第25話 - 冒険試験2 -
試験、ボスシンボルとの戦闘、コカトリス戦。
打合せ通りに陣形を組む。足場は非常に狭いが、そういう試験だ。
そしてあっという間に、、
エイルが豹変した。
「ウラウラウラウラァ! くたばれ羽毛がァァァァ!」
ドドドドッ ズガンッ
戦闘モードとなって三門の砲を具現させたエイルが砲撃を乱射する。
コカトリスは飛翔で交わす。さすがに簡単には当たってくれない。
砲撃の一部が向こう側の岩場にカスったりして、崩れだす。
「ちょ、ちょっとエイルさん、気を付けて!」
コカトリスの羽ばたきから魔法の風の風圧が放たれる。煽られて飛ばされれば、
あっという間に崖から滑落する。
トムが防御盾を展開した。他2人はトム後ろに身を寄せる。
ブワンッ
風圧が通過する。しのいだようだ。トムは攻撃面は残念だが、
頑丈さには自信があると言っていたように、防御面では頼って良さそうだ。
今度はコカトリスの嘴に火球が集束している。
「スキありィィィィ!」
ズガガンッ
エイルの双砲から容赦なく砲撃が撃たれる。
しかし、同時にコカトリスも火球を撃つ。中間地点、5メートルほど前で
火球と砲撃がぶつかりあい、爆風が吹き荒れた。
ドガンッ
「うわあ!」 「クッ」 「!?!?」
思わず3人とも腕で顔を覆う、が、もろに爆風を受けたエイルは煽られ、
あっという間に崖の下に転落していった。
「あーれー」
「エ、エイルさん!?」
カズハが瞬時に落下するエイルにワイヤーを放つ。なんとか胴に巻き付いた。
「うっ!? お、重い!」
エイルの装甲の重量が重すぎて、引き上げるどころか維持するだけでも精一杯だ。
トムが無防備のカズハの前に回り込み、コカトリスからの攻撃を防ぐ陣形を取る。
「なんとか僕一人でしのぎます! 引き上げちゃってください!」
「む、無理! 重すぎて……! エイルさん、装甲を解いて!」
言うが、なんとエイルは気絶してしまっていた。試験場なので下方には防護ネットもあるが、そんな事態にもなれば試験落第は疑いもない。
――こ、こうなったら変わり身で私とエイルさんを入れ替えるしか……、
攻撃さえ来なければ、この崖なら自力で登れる……!
「ぐぅぅう!」
防ぐのみのトムへ一方的にコカトリスの足の蹴りや嘴の突きが繰り出される。
盾を全面に押し出し、防御障壁をなんとか維持する。
変わり身の方針をなんとかトムに伝える。
なんとか片手で印を結んで魔力を集中し、クナイに練り込む。
――よし! ごめんエイルさん!
クナイを放つ。エイルの腕に刺さった。
――変わり身!
ボボンッ
ワイヤーを切断し、即座に術を発動する。
カズハとエイルが入れ替わった。エイルがトムの後ろへ、
カズハは崖の下へ放り出される。
「痛ぅ! ……ふっ!」
エイルの腕に刺さったクナイは、
変わり身の入れ替えによって自分のダメージになってしまう。
展開上これは仕方ない。
崖を蹴って上へ飛躍する。斜め方向につり橋があったので、
そこへ向かってワイヤーを放ち巻き付ける。
ヒュンッ
推進力と魔力を使って一気につり橋上へと着地する。
一旦足場のある岩場まで引いて、腕からクナイを抜き、
すぐに簡易的に手当てする。
――なんとかなったわね。次はエイルさんを起こさないと……。
メイン戦場の岩場の、隣の岩場まで来てしまったので、
一気につり橋を渡り、戻ってトムらと合流しようとする。
その時だった。
ドドンッ
――なっ!?
カズハの後ろから魔法弾が撃たれる。
なんと、前方のつり橋が落とされてしまった。
びっくりして後ろを振り返る。そこには、見知った姿の者が居た。
▼
「ごきげんよう。カズハさん」
「こ、琴音……」
実戦科、紫川琴音だった。普段通り、妖艶な笑みを浮かべ、
日傘をさしてその場に佇んでいた。
「……なんのつもりなの? 実習中よ?」
「ええ。だから今度こそ、あなたの血をいただこうと思って。
ここなら教員や聖教会の目もないし。ねえ」
「……」
ふざけているわけではなさそうだ。背後では攻防の音が聞こえている。
トムとエイルのその後の展開も気になるが、
琴音の雰囲気はカズハを逃がそうとはしていない。
「そう。2つ目の罠を解除したのは琴音、あなたね? 先回りしていた」
「罠? そうそう。普通に歩いていたら急に空から槍が降ってきて。
驚いちゃった。傘をさしていなかったらケガしちゃうとこだったわ」
ポンと手を叩いて、そんなこともあったなあとあっけらかんに言い放つ。
――あの傘だけで槍すら通さないと言うの?
「と、いうわけでー」
「いただきまーす」
!
いただきますの声はいきなり真後ろからした。瞬時に短刀を具現し、
回転がてら切りつける。しかしいとも簡単に交わされる。
「イヴィルアロー。そらそらー」
距離が開いたところから闇の矢が複数本放たれる。
さらにコウモリが一気に現れ、空を覆いだした。
コウモリが分散消失し、霞がかったように一段階周囲が暗くなる
闇の矢を短刀で叩き斬り、二投、三投とクナイを投げ返す。
しかしいつしかのように、琴音が漆黒の羽織を広げるとそちらに吸い込まれていく。
――相変わらず実体がさっぱり分からない!
「火遁、火炎手裏剣」
ピピッ
物理攻撃のみでは琴音を捉えられないと読んで、術との複合でいく。
しかし琴音の姿が闇の霧のように分散して消えてしまう。
「おとなしくしないならちょっと痛めつけちゃうわよ?」
「こっちのセリフよ!」
「うふふ。ヘムドパルサル・ベス」
――! これは!
暗黒球体が降りてくる。瞬間、すさまじい闇の衝撃波が中心から放たれる。
闇属性の最高位魔法だ。
――影潜り!
急いで木陰の影に潜り込み退避する。暗黒球体が闇の大爆発を起こす。
ドガガンッ!
岩場が闇の爆撃によって形が変わってしまっていた。
さらにやや遠くの木々まで最初の衝撃波でズタズタに裂かれている。
カズハが琴音の背後の影から現れる。雷撃を込めて切りつけるが、
これも交わされる。いや、当たっている感もあるが、まるで手ごたえがない。
――琴音、やっぱり強い!
というよりその辺の人が勝てるレベルなんて超越している。
なんで学生なんかやってるの?
「やるわねえカズハさん。未だに無傷だなんて信じられない」
「琴音! あなたの目的は何!? オーブの点じゃないの?」
気づくといつしか見たように、琴音の目が真っ赤になっていた。
「オーブの点? そんなのあったわねえ。見たことないけど、どんなのかしら?」
すっとぼけたようにオーブを具現させる。サー・ナイアの信仰なので、
カズハと同じ黒色だ。
65535
――え。
「こんな感じだけど、どうなのかしらね? 別にどうでもいいけど。クスクス」
「……」
――ちょっと分けてくれない?
「……血を吸いたいって、どういうことなの? なぜ私なの?」
こんなところまでわざわざ追いかけて来てまで狙ってくる、
要領を得ない琴音の行動に疑念を持つ。
「だって。あなたからぷんぷん匂うじゃない?」
「聖女の血の匂いが」
!?
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