12.5
下校時間を過ぎ、夕暮れの教室には椅子と机を引きずる音だけが響いていた。
徐々に片付いてていく教室の中には、忙しなく動く二つの影。その間に会話はなく黙々と、淡々と教室の中を整理している。
「………」
「………………………」
「…………………………………………」
一通りの作業を終え、ほとんど元通りになった教室を見回して二人は軽く嘆息した。
「……なんにも訊かないの?」
「夢乃、あんた荷物どこに置いてるわけ」
「へ?ああいや、そこだけど……」
「てことは放課後に来たってこと」
「うんまぁ、そうなるね」
「はあ良かった……。本当に心配したんだからね」
「あははごめん……ってそうじゃなくて!ほかに聞きたいこととかないの?」
「聞きたいことって言われたから聞いたんだけど。他?例えば?」
「え?いやほらどうして一昨日あんなこと言ったの?とか、さっき抱き合ってたのは何?とかなんかそういう感じのアレのつもりで言ったんだけど…」
「別に。私は雄太がネットとかで知らない女に騙されるのが嫌なだけで、友達が言い寄ったって怒ったりするわけないでしょ。……………………………………………なに、もしかして雄太のこと好きになったの?」
「へ⁈いや別に全然そんなことはないよ⁈一回助けてもらったら好きになるなんておとぎ話だよ⁈ただ……」
「ただ?」
「ま、前よりはいい人だなって思ってるし若干気になってる………………………かも」
「へえ、そ。『「歴史の終わり」という錯覚』ってやつ?」
「ちょっ、梨紗ちゃ~ん……」
「まぁいい。別に相手が夢乃でも何の問題もない。むしろ相手に取って不足なし。明日から攻勢かけてくから」
「え、何で既にライバル前提⁈別にそうと決まったわけじゃ……」
「それはそうと」
「げ、松島くんを問い詰めるときの顔だ……」
「一昨日のことは聞かないわけじゃないから。雄太を待ってる間さっきまでの経緯を洗いざらい吐いてもらう」
「うう……はぁい……」
「とりあえず校門まで行こう。雄太そこで待つって決めたんだし」
「で、さっきのところに至る、と」
「まぁ、そうなりますね」
「ふーん、そ」
「許してくれるの?」
「別にこれくらいで怒らないし……いつもその一〇〇倍くらい心配させてくるやつがいるし」
「あー……」
「ほんとあれの監視は大変」
「にしてもハサミ掴むって……」
「昔からあんな感じ。猫助けようとして木に登って落ちたこととかもあるよ」
「うわあ……」
「……………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………………………………」
「「ふふっ」」
「ねえ夢乃」
「?」
「明日の朝まで待って。明日の朝には私の気持ち話すから。」
「うん分かった。もちろん、いつまでも待つよ」
「ありがと……………………あ」
「来たね」
「おーいたいた。ごめん待たせた。ってあれ…なんか仲良さそうだね君たち。俺の悪口で盛り上がってたりした?」
「まぁそんなところ」
「うふふ、まあね」
「そ、そうですか……」
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