第15話 - 中間テスト -

 野外活動が終幕となった。全員にオーブが行きわたり、

これが進級に大きく影響する。カズハは基本値の100を大きく下回り、

86というビハインドから開始となった。


-週明け-


普段通り、登校し、朝礼となっていた。


「皆さん、来週からは中間試験です。学業の筆記の試験となります。

 クラブ活動をしている人はほどほどに」


 テストの点数自体が成績になるわけではないという。

それぞれの科目の点数がトータルされ、

オーブの数値として試験後に加減点されるようだ。 


――まずいわね。


 カズハの勉学に関しては明らかに周囲より劣っていた。

いや、オーブの数値も明らかに劣っているのだが。


「どうした? 顔色が悪いぞ? オーブ数値よりも」


――ムカツク。


 政勝が煽ってくる。オーブの数値で差をつけているため、

明らかにつけあがっていた。



-放課後-


 普段持ち帰りもせず机やロッカーに放置している教材をとりあえず持ち帰る。

一通り舐めてみるが、やはりさっぱり要領を得ない。


――どうする?


1.誰かに教えてもらう

2.カンニングする

3.解答を盗む

4.試験後点数を改ざんする



4は難しい。科目が多い上に魔法媒体で管理さると手出しできない。

3も無理だ。担当教員それぞれの保管場所から割り出している時間もない。

2も厳しい。カトリーヌ先生レベルが監督だとバレる。

1なのか。



 マーヤの部屋に行ってみた。


「ご、ごめんね? 私も全然教えれるレベルじゃないっていうか、

 ギリギリで、あ、むしろ足ひっぱっちゃうかも」


カツカツで必死に詰め込んでいる印象だったので邪魔は悪いと思い引き下がった。



 翌日、面倒見の良さそうなローザに相談に来ていた。


「え? ごめんなさい、一足遅かったというか……」


 なにやらメンバーで寮の居間に集まって勉強会を行うようだった。

寮長に許可された人数分が埋まってしまったため、追加参加の枠が無いようだ。


「期末のほうでは、ぜひシラユキさんも御一緒しましょう」


「……」


 ローザのほうも、野外活動でのフラッグ戦で敗退し、単に勉学よりも

別の意味で気持ちに焦りが出ているようだった。挽回の機会を狙っているのだろう。



「え? 勉強を見てほしい?」


嫌々レミを訪ねていた。


「中間試験のことですの? ああいうのは勉強とは言いません。

 教科書を眺めていればよいのではなくて?」


「カズハ? かつて試験の点取りだけ上手い者を国家公僕に採用し続けた国が、

 あげくどうなったかご存じですの?

 私達はもっと上を目指すべきですわ。そもそもですね――」


「……」


散々説教された。秀才に聞いたのが間違いだった。



 あっという間に中間試験となった。カズハの成績は、言うまでもなかった。集団が断続的に書き込む中では、リーダー投票で使ったような筆圧を聞き分ける裏技も使えなかった。


ガラガラ


 ある日の放課後、カズハはクラスに残っていた。やがて誰もいなくなると、

実戦科のクラークが入ってきた。


「おう。いつまで残ってんだよ。消えろや」


急に別クラスに入ってきた上に相変わらず威圧的だ。


「……なぜかしら? ここは私のクラスよ」


「なぜ? カカカ。これから何が起こるか、知らねえのか?」


クラークの目つきが鋭くなる。


 ガラガラ


「両者揃っているようだな? ではこれより赤点者の補習を始める」


「……」


 クラークのこちらを見る目つきが鋭さから哀れみに変わった。

立場は同じはずなのにヤンキー者に哀れまれた。

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