13.ある芸術家の妄想

 



 美しいモノが好きだった。

 なによりも輝かしいものが好きだった。


 私の影主(かげぬし)──私が生まれた影の主となっていた者も、美しいモノには目がなかった。

 影主は彫刻家だった。木や石、土、金属などを彫り刻んで、物の像を立体的に表したりするのが彼女の仕事だ。

 影主の作り出す、生み出す作品は、それはそれは美しかった。まるで今にも動き出してしまいそうなそれらは、作り物とは到底思えない代物だ。


 腹が減っていたために、影主を殺し、食らった私は、少しして後悔した。影主の新たな作品を見れなくなった、その事実を理解してしまったのだ。


「ああ、偉大なるダリア……我が宿主……あなたの作品をこの目で味わえなくなるのはなんと辛いことか」


 しくしくと嘆き、残された作品を見て、私は考えた。


 見たいならば見ればいい。

 欲するならば作ればいいと。


 私は闇から生まれた生き物。

 宿主の影から生まれたシャドウ。

 影主の半身とも言える存在の私なら、影主と同等の……いや、それ以上の作品を作れるはずだ。


「見ていてくれ、ダリア……あなたの作り出そうとしたモノを、私が、世に──」


 この、歪な世界を──……。

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