第十三話:Drスナッチ、負けられなくなる
「俺は大怪盗ビッグディック!この城にPTAを盗みに来た男だ!」
ビッグディックは先ほどのキトーの発言ののち大見得を切ってこう言った。先ほどまでの恐怖はどこへやら・・・顔は満面の笑みだった。
それを見て感動したのかキトーは目を輝かせる。
「おお!素晴らしい!君は何とかっこいい名乗りをするんだ!ビッグディック・・・覚えておこう!」
「俺もだぜキトー!あんたの名前気に入った!」
二人はがっしりと両手で握手をした。それを見たスナッチと悟りはため息を漏らしてあきれていた。やはり奇人変人というものはたがいにひかれあう何かを持っているのかもしれない。そして悟りが二人の間に割って入る。
「で、ここではどんなことをするんですか?」
『どうせろくでもないんでしょうけど・・・』
そしてはっとした二人は握手を解いてこう言った。
※ここから
「そ、そうだ!・・・ぐぬぬ・・・大怪盗ビッグディックめ!二人も四天王を倒すとはやりおるな!」
あからさまなセリフだがあまり彼は役者ではなかった。どこか棒読みで淡白なそれに気持ちは毛ほどもこもっていない。
真剣になったビッグディックがそれにこたえる。
「ククク・・・あんな奴ら俺にかかればいちころだったぜ!」
ちなみにビッグディックは先ほどの言葉を真に受けている。
『『どの口が言うのよ』』
傍観者二人の意見は一致していた。そんな二人を差し置いてバカ二人は犬の鳴き声のような声を出して威嚇しあっていた。
そしてスナッチがまたも本筋からそれた二人に向けて突っ込んだ。
「で、ここでは何をやるのよ?」
またもハッ!と我に返ったキトーはこう言った。
※ここから、前の※まで戻ってください。三回リピートしたところで次へ進んでください
キトーは集中力の着れたスナッチと悟りを横目にやっとルール説明をし始めた。
ルールは簡単。車型のカートを利用し、スーパー内でレースをする。もっともそのままでは自走できないので改造する必要がある。もし改造できなければ自分の手で押さなければならない。そして改造については何でもあり。ただしレース中に分解した場合、失格になる。
以上!
そしてキトーが先ほどまで乗っていた車を指さし、勝ち誇ったように言い放つ。
「俺はもちろんこいつを使わせてもらうぜ!」
ビッグディックがそれにこたえる。
「いい車だな・・・どこで買ったんだ?」
「近所のショウルームで買った。定価11万2400円」
『売ってるの!?』
と悟りが心の中で突っ込むがビッグディックはさも当然であるかのように・・・
「なるほど、どおりで・・・」
と言った。それを聞いたスナッチは、すかさず突っ込む。
『なにが“どおりで”なのよ?』
そんな二人をよそにキトーはこう言い放つ。
「お前にこの車を超えるようなカートを作れるとは思えないけどなあ!やっぱ俺って・・・」
「別に作れるけど?」
スナッチが食い気味に入ってきた。これにキトーは面食らった。
「な、なんだと?し、しかし・・・改造するには時間が・・・」
「その程度三十分もあれば作れるわ。なんでもありなんでしょ?」
「は、はい・・・」
先ほどまでの勢いはどこへやら・・・キトーの声からはすっかり覇気が抜けていた。そしてスナッチは悟りとともに車の展示場に向かおうとした。しかしキトーとビッグディックの始めたヒソヒソ話が気になった。
「なあ、ところでなんだけどさあ・・・なんであの女はあんなきわどい服を着てるんだ?俺たちとしても見過ごせないぞ?この城じゃなきゃ絶対つかまってるぜ」
スナッチはその声に聴き耳を立てて聞いていた。
ビッグディックはそんなこと知らずひそひそ声でこう返した。
「彼女、前の四天王と戦った時に自分で脱ぎ捨ててこう言ったんですよ「さあ見な・・・」」
