第11話 - ヘルプ -
対面に座ってマーヤの言葉を待つことにする。しかし、俯いたままだ。
やがてカズハにも食事が運ばれ、それも進み、もう少しで終える間際だった。
「あとで、部屋に来てくれない、かな?」
「わかったわ」
端的に返事をし、自室に戻った。
――総括しよう。ローザはまず統領の器ではある。
状況も見えているし、避難時の動きも適格だった。周囲も細かく見えている。
懐柔策も、ズル賢いモノではなく、ごく普通の自身のイメージアピール、
正攻法だった。
しかしレミは。はっきり言って、覇者の器だ。
ローザでは私の変装を見抜けるかは、怪しい。天性の才能を持っている。
そして、私の本心、悩みにまで迫った。
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30分ほど経ったので、隣のマーヤの部屋に向かう。もう戻っているはずだ。合図すると招き入れられた。
カズハの怪しげな部屋と違って、女子力のある部屋だった。本人は相変わらず、気落ちしている。投票の話ではないのだろうか。
しばらくすると、皆には絶対言わないで欲しいと念を押され、話し出した。ここ最近の秘密ブームとは明らかに雰囲気が違う。
「今日、帰りに呼び出しされたでしょ、そこで言われたんだ」
内容は想像以上に残酷だった。先日行った、魔蔵値の測定、その結果が97と聞いていた。そのことについて呼び出しを受け、なんと、一週間後の再検査にて、100を上回ることが出来なければ、『退学』となるという。大概のことには動じないカズハもさすがに驚いた。
「さ、さすがにそれはひどくない? 一度、入学を認めたのだし」
「うん。でもこれまでの保障はちゃんとするって言われて、でもやっぱり、
規定が満たせないと、今後の訓練でも、危険性が高いみたいなんだ」
たった3の不足だが、されど3なのか。その日の体調不良も考慮されて、一週間後の再検査で確定となるそうだ。魔蔵値は一週間程度でどうこうなるものじゃない。聞くに、マーヤが検査した機関も調査されて、数値が軒並み高めに出るという結論だったようだ。
「先生からは、気が進まなければ明日からもう休学していいって言われてて、
理由は作っておくって」
数値はもう確定したも同然、と言われたようなものだ。マーヤは体調不良でもない。精度の高いこの前の測定器では、まず間違いなく再検査でも全く同じ数値が出るだろう。
さすがに掛ける言葉が見つからなかった。
入浴時間となったので成り行きで退室し戻る。
思えば初日にマーヤを助けたのも単なる成り行きだった。お花係に任命されるのを嫌がった、打算的なものにすぎない。
しかしもうマーヤとは知らぬ仲ではない。あの女子力でささやかな情報をもらったりなど、助けられたりもした。損得抜きでも友人と言っていいのではないか。
――マーヤを助けたい。いや、助けたい? そんなこと、私にできるはずない。
私にできるのは工作と妨害。正反対の嫌がらせだけだ。
普段政勝にやっていることと同じだ。本気だろうと、ふざけていようと。
それが私なんだ。人助けなど。
――命令でなく、自分の意思で、行動してみよう。失敗してもいい。
▼
どうする?
1.替え玉をやって自分が代わりに測定する
2.忍び込んで測定値を改ざんする
3.担当者を暗殺する
4.機械を破壊する
――ふっ 私らしい選択肢がずらり出たわね。
でも……まず3.4はない。問題の解決にはならない。
2もダメだ。その場で告げられるのに記録だけ変えても無駄だ。
1もダメだ。あの機械は精巧だった。専門の検査員までいた。
その場でバレるだろう。
打つ手なし、か。シズクさんに手紙を書いて、送ってみた。
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