第23話 - 野外活動 -

「さて、この野外活動では、

 前駆的な試験の意味合いもあると思ってください」


入学したばかりなので、配点は多くは無いが、

進級に関わる多少の評価を受けるという。

そのシステムの感覚を掴め、とこのとだった。


「そして、終了後、それぞれ一人一つ、オーブを配ります」


 このオーブに数値が表記される。それをこの1年間でどこまで

伸ばせるか。それが進級に大きき関わるシステムになる。


 紳士淑女養成コースはマナーや態度さえ良ければいいわけではない。

貴族、政治家志望なら、統率、統治力や解決力、提案や立案力全般を、聖職者志望なら、導く力や救済力、カウンセリングまで。


 メイド志望なら、サポート力やトラブルの際の細かな機転、気遣い全般を評価される。野外活動の立ち回りで、慣れろとのとだった。


評価に繋がると聞いて、クラスはやや緊張した空気となる。


「野外活動はほとんどクラス親睦がメインです。繰り返しますが、

 慣れることを優先してください」


スタートは、オーブが配られてから、ということだろう。



-野外活動当日-


 ノヴェルティアの城の北にある林間地域は、実習用に使われ、

近隣地域の学生や一般のキャンプ活動で利用される。


 広場へ到着し、教養科は男子が就寝するテントの作成、

女子は夕食の炊事となっている。班分けがされた。


 メンバーはランダムだ。配布された資料をローザが読み上げ、班を構成する。

カズハを含む3人の女子で組むことになった。

メニューはカレー。3人分ではなく、男子の分も含め6人分作るのが条件だ。


 男子はテントの設置場へ向かう。女子はこのテントには泊まらず、

要人の娘もいるので仮設コテージでの宿泊となる。


「えと、誰が何を担当する?」


 カズハ達女子3人が集まって相談を始める。

同じクラスだがあまり交流のないメンバーで少しよそよそしい。

表情を読んでなんとなく意識をさっする。


「よければ私が飯盒をやるわ」


 火の前で汗が出て、さらにススまで付く飯盒炊爨はんごうすいさんを避けたがっている意識が見えた。人によっては苦手にしていてうまくできないこともあるらしい。

カズハはソロで連携しなくていいので都合よく立候補する。


「え、シラユキさん、いいの? みんなでやっても……」


「私は切るのが苦手なの(嘘)、できればそちらをお願いしたくて」


 そういうことならという雰囲気になってうまくまとまった。

飯盒の設置に炉へ向かう。準備が整った時だった。


「ふっふっふ。この時をまっていたぞ」


 !?


突如後ろに何者かが現れる。


「あ、あなたは! 飯盒炊爨の名手、異世界転移者、若山君!」


「この俺に勝てるかな?」


『誰なの? ヒソヒソ』


 後方にいた具材担当の女子たちもその姿に困惑する。

ジャージ姿の若山は隣の釜のスペースへがっつり水を入れた飯盒をセットする。

着火した。


「くっ、勇者クラスと戦える機会はめったにない。

 逃げるわけにはいかない!」


カズハが応じる。カズハ、若山共に、火が飯盒の底面に達する。


「ここからだ!」


『えぇ? ここまででしょう?』


 新聞と小枝を巧みに入れ分け、筒を吹き、うちわで扇ぎ、

丁寧に酸素を送る。2人の釜の火が飯盒の高さを超え始めた。


 ボボボッ


 更にマキをくべる。素材選びは重要だ。

柔らかく木の皮の多い種類を選択していく。

マキのセットの向きも気を付けたい。


「シ、シラユキさん、さすがに火が大きすぎじゃない?」


「何を言ってるの、若山君は私よりもリードしている!」


 黒い煙が出始める。天井のトタン屋根にも黒いススが付き始める。

しゃがんだ姿勢から2人とも徐々に後退し始める。

 正面の熱さは相当だ。黒煙がたびたび目に入り、両者ともすでに

目が真っ赤で涙目となっている。


そして――


 ピピッ ピピッ


ゴング(ストップウォッチ)が鳴った。飯盒が炊けた。

鉄棒を使い飯盒を取り出す。


――火の高さは!?


 若山はほとんど天井のトタンに火の先端が到達していた。

カズハは30センチほど足りていない。


 ゴゴゴゴゴッ


――クッ! 負け、か。誰も若山君には勝てないの?


「シラユキさん? なにをやっているのですか?」


カトリーヌ先生が現れた。完全に怒っている。


「あ、いや、これは! 隣の若山君が!」


振りかえると、そこには何も無く、誰もいなかった。


「若山君? あなたの班の隣は初めから誰もいません」


「……」


カズハは散々説教された。


 ごはんはおいしく炊けていた。蓋までススで真っ黒で、

開けるまで他の女子の青ざめた顔が印象的だった。

カズハの軍手だけ黒さでありえないことになっていた。

具材を担当した女子のカレーをかけ、おいしくいただいた。

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