第13話 - 結晶の価値 -

 次の日の朝、打合せ通り朝食を済まし、さっそく城下町へ向かう準備をする。休みの連絡を入れておいた。


「調べた限りだと、骨董品屋にあるみたいだよ。まずいってみよう」


 寮から反対方向の南へ出発する。城の外壁区間を抜けると、すぐに城下町だ。平日ながら人が多かった。ほとんどが仕事中の人だろう。個人の商店が並ぶ街道を進む。


 地図に示される通り、じきにその骨董品屋は見つかる。カウンターのみのごく小さなお店だ。入店した。客はいない。見た目気の良さそうな、白いヒゲの初老の男性が、新聞を読んでいた。


「ん、いらっしゃい。学生さんかな?」


「すみません、龍の角の結晶は置いてませんか?

 後学のため、本物を見てみたいんです」


早速マーヤが問い合わせてみる。


「ああ、レポートでも書くのかな? 2つ置いてるよ。

 結晶についてどのくらい知ってるのかな?」


「それが、ほとんど知らなくて……」


 それなら拝見がてら、説明するよと言われ、ショーケースに保管されていた結晶が取り出され、資料も出された。


「まずこっちの一番安くて流通の多い、青の結晶。これが500万ナン」


「ご、ごひゃく万!?」


2人して驚いてしまった。一番安くてその金額とは。


「うーん、これでも最近は安いんだよ? 竜騎士の間で金策の問題があってね。

 討伐せずに、器用に角だけ落としちゃうんだ」


以前は倍近くしていたようだ。角が生えるたびに切り落とす手法で乱獲が発生しており、値段は下がったが、虐待が問題視され、じきに条約で禁止になる可能性もあるという。


 この青の結晶は1回使い切り、魔蔵限界値を20上げられるが、1度上げると、同じ青の結晶では2回目から使用しても効果がないという。


「次にこの黄色の結晶。今は店にないね。流通が少ないんだ。

 土龍と水龍からしか取れなくて、遭遇率が低いからね」


こちらの価格が、3000万ナン。すでに破格だ。家が建てられてしまう。効果は魔蔵限界値が10上げられる。上昇数値は青の半分だが、何度も使用できる。


「最後にこの最も高価な、赤の結晶。黒龍のみから取れる。

 黒龍の討伐など、誰でも名前の知ってる冒険者くらいでないと無理だ。

 出回っているのは、寿命を迎えた黒龍から取ったものが ほとんどだね」


赤の結晶の価格は1億5000万ナン。使用目的よりも、金持ちのコレクションとしての取引がメインのようだ。効果は何度でも魔蔵限界値を20ずつ引き上げれる。


「ちょっとケタが違ってありえないわね」


「さすがに、これは……」


 気持ちが暗くなった。学生の手が出る価格帯ではない。2人で数日の労働でどうこうなるレベルではなかった。


「ん? 学習でなく、入手がしたいのかい?」


 実は、どれでもいいので1つ求めていると伝えた。学生の身分では少し難しいだろうという反応を受けたので、あえなく店を出る。


「学生さんたち、ちょっといいかい?」


後ろから店主に呼び止められる。


「腕は立つのかい? そちらのお嬢さんは心得がありそうだが」


 地図を見せられる。指で示された場所に棟梁のゼブという者がいるらしい。用心棒を探していて、報酬に青の結晶を提示しているとのことだった。


「骨董屋のゴンタの紹介だと言えばいい。とっつきにくいが、話しは聞くはずだ」


「ありがとうございます」


 他に行くアテもないし、行ってみようという流れになった。場所も1キロも離れていない。じきに到着した。材木加工の工場のようだった。


「すみませーん、どなたか、いらっしゃいますか?」

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