第11話 素材世界『マテリアルヒル』採掘山・渓谷にて
「うぉああああああああああぁ!」
視界が回復したシロの目の前には砂利が散乱した地面が映る。
顔面を強打したシロは直ぐに体を起こして顔を触る。
「あー…イッテェ………二人はドコだ?」
どうやら二人とはぐれてしまったようだ。
「うおああああああうああぁ」
シロは既視感を覚えながらも空から降ってきた影を頭上と背中で受け止める。
「デジャブかよ!下りろ!」
「うぅ…ごめんねー」
「すぐに避けないシロも悪いわよ」
「大体お前ら重いんだよっ——あ、いえ、何でもありませんでした。本当にごめんなさい!」
そう言ってシロは目の前にいる人の様に見える灰色の獣と耳が長く高身長の美女に全力で謝罪する。
「どうしたのシロ」
「何か変かな?」
「え?な、ナイトとメイジ………?」
シロが言うとナイトとメイジは顔を見合わせて互いの容姿が変わった事を理解する。
「そうみたいね」
「はぁ~よかったぁ~俺第一夜にして人狼に噛まれた気分だったよ」
「そう言うシロはそんなに変わってないね」
シロをじっくりと見てナイトは言うが、
「明らかにサイズ感が違うって!うわっ!?俺チビじゃん…!」
どうやら不満があるらしい。
「【ドワーフ】という種族よ」
「シロすごーい!」
「いやー、それほどでもぉ」
「僕のは?」
そう言って尻尾をユラユラと揺らす。外見が恐ろしくても中身はナイトのままだと二人は思う。
「【ワーウルフ】よ。五感が優れた種族よ」
「そしたらメイジは【エルフ】だね!森の守護者で魔力が強いんでしょ!?」
シロは子供の様に目を輝かせて大きな声でメイジに言う。メイジの額にあるラリエットの宝石が太陽光でちらちらと青く光る。
「よく知っていたわね。ナイトは【ピクシー】と【フェアリー】の区別を理解したばかりなのに」
「え!?【ピクシー】と【フェアリー】って区別されてんの!?」
「【ワーウルフ】かぁー。ちゃんと覚えるよ」
柔和な雰囲気の中、突如として危険が訪れる。
「きゃああああああああ!」
誰かの叫び声が遠くの方から聞えた。
「あっちの花畑からだね」
ナイトが耳を動かしながら渓谷から見下ろせる小さな花畑を指さす。
「行きましょう」
「おうっ」
三人は花畑に向って走り出した。
花畑にて
風で花弁が舞う花畑の中、四つの浮遊物が交差したり対峙(たいじ)するを繰り返していた。遠くから見たら妖精同士が戯(たわむ)れている様にも見えるだろう。
「誰かっ、助けて!」
三体の妖精が一匹の妖精を虐めていると気付かなければ。
「止めろお前らっ!三対一は卑怯だろうがっイジメかよ!」
やっと花畑に辿り着いたシロは丘の上から声を張るなり花畑に向って猪突猛進する。
それを見た三体の虐めていた妖精はシロに向って突撃する。
「やっぱ俺狙いかよっ」
シロは素早く剣を掌から出して突撃する妖精に斬りつける。
「くっ……あー、もうっゲーム通りじゃねぇのかよ!知ってたけどっ!」
横に縦にと妖精を狙って斬るが、三体の妖精は俊敏に動いてシロの剣を交わす。
「雷よ」
メイジも魔法を出して援護するが、中々当たらない。
「………」
そんな中、ナイトは急に体勢を前にして三体の妖精を睨む。それに気づいた妖精はナイトの眼を見て動きを止める。その隙にナイトは自分の体を活かして三体の妖精を同時に引き裂いた。
妖精は以前闘ったトラクトの様に霧状と化して消え去った。
「………」
「…ぅわあお」
「……えへへ。動き易いね」
呆然とするメイジとシロの前で神業を見せたナイトは照れた顔で頭を掻く。
「え……誰?」
蚊帳の外な状況で被害者である一匹の妖精は異常な光景を目にして三人と面識の無い者だと判断する。
「あ、俺シロ。シロって名前なんだよろしく」
「僕はナイト、よろしくね~」
「メイジよ。驚かせてごめんなさいね。私達はさっきみたいな敵と闘って旅をしている旅人なの。」
「そうなの!?じゃあ、歓迎しなくちゃ」
妖精は緊張した顔から笑顔に変わって言う。
「あたし、フランっていうのっよろしく」
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