第28話 走る
「
メイジはそう言い放つと、飛び出た対象物には砂時計のゲームでよく見るエフェクトが出現し、サラサラと下に流れる。メイジは時間が限られた空間の中でシロとナイトに向き直り腕を横に振るう。
「
メイジはシロの持つランタンを奪い先頭を切って走る。ナイトは次に起こる出来事が想定出来たようで、シロの腕を掴んでメイジの後をついて走る。
「ナイト!弱体系の魔法使えないの!?」
メイジは走りながら言う。
「そんな、急に言われてもさ……無理だよ~~」
「今度詠唱短縮術教えるわよ!だから、んあ~!今度でいいから今はもっと走って」
シロはナイトに腕を掴まれたまま頭をフル回転にする。
突き出たフォーク、次々と出現したスプーンにナイフ、メイジのかけた魔法、僕とナイトにかけた魔法、走る二人、
砂時計の消えた対象物
動ける対象物
崩れたトラクトの石の壁
追いかけて来る敵
大群
勝てない相手
不戦敗
逃げなきゃ逃げなきゃ。逃げなきゃ逃げなきゃ逃げないと、死ぬ!
シロは後ろを振り向き、迫り来る【ゴブリン】の群れを見て、ナイトの手から離れて一緒に走る。
三人は懸命に走る。足の筋肉が硬くなるのを感じながらも必死に。
「メイジ、追いつかれちゃうよ……もういっかいスピーダップして」
「待ってっ、今考えてる!」
ナイトは背後の状況を報告しつつ打開策を提案するが、メイジの視点は違う箇所を見つめながらナイトを見る。
「メイジ!テレポート!テレポーションでもいい!どっかに瞬間移動しよう!」
それを聞いてメイジは顔を顰める。
「一か八かなの!こんな危機的状況で失敗しても詫びないからっ」
「いいよ!絶対怒んないからっ」
「メイジ!」
「エスケープ!」
メイジは一度止まってナイトとシロの手を強く握って叫ぶ。シロ達の視界はぐにゃりと歪んでそのまま真っ暗に染まった。
【ゴブリン】は何が起きたのか分らず、目の前に居たはずの標的を探しに、更に奥へ駆ける。
シャトルシップ船内にて
再びシロ達の視界が正常になった時にはシャトルシップの船内だった。
視界の回復と状況の理解に数秒時間を消費したが、シロ達は頭を抱える。
「逃げたとしても、どうしろっていうんだよ…」
「今の僕達だったら、あんな数には太刀打ち出来なかったしね」
「それに……私の体じゃ、魔力の回復に少し時間がかかる…。休戦よ」
「くそっ……」
船内が暗い雰囲気に包まれた中、船内の受信機がその雰囲気を掻き消す様にうるさく鳴る。
《——、此方王宮整備機関シャトルシップチームです。応答を願います》
「…此方メイジ。シードかしら?」
《はいっシードですよ!》
シードの明るい声と共にモニターに顔が映し出される。
「質問があるの。私の魔力が回復した後最後に居た世界に戻る事は可能かしら?」
《勿論ですっ一度訪れた事のある世界ならこちらでルートを登録されているので何時でも戻る事は可能ですっ!》
「じゃあ、時間は遡る事は可能かしら?」
メイジのその言葉にシロとナイトはハッとしてモニターに目を向ける。それを見てシードは苦笑いを浮かべて口を開く。
《申し訳ありません…訪れた時点でメイジ様達の時間軸は進み続けているので多少時間は進んでいると思います》
それを聞いてメイジは眉を顰める。
「早く見つけなきゃ…」
苦虫を噛締めた様に顔を顰めるシロ。そんな暗い空気の中、ナイトはピコンと何か閃いたような顔をしてバッグから小さな物質を取出す。
「これ!転送出来る?あと、これ解析とか出来るかな?」
ナイトが取出した小さな物質は【ゴブリン】に逆襲をされる前に拾ったあの綺麗な石粒だった。
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