第12話 神殿の森の道中
あれから三人と一体は深い森の奥へと進んで歩く。
「どうして虐められていたの?」
「…分らないの」
シロは困った顔をしてフランに花畑で起こった出来事を聞く。
「いつものように花畑で花粉を採っていたら一体が苦しみ出して、そしたらあんな怖い顔で私達を襲い始めて…何が原因か分んないの。でも、シロ達が来てくれて良かった~」
「どういたしまして~」
「うへー、歩き辛くない?」
「小さいから仕方ないんじゃない?」
「んだよそれ……あんまりだぁ~」
「ふふっ、シロったら変なの。【ドワーフ】なのに体力が無いなんて」
「っ…いつもサボってたからなぁ、やっぱ労働しなきゃなっあー、働きたくねぇ…」
そう言ってシロは溜息を吐く。
「ミネルヴァっていってね、すごい怒りんぼさんなんだよ~会ったらシロの事話してあげるねっそれで、沢山労働させてあげるねっ」
「おうふ…就職先が見つかって嬉しいなぁ…」
しばらくすると、ぐー……、と空腹を知らせる音が聞こえて誰が鳴らしたのかと視線を交互に見ると、一人だけ頬を掻いている者がいた。
「ごめんね、お腹空いちゃった」
ナイトは二人と一体に申し訳ないという顔をする。
「ナイトは食いしん坊さんなんだねっ神殿まであと少しだからもう少し頑張ってね」
そうフランが言った後、ナイトは立ち止まって鼻先を動かした。
何か美味しそうな匂いでも嗅ぎつけたのかと皆は思ったが、ナイトの表情が嬉しそうではなく、不機嫌という顔なので、嫌な空気が流れてくる。
「知ってる。この匂い……僕の嫌な臭いっ!」
するとシロ達を囲む様にトラクトが次々と現れ始めた。
「さっきの子達の仲間…?」
「そうみたい……」
先程のトラクトよりも大きいトラクトがシロ達を今にも襲いかかろうとしていた。
「おおおおおおお!先制だおらぁ!」
そんな事はお構い無しにシロは自分の意思で剣を手から出すと、前方のトラクトに剣を突く。
トラクトはいつもの様に霧状となるが、霧は大きな手となり、シロを引っ掻いてやっと消える。
「ぐっ!?…カウンターかよっ…」
剣でも見極められなかったトラクトの攻撃がシロの体に痛みを走らせる。それを機に今か今かと待ち構えていたトラクトが一斉に襲い来る。
「シロっ!」
メイジはすぐにナイトの腕を掴みシロの元に駆けつけると広範囲に防壁を作る。
トラクトは上から下にかけてびっちりと防壁を攻撃する。
「シロ~」
ナイトはポーチから水薬を取り出すとシロの傷を負った体にかける。すると、見る見るうちに傷が消えてシロは目を見開く。
「ありがとうナイト」
お互い笑みを浮かべるが、防壁を叩いたり、掻いたりする音で現状の危険に引き戻される。
「この壁ももうじき消えるわ。…この壁が消えると同時に全方位にトラップ魔法を出してから全方位に押し魔法を出すわ」
そう言ってメイジは二人を中心に立たせてその周りに素早く地面に模様のような、記号のようなものを描く。
「これが成功したらシロとナイトに攻撃力増強魔法をかけるから」
「「うん」」
二人はメイジの言葉を聞く。
「じゃあ、あたしは仲間を呼んでくるねっ」
「助かるわ。そしたら二人は存分に前だけを見て闘って」
防壁の内側がミシミシと音を立て始める。
「そしたら—————」
シロの言葉を遮るよにメイジは話す。
「安心して。私が防いで守るから」
「トゥンク……」
シロがメイジの格好良さに心をトキメかせていると遂に防壁が崩れる。
シロとナイトには見えないが、メイジはトラップを出現させる。
トラクト達はトラップのある位置に足を踏み入れると同時に体に電流を走らせ一時的に戦闘不能にする。
前方にいる味方が戦闘不能になっていてもお構いなしのトラクトはメイジが書いたルーン文字を踏むと魔法が発動し、トラクトは自分の味方を巻き込んで後方に突き飛ばされる。
「我らに力をっ!」
順調にメイジは攻撃力増強の魔法をシロとナイトにかける。
「それじゃあ行って来るねっ!」
そう言い残しフランは羽を広げ何処かへと飛び去る。
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