15「冒険の後で」

 遺跡から二台の車が出る。車内ではレナが、


「遺跡に大きな穴が開いていたけど、アレもタツヤ君が?」

「すいません。力が制御できなくて……」


と謝る達也。


「別にタツヤ君を責めてるわけじゃないんだけど、

凄いなって思っただけで」

「まあ、カオスセイバーの力があってですけどね」


と謙遜した様に言うが、

あれは達也が操縦しているからこそできた事なので、

達也の力と言っても過言ではない。


 その後、少し走ったところで達也は思い立って通信機で、

アルテーアに停まるよう連絡を入れる。

通信に応じて車を停めるアルテーア、達也も車を停める


「どうしたの?」


車を降りて来て尋ねるアルテーア。達也も車を降りて、


「いえ、用心のためにこの前と同じようにしようかと」


以前のようにコンボアスに変身させ、アルテーアの車を格納しようという事だが、


「二台で走ると目立つんで、用心の為です」

「その必要はないと思うけど……」


と言うアルテーアに対し、達也の力を知り、

急な申し出に何かあると思ったのかレナも、


「そうした方が良いと思う」


と同調し結局、


「なんか、悪いわね」


と言いつつもアルテーアも同意した。


 そして以前と同じようにカオスセイバーをコンボアスに変身させる。

因みに今いる場所は森の中だが、開けた場所で、

コンボアスに変身させても問題はない。

その後は、前と同じくコンテナに車を格納し、

アルテーアはボックスホームを介して転移ゲートでレナの館に戻り、


「レナさん、あとお願いします」


彼女も帰らせた。レナは小声で、


「あとで話を聞かせて」


と言ってアルテーアと一緒にコンテナから、ボックスホームに入る。


 二人をボックスホームに入った貰った後、達也は

スーパーカー形態にした後、運転席に乗り込み、


「さて、これからどうするか」


実は、この様な提案をしたのは少し離れた場所とは言え、

メガザンソが周辺をうろついて居る事に気づいたからだ。

しかも、気配からレイカールト達が戻っているようだった。


(ホントに戻ってきている。転移かな)


そんな事を思いつつも、車を走らせるが、

道の関係上、メガザンソに近づくことがあった。

と言っても距離があるので、気づかれることはないと思うが、ただ通りかかると、


「おい!アルテーアとお供の冒険者、出てこい!」


とロボのスピーカーで叫ぶ声が聞こえる。


「よくも私を辱めて、ただじゃ置かないから!」


と言う声も聞こえる。


 この時、達也はレナから迷宮であったことの詳細は聞いていないので、


(レナさん達、何をしたんだろ?)


と思いつつも、車を走らせたが、


「そこか!」


という声と共にこっちに近づいてきた。


 達也は、気づかれたのと、


「このまま、放ってはいけないか」


とつぶやくと、戦う事を決めた。車を本来の魔機神形態にする。

そして、スピーカーで


「カオスセイバー!」


と言うレイカールトの怒号が聞こえてくる。更にスピーカーからは、


「辞めてください!今は撤退しないと!」


と言うグレンの声が聞こえて来る。


 気配からは美味く読み取れないが、

メガザンソの動きも、妙におぼつかなくて、さっきとは違うから、

なんとなくだが、グレンではなくレイカールトが操縦しているようだった。


(あのメモを見ながら操縦しているのかな)


