第十六話:大怪盗ビッグディック、知られたくない過去を知られる

「で、なんでお兄ちゃんはそんなに更衣室が嫌なんですか?」

 悟りがこの上ないほどに純粋な瞳で問いかけた。階段を上っていたビッグディックは足が止まり服に汗がにじみ始める。それを見たスナッチが話し出した。

「あのね、この人は昔・・・」

「わーわー!」

 ビッグディックは声をかき消そうとするが悟りが二度とその手は食わんと声を上げた。

「ダメですよお兄ちゃん!いくら耳が遠くてバカとはいえ私の知られたくないことを知ったんですからちゃんと喋ってもらいます!」

「え、えーっと・・・」

 悟りの押しにどもってしまうビッグディック。それをスナッチが見かねてしゃべりだす。

「あのね・・・」

 しかし悟りはスナッチの言葉は望んでいなかった。

「お兄ちゃんの口から喋るべきです!」

 ついに崖っぷちまで追い詰められるビッグディック。

 全てを吐き出すようになぜ大怪盗になったかを話した。更衣室を盗撮したことを主にしゃべったが彼は説明が下手であり、なぜか更衣室を盗撮する際の詳細な方法をしゃべっていた。

 それを聞いてスナッチは若干引いていた。

『なんでそれを今喋るのよ・・・』

 閑話休題。

 ビッグディックはそれを後悔していることと黙っていたことを謝った。それを聞いて悟りは怒るかと思いきや別にそんなことはなかった。

 どちらかと言うと諭す感じである。

「まあ、聞く限りだともうすでに怒られているし本当に反省してるんだと思います。ただなんで黙ってたんですか?もっと早く言ってくれればいいのに・・・」

 それを聞いているビッグディックは下を向いて渋い顔をする。それを横目に悟りがこう続けた。

「私はそんなねちっこく言う女じゃありませんし恩人を悪く言う女でもありません。ただ黙っていたことにはちょっと怒っています。あなたが過去に盗撮をしようがしまいが信用はしています。なぜならあなたは冗談のつもりで私が言った言葉を真に受けるぐらい馬鹿正直だから」

 スナッチもビッグディックも淡々と流れる彼女の言葉に痛みを抑えて耳を傾けていた。

「だからもうあなたも前に進んでください。いちいちそれを隠さずに、もう怒られたんだからそれで終わりです!権力やコネを使ってもみ消すよりよっぽどましです!だからもう気負いしないでください。私を助けに来てくれたスーパーヒーローがそんな顔じゃあ恥ずかしくて他の人に自慢できません!いいですね!」

「はい・・・」

 ビッグディックはそう答えると悟りに促され笑顔になった。その二人を見てスナッチがこう思った。

『結構、お似合いの二人なのかもね・・・』

 おっとスナッチさん!身長に騙されてはいけませんよ。思い出してください、片方は十八歳、もう片方は十歳であるということを。

 次回最終章!

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