第5話 王宮と地下を繋ぐ階段にて

 地下ファクトリ―へと続く階段をメイジとナイトは下りていく。

「いい?ナイト。それじゃあもう一度言ってみて」

「うん。僕らは他の世界の味方であり敵でもある。だからなるべく干渉かんしょうはしてはいけない。世界のジツジョを護るために」

「最後が惜しかったわね。秩序チツジョ、よ」

「はーい…なんて意味?」

「物事の正しい道筋よ。ほら…ルール?」

「なるほどお」

「……ナイトは何持ってきたの?」

「あーこれ?」

 階段を下り続ける二人はそんな他愛もない会話をしながら暗い空間に柔和な空気を作る。

「魔導騎士の皆がくれたんだ!どんなに入れても入るマジックパック!いいでしょー」

 メイジに嬉々としてバッグを突き出して見せるナイト。それを見てナイトは優しく微笑む。

「そうね。それにたくさんの素材や薬材が入るわね」

「そう!メイジのストックしている薬瓶も入るからね」

 誇らしげな顔で言うナイトにメイジは悪戯をしてやる。

「じゃあこの魔導弾をポッケにでも入れて頂戴」

「やだよ!そんな物騒な…」

 ローブの装填ポケットから回復系の魔法弾を取出してナイトに見せる。すると反射的に突き出していたバッグをバッと自分に引き寄せては強く抱締める。

「回復弾よ」

 そう言って回復弾をしまっているうちにやっと最後の階段を下りて重々しい扉を二人で開ける。

「ん?あー!お待ちしておりましたぁ!ようこそっ地下ファクトリーへ!掃除しておいてよかったねシド」

「うん………」

 扉を開けた二人の目の前に陽気な少年とその子に手を引かれて前に出てきた前髪の長いミステリアスな少年が現れる。

「申し遅れましたっ僕はシャトルシップチームのシードです!シャトルシップの整備、ナビゲートを担当させて頂きます!宜しくお願いしますっ」

 そう言ってシードと名乗る少年は笑顔で挨拶する。

「…俺は、シャトルシップチームの異空間探——————」

「こらシドっ今は時間がないからいつも通りじゃダメなんだよ!」

「ごめん…えと、シドです…。整備、システム開発……他にも色んな事してます」

「おみしりおきをーっ」

「おきよ…」

 そう言って二人で笑みを浮かべて挨拶する。

「そんな敬語使わないでよぅゆるっとでいいよー?」

「そうよ。長い付き合いになりそうだし」

「そうですかー?では軽くよろしくっす!」

「…………しくっす」

「ところで、随分荒れていたようね……」

 そう言って改めてまだ片付けの済んでいない部屋の一角を見る。

「勘弁して下さいよ~シップの作業と最終確認と掃除を同時進行した結果っす」

「至急でも間に合いませんよ…ラボもアトリエも掃除が行き届いていないんですよ…」

「おーいマニア兄弟、ウォッシュ持って来てやった————————」

 奥から声が聞こえ、四人はそちらの方向に顔を向けるとそこにはバケツいっぱいに洗料水が入った物を持ったシドとシードと同じ作業着の少年がいた。

「ちょっと止まんないでよ」

「おわ!?」

 その少年の後ろには人がまだいたようで、少年は押されて持っていたウォッシュをバシャアンと比較的綺麗な床に撒いてしまった。

「ちょっとコネット!?大丈夫?」

「バカバカバカ精密機械に侵攻してるぞ阻止しろ」

「とりあえず避難させないと………」

「せめて汚い床に撒いてくれれば」

 シードがメイジとナイトを置いて撒かれた洗料水の侵攻経路を阻止するべく加勢する。

「うるせーよアホ!」

 整備士の人間にしか理解出来得ぬ惨事を目の前にナイトとメイジは顔を見合わせていると、唯一惨事に加勢していないシドが口を開く。

「………では、早速御搭乗下さい。安心して下さい…ルートはほぼ王様がプログラミングしてくれました。最初は迷子世界『ロストタウン』に向いますね」

「ありがとう……。それじゃあ行きましょう」

「おー」

 そう言って二人は戸惑いながらシャトルシップの中に入る。

 すると、すぐに機体は動き、シャトルシップは白い光を放ち消えた。—————

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