第2話 - 雰囲気 -
学院前に着いた。利用することとなる校舎は4階建てと大き目だが、現在は新制度による新入生の2クラスしかないようだ。3年課程なのでいずれは6クラスとなるだろう。学び舎は一階で二階は実習室に職員室がメイン、3階4階は実戦的な実習ができる広い空間だ。
「見えないわね」
席順のある掲示板の元へ行くも、人が多い。目の前の
――そういえば男子とはほとんど話したことが無い。
コミュニケーションの練習もしたけれど、
ちゃんと男子とも淑女的に話せるかどうか試しましょう。
「そこのハゲ、見えないからどいてくれないかしら?」
袈裟を着た僧侶風の男子が振りかえる。我ながら適格だった。ハゲは周囲に一人しかいない。間違わないだろう。
「え? 俺のこと? ってハゲじゃねーし!
剃ってるのそういう信仰なの! わかる?」
「ああ、ハゲなのに結構イケメンなのね」
「あの、
「分かるわ。そのほうが変装しやすいものね。
あなたに似合うウィッグを持ってるの。これとかどうかしら?」
スポッ
金髪ロングのウィッグを鞄から取り出し男子の頭に被せる。
ププッ クスクス
袈裟着僧侶系男子が周囲に笑われ出す。
「……。いや全然似合わねえし、
何でこんなの持ってるか分かんねえし、つか変装って何!?」
「生えたら返してちょうだい。気に入ったなら差し上げるわ」
それっぽい流れでキリをつけ、さらりと踵を返した。上々だろう。周囲も笑顔になっていたし、コミュニティに問題はない。そして見えたスキ間から席順も確認した。抜かりもない。
▼
「ちょっとあなた」
廊下を進み、クラスに入ろうとした手前で声がかかる。
振りかえると貴族風の女子がいた。
――この女子はたしか、初日にクラス委員に指名されていた。
最も魔力も高かった印象の人物、まさに優等生候補。
「……なにかしら?」
「レミ=マーガリンですわ。なんですの?
その気配を消したような歩き方は。もっとエレガントになさい」
注意さながらクラスへ入っていく。怒られてしまった。特に意識していなかったが、そうなっていたようだ。気を付けねば。あらぬ疑いは避けたい。
席に着くと続々と同級生が入ってくる。この淑女紳士養成課程は、男女20名ほどだ。となりのクラスに実戦的な戦士を目指す養成コースがあり、騎士や魔導士などが同じく20名ほど所属する。
マーヤとは席が離れたようだ。代わりに僧侶系ハゲが隣になった。
「さっきはどうも。俺は木藤政勝(きとうまさかつ)
元から生えてるからこれ返すわ」
変装用金髪ウィッグが返品された。
「カズハ=シラユキよ。残念だわ」
じきに教員が入ってくる。昨日も見たが、あのシスターが担任で間違いなさそうだ。スタイルのいい、眼鏡美人で見るからに仕事のできそうな感じバリバリである。
「みなさん、あたらめて入学おめでとう。ここに来たからには、
私が責任をもってきっちりあなた達の婚期を遅らせ……でなく、
立派な淑女に育ててみせます」
「そう。私のようなデキーる女になるほど、仕事に追われ婚期が
遠のく。その苦悩を味わって頂きます。おほほほほ」
「先生、このクラスには男子も居ます。そちらにもお言葉を」
さきほどのレミが催促する。やはり優等生のようだ。
「あはん、男子の皆? 先生が年上の魅力を教えてあげますわ。
どんどん飲みに誘ってね? 先生どこでもついてっちゃう」
女子に向けた言葉と180°変わって、スリットをチラチラしながら怪しげなセリフを吐いている。男子の反応は興奮と寒さでまちまちだった。レミは諦めて何も言うのをやめたようだ。
「ではさっそく、この1年で具体的に、
来年以降の目指す、自身の進路を決めていただきます」
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