第25話 火薬
暫く火薬の臭いと黒い硝煙(しょうえん)で隠れた岩石は粉々に消えて奥へ進める線路が見えた。
「これで進めるよ」
そう言って【ドワーフ】はトロッコ置き場に向う。
「…なにごとぉ?」
「あ、スリップおはよう」
今まで眠っていたスリップは先程の爆音で目が覚めたようで、涙目になりながら話す。
「シロぉ~……ここの道を進むならアクセル、使って?」
「俺はモノですかぁ?ハンチョ~」
急に名前を挙げられたアクセルと呼ばれた金髪の【ドワーフ】は困り顔で言う。
なんのことか分らず、シロはきょとんとする。
「どういうことっすか?」
「ん。この先の道はちょっと遠いから、アクセルのトロッコとアクセルを使ってほしいなって」
「あー、なるほど」
「俺はやっぱモノですかぁ……」
「アクセル、頑張って」
そう言ってアクセルはがくりと肩を落とす。それを慰めるかのように茶髪の【ドワーフ】は励ましの言葉を呟く。
「ん?ブレイクお前っ!俺のトロッコに何付けてんだよ!」
そう言って、アクセルはブレイクの頭を小突く。
そのトロッコは列車に似た形状のトロッコだが、顔の部分にドリルが付いている。多分、不恰好な所が気に食わないらしい。
「開拓区画に向うんだから、これ付けないと多分不便だと思うから」
「案外似合うぞ」
「開拓トロッコってかっこいいかもよ?」
三人から好評を貰って多少いい気分になったアクセルは髪を掻きながら自分のトロッコに乗り込みエンジンを蒸かす。
「はいはい。んじゃ、シロ!ぶっとばすぞぉ!」
ぐいっとシロを乗せると、加速させて開拓区画に突き進む。
「うぉぁわわぁぁあああああああ!速い―――――っ!」
後ろを見る暇を与えず、シロは必死にアクセルの体に抱き着いて列車トロッコの追い風や重力に耐える。
「早かったねー」
「あんなもんだろ」
アクセルとシロを見送った【ドワーフ】達は鉱山に残る【ドワーフ】が救出出来ただろうと思いロイが乗っていたトロッコに乗って鉱山の出入り口目掛けて全速全身する。
渓谷鉱山 開拓区画にて
シロとアクセルは開拓区画に続く線路を抜けて出た。強制スクロールする視界の中、シロは取り残された開拓班の【ドワーフ】達の姿を探す。
アクセルが急ブレーキをかけるのと、シロと爆弾に火を点けてトラクトに投げた【ドワーフ】との目が合うのも同時だった。
「急行列車が来たぞ!乗り込めっ」
金髪でオールバックの【ドワーフ】がそう叫ぶ。シロは彼の事をよく認識していた。見た目がシロの苦手な面持ちの【ドワーフ】だからである。
シロがこの人達と乗るのかと不安に駆られている中、爆破音と共に開拓班の面々はトロッコに乗り込んで行く。
「早く出せアクセル!」
「はいはいっ」
ガシャンとレバーを上げて当てもなく全速全身させる。
「アクセルありがと!おや?シロじゃん!シロもありがと!」
「ど、どういたしまして…?」
シロはヤンチャな見た目の【ドワーフ】に目を輝かせながら手を握られる。
「俺ニトロ!よろしくね!」
「あ、よろしくお願いします…」
「あ!俺はマーボだよっよろしく」
「俺はショーエン」
次々と自己紹介を始められ、シロはあたふたして会釈する。
「おいおいおい……あいつら追っかけて来てるぞ!」
「嘘ぉ!?」
皆一斉に後ろを振り向くと、そこには四足歩行で這(は)って追って来ている。
「アクセル!スピード出ないの!?」
「フルだよっ!」
「もっと出せよ」
「これ以上出せたとしても俺達風に耐えきれなくて吹っ飛ぶって!」
シロとアクセルと開拓班の班長で言い争っていると、後方から無数の爆発音が聞える。
「そーれっ!」
「ほいっ」
「もっともっと!ヒャッハー」
どうやら爆弾をトラクトに投げつけているようだ。
「お、面白いコトやってんじゃん!俺もっヒャッハー!」
「えー…アング班長、いいんすか?それ」
「いーんだよ!ヒャッハーっ」
「ヒャッハー!」
開拓班は過激派な班だと知ったシロは次々と投げられてはトラクトと共に吹き飛ぶ爆弾を見つめて、楽しそうと思ってシロも後方に移動する。
「お、俺も投げたい…です」
「いいよーはい」
すんなり渡される点火済みの爆弾。シロはギョッとしてすぐさまトラクトに向って投げる。トラクトはシロが投げた爆弾に攻撃を受けると、今まで倒れなかったトラクトは消え去った。それを見て皆は確信した。シロが投げると敵は居なくなると。
「シロはいっ」
「ええ!早い!早いよ皆さん!」
皆は次々に爆弾に火を点けてシロに手渡す。シロは慌(あわ)てて爆弾を投げる。どこに着弾し爆発するか分らないが、無我夢中に投げる。
「いいぞ!もっと投げろー」
「ヒャッハーっ!」
「ヒャッハー!」
謎の団結力を実感しながら、シロは楽しくなってトラクトを狙って投げ続ける。
「ねえ!アング班長!この先行き止まりじゃないっすか!」
アクセルが焦燥混じりの声で叫ぶ。それを聞いてシロとアングは振り返る。大分距離はあるものの、かなりのスピードを出している為、激突すればトロッコ列車ごとぺしゃんこになることが想像出来る。シロは一気に血の気が無くなる。
「どうするの!」
「知るかよそんなの!」
それを聞いていたマーボがおもむろに取出した線に火を点ける。
「マーボそれ何処の導火線?」
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