ。


 内容は、義秋さまを奉じて上洛し、将軍に就け幕府を再興するようにというものだった。

 義秋さまはすでに左馬頭という将軍の前の役職についていた。

 でも京には先代義輝さまを殺した三好が勢力を持っており、これを排除しなければ将軍になることはできないのだ。


 将軍(予定)を奉じて上洛する、というのは室町の時代を通じて何度かあったことなのだけれど、これを成し遂げるのは当然非常に名誉なことだ。

 幕府をナメている三好をやっつけて、義秋さまを将軍にして幕府をちゃんと復活させることができれば、いまの日本を平和にできるかもしれない。


 ぼくは早速やりますと手紙を返した。

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