第21話 - 影 -

『お話があります。授業後、屋上へきてください。レミ=マーガリン』


 チラリと教室で友人と話すレミの方を見る。なぜたったこれだけを直接言わないのか。疑問だったが理由があるのかもしれない。紙を仕舞った。


 授業後となり、マーヤに一声掛け、そのまま屋上へ行く。レミはまだ教室にいた。

今日はギャラリーを決め込む男子系はいないようだ。ドアを開け屋上へ入った。


「え?」


 すでにレミがいた。自分のほうが先に教室を出たはずだ。と、思ったが、前回のレミとの別れでは転移を使ったことがある。教室から飛んで来たのだろうか。


「わざわざお呼びしてすみません。カズハさん」


やや夕日が眩しく、2人の影が長めに伸びる。


「……どうかしたの?」


「本日の用向きは他でもありません。野外活動、

 週末に行われるリーダー選びの投票についてです」


「差し支えなければ、私に一票、ご投じ願いたいのです。

 友人の方達にもよろしくお伝えいただければ」


「……」


 どういうことだろうか。レミは前回、リーダーなどに全く興味なしと言っていた。先生に言われ、義理で挙手するだけだと。なぜ急に方針が変わったのか。


「レミさん、先に前回約束した、下着を見せてくれない?」


「え?」


「今日だったでしょ? オススメのパンツを紹介してくれるって。

 さっそく見てみたくて。待ち切れなかったの」


「あ、ええ。そうでしたわね。少しお待ちいただける?」


レミがごそごそしだす。スッっと白いパンツを見せてきた。


「私物で恥ずかしいので、そのまま見てくださる?」


「――ふっ ハレンチ女が」


 左右にフェイクを入れた後、一瞬で背後に回る。警戒していない人間には不意打ちが有効だが、この女は初めからこちらを警戒していた。故に不意打ちは採用せず、フェイクのほうが有効になった。すかさずレミを固めに行く。


「そんな約束するわけないでしょ。あなたニセモノね? 一体、誰?」


 ボンッ


しかし固める間際、レミは消失し、数メートル向こうへ移動し現れる。


「あはっ、だからシラユキさんは無理だって言ったのに」


 !?


指を鉄砲のようにこちらへ向ける。反対の手で手首を掴み添えた。


 ダダダダダダッ!


 マシンガンのように極小の魔弾をぶっぱなしてくる。

咄嗟に側転バク転と連続で繰り出し横に交わしていく。


――シャレにならないわねっ


「安心してえん、麻酔魔弾よん」


「影縫い!」 シャッ


 クナイを偽レミの影へ投げる、当たれば動きを拘束できる。

が、軽く跳躍して交わされる。すでに魔導士の動きではない。


――初見で影縫いを交わした?


 慣れねば影への攻撃を初めてで交わすのはまず難しい。

手練れでも食らってから解除に行くのが通例だ。


――影潜り  スゥゥ


 自分の影に潜り込む。そして偽レミの影から一瞬で出た。

夕日の位置的に背後を取った。仕込みのネットを繰り出し拘束に行く。


 しかし偽レミは両手首の裾から刃物を出し、

回転がてらネットをズタズタに裂き回避する。


「やはりあなただったのね。建二美子(たちふみこ)」


 ベリベリ、バリ


二美子が変装を解く。茶髪のセミロング、グラマラスな女子だ。


「あはっ、正解よ、さすがん」


「あなたみたいのは初日からマーク済みよ。なぜレミに変装を? 誰の指示?」


「シラユキさん、あなた任務中にそれを聞かれて、答える?」


じゃあね。と手を振り、屋上から真下へ飛び降りて行った。


「……」


 普通に後を追って、屋上から下を見てみた。こういう去り方をする者がその後どうなるのか興味があった。しかしすでに普通に着地し、何事も無かったかの如く、下校生徒の流れに入り、向こうへ徒歩で歩いていった。

 

 白い紐のパンツだけ残されていたので拾った。さっきとっさに取り出したのは自分が穿いていたものだろう。渡さず見るだけと言ったのは温感が残っていて、触れるとバレるためだ。つまり二美子は今――。


帰りに教室に寄った。


二美子のパンツをどうする?


1.本人の机に突っ込む

2.政勝の机に突っ込む

3.クリスの机に突っ込む

4.持ち帰る



――まあ、2でもいいけど3ね。これ以上ないくらい。


 二美子はカズハと同じ闇の習性をもつ者だ。パンツの1つ2つ何も気にはしない。

翌日も何事もなかったかのように登校するだろう。


・・・


 一体誰の差し金だったのだろうか。まず言葉通りの意図はないだろう。今からレミがリーダーになりたくなったとは思えない。対抗馬のローザの妨害工作は疑わしい。


 クリーンなイメージ戦略を用いてはいるが、腹の中までは分からない。はたまた、第三の候補がいるのか。

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