12.得た情報
「お疲れ様でぇ〜す」
亜莉紗たちが帰ってきた。
多少なりともボロボロになった様子の彼女らは、やはり無傷とはいかなかったのか微かな切り傷を頬や腕に作っている。けれども、あの人数相手にそれだけで済んでいるという事実はさすがドールと感心できるところだろう。
客の波も落ち着き、今日は早めに店仕舞いだと閉店作業をしていた蓮は、帰還した彼女らに「おかえり」と一言。大丈夫だったかを訊ねてみる。
「大丈夫もなにも、ゼロさん来た瞬間全て吹っ飛びましたよ」
「お陰で後片付けに追われました」
「近隣のカメラにハッキングして映像弄ったりとか、いろいろしててこんな時間に……」
助かったが助からなかった。
そう言いたげな3人に、ゼロは「すまない……」と謝った。若干しょんぼりした彼に、皆は咄嗟に「謝る必要はありません!!!」とフォローを入れる。
「敵をぶっ飛ばすゼロさんカッコよかったです!」
「助けてくれて本当に感謝しかありません!」
「後処理の時はこれ以上の被害出されたら困るからと手出しはさせませんでしたがそれでもあの場にゼロさんが来てくれたからこそ私たちは五体満足でいるんです!」
「……無理するな」
「「「してませんっ!!!!」」」
「……そうか」
ゼロは困ったように笑った。元々顔がいい彼の微笑みに、女性陣は「ひえっ」と顔を赤くする。
「ったく、とんだ無駄足でしたよ。これなら部屋で本読んでた方がマシでした」
そんなやり取りの傍ら、第二班所属の爽華がブチブチと文句を垂れながら店内に入ってきた。その後ろからは金髪に、赤いエクステをつけた男が一人、翡翠の瞳を細めて笑いながら後ろ頭にて腕を組み合わせている。
赤い衣服を纏った、黒いパンツ姿の男だった。目立つ赤を隠すように、白い上着を上から羽織っている男だ。
彼は「まあいーじゃん。皆無事だったんだしさ」と朗らかに笑うと、即座に爽華から睨まれ蹴り飛ばされる。「いって!?」と上がる声を無視して、爽華は一連のやり取りに苦笑する、己がリーダーへと顔を向けた。
「で、なにか情報は掴めたんですか?」
「うん。第三班が頑張ってくれたよ」
蓮は言って、小型の機械を爽華へと投げ渡す。投げ渡されたそれをキャッチした爽華は、機械を軽く操作し、それを表示させた。
長方形の、小さな黒い機械により映し出されたのは、数多の個人情報だった。恐らく襲撃者であろう者たちのそれを流し読みしてから、最後に表示された『ダルカナ』の名に反応。「コイツは……」と口を開けた彼に、蓮が「一連の黒幕だよ」と穏やかに笑う。
「どうも自分の作品以上に人気だったペットに嫉妬したみたい。その場にいた警備の者と二重契約する形で拉致を依頼したんだとか。やだねぇ。嫉妬なんて醜い醜い」
まあそれ以外の考えもあってのことだと思うけどね、と彼は続ける。
「宝石商ダルカナの造形美は見事なものだと話題だ。まるで『生きているようだ』という声も多く聞く。実際、今日展示会の警備に当たった神壊やペットに話を聞けば、確かに今にも動き出しそうなモノがほとんどだったと聞かされた。で、第三班に怪しいから調べてって頼んでみたところ、おもしろーい情報が手に入ったんだよねぇ」
次ページ、と指示した蓮に従い、爽華は機械を操作。表示された内容を目にし、「ほう……」とうすらと小さく笑う。
「生き物を宝石に……なるほど。まるで化け物じみた力だ」
「化け物、いい表現じゃない」
蓮も笑う。小さく、微かに。
そうして彼は告げるのだ。その真実を。現実を。
「宝石商ダルカナは人にあらず。アレは闇から生まれた──シャドウだ」
ドールの本能が、殺せと大きく叫んでいた。
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