第五話:SA参上!

 先ほどビッグディックがいた部屋に向かう男がいた。顔はしわにまみれ、カイゼルひげを生やしている。そして服装はバスローブ。


 この男はこの城の主、尾宮勝悟。悟りの父親である。

『全国青少年健全育成連合』略して『全少連』の会長を務め、尾宮ホールディングスの名誉会長でもある。この男自身かなりの量の汚職や犯罪行為を自身の金と権力でもみ消してきた、一方で青少年の健全な育成を表立って統括する。


 彼はそんな二面性のある男だった。


 そして先ほどの部屋に着くとほどなくして異変を察知した。

 締めたはずの鍵が開いており、中には誰もいない。


「なぜ開いているんだ。そしてなぜ悟りはいない・・・」


 尾宮は考える。もしかして例の“大怪盗”とやらが関係しているのかもしれない。......とも考えたが、女の子を連れて行って何になる?


 そんなこんなで忽然と消えた悟りがどこに行ったのかを考察する尾宮。ふと机の上に置き書きがあるのが目に留まった。そこには......


『ご主人様へ、私は大怪盗ビッグディックに連れ去らわれてしまいました。探さないでください。悟りより』


「なんだと!やつめ!私の悟りを奪ったというのか!?」


 これには尾宮も怒髪天を突いた。すぐさまエレベーターを使おうとしたが、エレベーターは上階に上っている。制御室に連絡しエレベーターを止めた。そこは地上一階。しかし、エレベーターを無理やり下におろすのは構造上不可能らしい。そして、ドアが開いてしまうため、彼らには逃げられる。


 しかし、尾宮はそれで満足していた。


 奴らにこの城の本当の恐ろしさを教えてやる。

 そう思い、部隊の招集命令をかけると彼も別ルートで大広間へと向かった。そこにはすでに隊員たちが集結しており、ざわざわと口々にしゃべっている。


 この隊員たちの名前はSA部隊。Strange Anal部隊の略称である。全員が痔持ちのためこう呼ばれている。ちなみに尾宮家は全員痔持ちである。


 尾宮が登壇すると尾宮は何もしゃべらない。そのざわざわしている間、尾宮は手元の時計に目を落とす。そして数分経ってざわざわとした音の響きがなくなると隊員に向けてこう言った。


「はい、皆さん。皆さんが静かになるまで三分かかりました。これはここにいる隊員皆さんの一人一人の時間を三分ずつ奪ったことと同義です」


 お前は小学校の先生なのか?


 そんなことより尾宮は演説......もとい、長い業務連絡を行う。そもそもここにいる人物たちはすでに警備を行っておりこんなことをしても何の意味もないのだが......。

 尾宮にとってはそんなことよりこの業務連絡委が大事だった。そして尾宮の演説は以下に続く。


「あと四天王は必ず自身の部屋を守り抜け!死守だ死守!」

「オッケーです!」


 そう答えたのは四天王の一人。そして......。尾宮としては悟りが盗まれたなんて言えない。悟りの事を知るものはこの中にはいないのだ。悟りはそれだけ隠匿された存在であり、尾宮にとって最も重要な人物なのだ。そこで引き合いに出したのはPTAだった。


「PTAを何が何でも死守せよ!」


 という尾宮の言葉に対して隊員たちが声をそろえて元気よく答えて散っていく。

 そこには“お庭番五人衆”の姿もあった。そう、ビッグディックにとってこれ以上ないファインプレーをした五人組である。


「レッドさんどうします?」


 黄色い服を着たメンバーが声をかける。赤い服を着たメンバーは腕時計を見ると8時を回っていた。


「我々は派遣社員だ。もう定時は過ぎている。我々は彼らの幸運を願うことしかできん」


 緑の服を着た人物が同意する。


「はーい。僕はレッドが正しいと思いまーす!」


 こいつらは果たして何をしてきたのか?

 と言う事は置いといて、ついに本腰を入れてビッグディック捕獲作戦が始まった。

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