第7話 - 素養測定 -

-魔蔵値-。

 端的に言えばMPのようなものだ。魔力の大きさではなく、使える魔法や技能などの限界使用回数に影響する。魔導士ならば喉から手が出るほど欲しいものだが、才能は生まれたときから決まっており、終生ほとんど変化はしない。


 入学時に検査機関で測定したもを提出はしているが、改めて学院としても把握したいのだろう。検査室に集まった面々は、いかばかりか緊張の面持ちだった。


相手の魔力は体感で大小ある程度分かるが、魔蔵値は技の限界回数のそものであるため、あまり人にも言いたくない。


 じきに順番が回ってきた。白衣を来たスタッフ数名が機械などを当て、術師が照合し、記録が打ち出される。


『352』


――入学資料の提出時と誤差程度ね。


 魔蔵値の平均は200程度、500以上ならかなり高い。中には4ケタを超える者もいるという。カズハは中堅上位といったところか。入学用件に魔蔵値100以上とあり、魔法の素養が無い者はこの養成コースに入れない。


皆終わると、テストの点が返却されたときのような様相で、

そそくさと退室していった。


「政勝いくつだったの?」


席にもどるなり適当に聞いてみる。


「……おまほんと遠慮がないのな。300ちょいだよ。別に普通だ。お前は?」


「53万よ」


「あっそ。がんばれよ帝王」


 そのまま教えておいた。

その日もマーヤと共に下校する。しかし普段より明らかに口数が少なく、表情も冴えない。やがて切り出してきた。


「カズハちゃん、魔蔵値、いくつだった?

 あ、いいたくなければいいんだけど……」


個人的に特に隠したいものでもない。352の数値をそのまま伝える。


「あ……いいなあ、高くて」


たしかオークに襲われていた日に魔蔵値は高くないと言っていた。


「私、今日97だったんだ。地元の検査したときは、103だったんだけど……」


入学条件は100以上だ。97なら満たせていないが――


「ま、誤差だしいいんじゃない? 入っちゃえばそれまでよ」


 雑に慰めておいた。マーヤ得意の女子力で早くも集めた情報によると、

ローザという本校編入の女子が800を超えていたらしい。


 翌日、そのローザという女子のグループにマーヤはお菓子屋に誘われたようだ。

今日は共に帰れないと言われる。


「なんで私には声がかからないのかしら? 政勝のせいじゃない?」


帰りの荷物を仕舞っている政勝に八つ当たりする。


「何で俺のせいなんだよ理由を言え端的に」


飽きれがてら逆に捲し立てられる。


「私達がカップルに見えてきっと誘いにくのよ。ほんと御免だわ」


「もう俺キレていい? ぷっつんしていい?」


 ピキピキしていたのでさっさと立ち去って職員室へ向かった。担任のカトリーヌはすでに戻っていたので、そこへ行く。どうしたの? といった様子でクールに振りかえり足を組む。その姿もまさにキャリアウーマンで様になっている。


「すみません、先生、相談があるのですが。

 実戦科へのクラス変えは、できるのですか?」


「実戦科へ? なぜかしら?」


 そもそも実戦科の存在を知らなかった。自分は淑女でなく元来そちら向けだと、率直に理由を説明した。


「残念ながら、クラス変えは無理よ。この特例の養成コースは、

 3年間が予定されている。一度退学して、

 来年新入生で入り直すしかないわね。ただ――」


自己都合にあたるので、特待は取り消され、寮や支給品などは一切なくなり、全額自費になるという。カズハには難しかった。


「方法が、全く無い、というわけじゃないけど……。

 今のあなたには教えたくないわね。性格からしてそっちに注力するでしょう? 

 淑女を目指すべきです」


先日の信仰の授業でこの担任の目利きの力は認めている。だが、勿体つけられたようであまり気は晴れない。挨拶して渋々退室した。


 職員室を出ると、同時に隣の部屋から大柄な男子が出てくる。指導室、と書いてあった。ポケットに手を突っ込み、そのまま振り向いて歩いて来た。カズハとぶつかりそうになる。というか、わざとぶつけてきた。


「きゃっ」


 ぶつかりその場にしゃがみ込む。男子は190cmを超えるほど大きい。黒い短髪で鋭く剃りこみが入っており、腰パンぎみでピアスを付けていた。


「あ? なんだわざとぶつかりやがって」


「そんな、そっちからぶつかってきたのに……」


「……カカカッ 違うな。テメエは余裕で避けられたのに、

 分かっててわざとぶつかった」


「……」


 ポケットから手を出し、上から髪の毛を掴みにくる。

スルっと交わし、立ち上がった。


「何をやっている!」


指導室のドアが開き、男性教員が出てきた。


「クラーク。まだ指導が足りなかったか?」


「チッ」


再びポケットに手を突っ込んで、そのまま立ち去っていった。


「教養科の生徒か。気を付けなさい。こう言ってはなんだが、

 実戦科には素行の悪い生徒もいる。関わる際は注意を」


忠告を受ける。いろいろな人間がいるようだった。

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