第18話 閑話休題2
「今どれくらいかな?」
「まだだと思うよ」
昨日からコブがバツ印を付けた箇所からスプーンを模した武器で掘り進めている三匹は眠りを妨げられた【フレム】の灯火に照らされながらそんな事を呟く。
「んだぁ!しつけえし熱いわ!」
「……ジン様の安眠を邪魔した奴にそんな気遣いする必要ないってさ」
「んだとぉ!ふざけんなよ」
自身よりも主人の眠りを妨げた彼らにご立腹な【フレム】はふよふよとコブに近づいたり、クブやカブに話しかける様に揺れる。
「んまぁまぁっ頑張って掘ろうよぉ」
「…さもないとオイラ達をここで灰にするみたいだぞ」
「なんでお前にはこいつの言ってることが分んだよ!」
「うんうん、意思疎通なんかコブとはしたくないんだって!」
「オイラだけかよ!」
堪忍袋の緒が切れたコブは武器を捨て、暑さで吹き出る汗を手で拭い【フレム】に投げつけた。【フレム】は汗が嫌なのか、小さな飛沫に凄まじいスピードでコブから離れる。
「ジン様の為に、もう少し掘り進めよう」
「……ん?震動が伝わるな……地上で何か移動しているな」
「確か早朝にジン様のお友だちが遊びに来るって言っていたね」
地上でトラクトとメイジと【エルフ】達が闘っていることも知らずに、三匹は地上の揺れや、落ちてくる小粒な土や小石を気にせずに掘る手を休ませない。
「すっごい団体だね!たくさんのお友だちが遊びに来たんだねっ」
「にしては多すぎねぇか?ジン様のお城に入りきらないんじゃないか?」
そんな事を考えているコブに【フレム】がトゲのある発言をする。
「…そこはジン様の魔法でなんとかなるんじゃないか、マヌケっ…だって」
「てんめぇ…クブもそのまま言わなくたっていいじゃんか」
笑顔のまま告げたクブに顔を向けて苛立つコブ。
「少し楽しくなってね。これでも優しく伝えてる方だよ?」
「なんだよ…実際は汚い言葉使ってるってのかい」
「オイラの頭が回らないくらい早口なんだよ彼っ」
「……掘り進めよう」
【フレム】に何かして逆襲してやろうと考えるよりも、コブはジン様の為にいち早くこの任務を遂行する事を決めたようで、今までよりも力強く、迅速(じんそく)に土の障壁を掘って行く。カブとクブは自分も通れる位に周りの土を掘り崩してからコブの掘る穴を追いかける。——————
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