第5話 - 突き合い -

 翌朝、朝食を取りに向かう。すでにマーヤの姿があった。先に聞いた通り、自分達以外は、本校の学生のようだ。やや時間が違うのか、昨日はまばらにあったその姿は見られない。前日のように、じきに寮母さんから食事を受け取る。


「私達も制服でもいいのね」


「そうね。改造の手間が大幅に省けるもの」


「え?」


「なんでもないわ」


 寮には寮母が1名配属され、給仕や掃除を務めているそうだ。

洗い物をする中年の女性がちらりと見えた。


「あ、そうそう。カズハちゃん、もう本校の男子から、

 注目されてるみたいだよ。かわいい特待生だって」


「え? どうして来たばかりなのに分かるの?」


 マーヤは昨日帰ってから、この寮の本校の学生と交流したそうだ。そのときにすでに男子の間で上がっていた噂話を聞いた。名前が挙がっていたのがカズハと、クラス委員のレミらしい。


「マーヤの話はなかったの?」


「わ、私なんて全然だよ!」


「そうかしら、かわいいと思うわよ。じゅる」


「いま変な擬音しなかった!?」


「いやねえ。味噌汁よ」


――しかし注目は避けたいわね。レミには気配を消すなと言われたくらいなのに、

 なぜ目立ったのか。本校の男子、異様な臭覚だ。


食事を終え、共に登校することにする。さすがに連日のトラブルはなさそうだ。

そのまま教室に入った。すでにクリスも居た。何事もなかったかのようにポーカーフェイスだ。席に着く。


「おはようマサカリ」


「政勝だよ。ワザと言ってんだろどうせそこから髪の毛の話

 もってくんだろコノヤロウ」


「そんなつもりなかったわ」


「……」


――!?


カズハが気づくと机の中に何か仕込まれていた。白い封筒だった。


――こ、これは……密書!?

 里を出されたからには、新たな密命など来ないはず、一体誰が?


 !


 視線を感じたので振りかえる。マーヤだった。少し驚いた顔でこちらを見ている。何か感づいたのだろうか。しかし密書だった場合はマーヤに知られるわけにはいかない。サッと懐に隠した。


 最初の授業が終わると、すぐに封筒の中身を確認に向かう。人気のない玄関先まで移動した。教室を出るまでまたもやマーヤの視線を感じた。何か疑っているかもしれない。言い訳も考えねば。


開封する。


『伝えたことがあります。屋上へ来てください』


――どういうこと? 記載してはダメな内容なのかしら。

 しかし伝令をするのにわざわざ人前に姿を晒しに来るなど安直すぎる。


意図不明の手紙を仕舞い、教室へ戻る。するとマーヤが明らかに待ち伏せしていた。


「カ、カズハちゃん、さっきちらっと見えちゃったんだけど、

 お手紙もらってなかった?」


「……ええ。屋上に呼び出しされたわ」


「え! それって!」


「しっ 声が大きい。危険が伴うかもしれない。

 帰りは一人で先に帰ってちょうだい」


「え? 危険?」


そそくさと席に戻った。



-終業後-


 警戒しながら屋上へ向かう。途中の階段で何やら気配を感じる。何やら声が聞こえるので気づかれないのように身を隠し、耳を澄ませる。男子が3名ほどがいた。


――まだ盗聴用具を用意してなかった。普通に聞くしかない。


「お、おい、お前ホントにいくのかよ」


「たりめーだろ! 初動が大事なんだ。世間知らずのお嬢様って可能性もある。

 成り行きでOKでるかもしれねーだろ」


「くそっ 俺も特攻すべきだったか」


――初動? 特攻? 不意打ちする気かしら。やはり警戒ね。


 1人が屋上へ上がっていき、他の2名は気配を消して隠れているのようだ。気づかないふりをして階段を通過し、屋上へ向かった。屋外へでると男子一人の姿がある。即襲撃の姿勢ではないようだ。


――ん? もう一人気配が。……マーヤ、ね。

 先に帰れと言ったのに、尾けてきたようね。


「あなたかしら? この密書を差し出したのは」


封筒をチラつかせ、ストレートに聞いてみる。


「あひゃい! あの!」


 なぜか声が裏返って切る。165㎝程度の特徴のない男子だ。魔力も闘気低い。何か隠し玉があるのだろうか。


「好きっ! ですっ! つ、付きあってください!」


 !?


「……」


「ふっ、何を言い出すかと思えば。私にスキなどないわ」


「え」


「例えスキがあっても、あなたには突くことなどできないでしょうね。

 ましてその程度の技量で”突き合い”になるなど。出直すことよ」


話しにならないと適当にあしらって出ていく。


「……え、俺振られたの?」



「マーヤ、居るのは分かってるわ、出てきなさい」


 言うと普通に廊下の影から出てきた。なぜかげんなりしていた。結局共に下校する。何か小言をぶつぶつ説教臭く言っていたが、イマイチ理解できなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る