「それ以上言ったら今度こそ玉を潰すわよ」
ビッグディックはびくっとして動かなくなる。そしてビッグディックは石像が言葉を発すようにこう言った。
「す、すいませんでした・・・」
そのやり取りを見たキトーはこう思った。
『なんていい女なんだ!』
三十分とちょっと経って・・・
悟りとスナッチがビッグディックのもとにカートを押して帰ってきた。どうやら相当改造したようでほとんど原型がない。それを見てビッグディックが感激してこう言った。
「やっぱスナッチはすげえぜ!」
「でしょ?感謝しなさいよ?」
さすがの悟りも実力を認めたのか何も言わない。そしてキトーは面食らうかと思いきや、全く違っていた。
「ビッグディックよ!その娘と結婚していいか!?」
「はいぃ?」
スナッチが突然のプロポーズに困惑する中ビッグディックは軽く答えた。
「いいよ!」
「何で許可だしてんのよ!あんたは私の何なのよ!それに何で突然結婚しないといけないの!?誰がそんな小男なんかと・・・」
「まあいいではありませんか?そろそろ身を固めるというのも」
悟りは優しく、それでいて温かみのある笑顔を浮かべてこう言った。それにスナッチが反論する。
「あんたは親戚か!それに何でこの年で身を固めなきゃいけないのよ!?そもそもねえ・・・」
わーわーとスナッチが騒ぐ中、キトーがこう言った。
「つまり嫌ではないと・・・?」
「何でそうなんのよ!?なに?あんたは天然なの?じゃあはっきりと言うわ!私はあなたとは結婚しません!これは決定事項です!」
「つまりはタダでは結婚してくれないというわけだな・・・こんなことは初めてだ・・・」
「初めてってどういう意味ですか?」
悟りが疑問をぶつける。それに包み隠さずキトーは返した。
「私はこう見えてバツ6のシングルファザーだ。子供の扱いには慣れているし夜のテクニックだって自信がある」
「余計いやよ!なんでそんなダメ男と結婚しなきゃならないのよ!」
しかし、それをキトーは耳に入れずこう言った。
「それと、そこのぺったんこのそこの君!君はあいにくストライクゾーンではない。諦めてくれ」
「なんか勝手にフラれた!」
悟りはうれしさと悔しさでよくわからなくなっていた。というよりこれまでの四天王と比じゃないほどの異様なオーラを誇るこの男にビッグディック以外困惑していた。
というよりビッグディックは先ほどの改造されたカートに夢中でまともに話を聞いていなかった。そんな困惑と歓喜があふれる中キトーはポンと手を打ってこう言った。
「ではこうしよう。私がこのレースで勝てば私と君は結ばれる。しかしこのレースで負ければ先に進んでもいい。これでどうだ?」
スナッチは思った。何を言ってるんだろうこいつは?バカじゃないのか?あそこで油売ってるバカより相当悪質なバカだ。
「もしそれを私が断ったら?」
「そんなこと尾宮総裁の意向でどうにでもなる。」
・・・これは参った。どうしたものだろう。でも勝てば問題ない。じゃあ。
「そこの馬鹿怪盗!」
「は、はい!」
ビッグディックが驚いて答える。スナッチの声はこれまでにないほどに闘志に燃えていた。そして彼女はこう言った。
「わかってるわよね・・・?」
「な、なにが?」
話を聞いてなかったビッグディックはきょとんとして状況を呑み込めていない。しかしスナッチはそんなことは意に介さずこう続けた。
「いい、絶対に勝つの!いい?絶対よ!」
「もちろん勝つさ!じゃなきゃPTAを手に入れられないもんね!」
それを聞いてスナッチは納得する。そして悟りは思った。
『負けてくれたほうが嬉しいなあ・・・今度は四天王を応援しよ!』
この子は結構なクズなのかもしれない。
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