そして、拳を振り上げ襲い掛かって来たが

横をすり抜け何もない場所に殴りかかっていたので、避けるまでもなかった。


 その後も襲ってくるが、接近戦で来る出される拳や、

蹴りは、ことごとく外しまくりで、

達也も次第に何とも言えない表情になる。

ともかくかなり滑稽な状況で、スピーカーのスイッチは入ったままで、


「早く代わって、逃げますよ!」


と言うグレンの声が聞こえたことから、

レイカールトが動かしていることを確信した。


 更には、


「最弱の魔機神相手に逃げるなんて!」


と言う声も聞こえてきた。その後も当たらないパンチとキックが続き、

遂には、やけくそになったような体当たりを、仕掛けて来た。

引き続き避けることなく受け止めて、


「爆発掌底……」


爆発が伴う掌底突きを胴体部分に当てて、メガザンソは吹き飛んだ。

加えて先ほどまでの戦いの影響もあってか、

装甲も破壊される。なお先の戦いでは、

吹き飛ばしてゴールドラグを刺激するかもしれないので使えなかった技でもある。


 更に追い打ちで、


「剛煌弾!」


装甲が壊れた部分を狙って気弾を撃ち、さらに接近し


「瓦烈斬!」


手刀で破壊された装甲の傷口を広げる。

非情に強力な装甲だったが、一度、大きな傷がつけば、

後は破壊するのは容易かった。更に追い打ちとして、


「豪風脚!」


風を纏って蹴りで、再び吹っ飛んだ。


 その後は、無理に起き上がろうとしてブースターを吹かせて、

変な方向にふっとんだり、起き上がったと思ったら転んだり、

もう無茶苦茶で、自滅の道をたどっていて、

スピーカーからレイカ―ルト達の悲鳴が聞こえ、

遂には煙を上げた動かなくなってしまった。そしてスピーカーからは、


「グレン……事情を説明してくれない?」

「金と時間が足りないんですよ」

「『弁解は、罪悪』って言葉知ってるかしら?」


達也は、この状況にやる気が失せてしまい。スピーカーで


「僕もう帰っていいですか?そっちも戦えないでしょ」


するとグレンの声で


「そうします。ごめんなさい」

「ちょっと、勝手話を進めないで!」


いうレイカールトの声がするが、


「ここは逃げた方が良いですよ!」


とスラヴェナの声がして、


「そうそう、早く帰らないと、着替えは無いんだから、

何時までも破廉恥な格好してちゃだめでしょ奥様」


というスヴィの間の抜けた声がする。


「だから、私は独身だ~」


ここで、メガザンソがぼんやりと光り始める。


「グレン、勝手に転移させないで」


グレンが転移装置を作動させたようだった。そして、メガザンソが転移する直前、


「これで終わったと思わないで!」


というレイカールトの負け惜しみの声が聞こえた。


 そしてメガザンソがいなくなった後、


「何だったんだろうな」


と達也はつぶやいた後、カオスセイバーを車形態にして、

その場を後にするのだった。


 その達也はファスティリアに戻って、レナの館に戻り、二人と合流した。

またカオスセイバーをコンボアスに変身させ、

格納していたアルテーアの車も降ろす。

そして、レナの館でメアリーが入れたお茶を飲み一休みしつつ、今後の話をする。


「今後は、本格的なゴールドラドの調査を行う事になるわ。

その時、出来る事なら護衛を貴方たちに頼みたいんだけど、

ただ館長の話だと、国家事業になるかもしれないから、

護衛は衛兵がすることになるかもしれないけど」


一旦、博物館に戻って今後の事を決めるという。

なお依頼は、彼女が博物館に戻るまでなので、

これから一緒に博物館に行くことになる。


「もし護衛となったら、大掛かりになるけど、それでも構わないかな?」


発掘には、多くのスタッフが関わる事になるので、

今回の様な少人数ではなく、かなりの大人数で、

それこそ、ドラゴス商会の所属する冒険者が総出で当たる必要が有る。

もちろん高額の報酬は払ってくれる。


「私は良いけど、調整の必要が有るわね……」

「もちろん、そっちの都合に合わせるから、

それ以前に、依頼するかは分からないんだけどね」


とアルテーアは言う。


 ここで達也が、


「それにしても、ゴールドラドの宝、僕も見たかったな」

「タツヤ君も興味あるの?」


とアルテーアが言うと、


「ええ、宝って何だかロマンがあるじゃないですか」


と達也が言うと、アルテーアは嬉しそうに、


「宝はいずれ、博物館で一般公開する事になるから、その時に身に来ればいいわ」

「それまでは、お預けですね」


と言う達也であるが、その機会は直ぐに来る事となる。


 達也がロマンと言い出して、

彼とアルテーアの間が妙にいい感じな雰囲気になったので、

彼に気があるレナは、不機嫌そうに、


「休憩は、もういいでしょ。早く博物館に戻らないと、

また奴らが来るかもしれないわよ」

「そうね」


とアルテーアは同意し、それぞれの車に乗って王都の博物館に向かった。

その後、道中何事もなくアルテーアを送り届け、依頼は完了となった。


 そして、発掘は一応、国家事業となったが、

衛兵は護衛に付けてもらえず、結局、冒険者を雇う予算だけが与えられて、

ドラゴス商会に仕事が回ってくる事となった。

依頼に当たって、アルテーアが再度、レナの館に来たが、その際に、


「初めて知ったんだけど、マキシ絡みだから、

王家が乗り気じゃないにみたいなのよ」


応接室で話を聞いた達也は、


「なんで?もう魔機神、ゴールドラグはいませんよ」

「そうなんだけど、それでも乗り気じゃないみたいで、

レイカールトに奪われてもいいって感じなのよ。

まあ、ミレイユ姫が支持してくれたみたいだけど……」


そう王族で、ミレイユ姫とその一派だけが、

ゴールドラドの宝を、国の宝とすべきだと主張し、

支援してくれたが、それでも冒険者を雇う予算をくれるだけで精一杯らしい。


 いろいろあるが、とりあえず護衛の仕事を受ける事になって、

所属する冒険者全員で行った。

その際、カオスセイバーや、分身の魔機神、アラハバキ、アトラナート、

ミノタウロスも参加し、レイカールとの再度襲撃に備え遺跡の外で

待機している。ただ魔機神が4機も現れたので、

参加しているスタッフを驚かすことになる。


 さて現場は、第二の鍵により罠が解除され、

大勢の作業員があわただしく宝を運んでいて、

ドラゴス商会の面々、レナやダンテス一家、メリッサ達が周辺の護衛を行う。

アルテーアの好意もあって、達也は魔機神による護衛だけでなく、

宝の運び出しの護衛もしていた。

運び出される金細工、食器から装飾品、像を前に、


「凄いですね」


と目を輝かせる達也。彼には物欲はなく、純粋にロマンを感じている。

その様子を、宝を運びながら嬉しそうにアルテーアは、


「そうでしょう。まさしくこの国の宝よ」


と言う。彼女は、自分と同じくロマンを感じてくれていることが嬉しいのであるが、

二人の様子が、仲睦まじくみえて、同じく傍で護衛しているレナは、

嫉妬のようなものを感じていた。


 ただこの時、目を輝かしていたのは、同じく傍で護衛に関わっているエドだった。

その様子をみたジャスミンは、


「そう言えば、エドは考古学者になりたかったんですよね?」


と言った。それを聞きつけたアルテーアは、その後、休憩時間に、


「貴方、考古学に興味あるの?」


とアルテーアは、エドに声をかけた。


「ええ、昔から冒険小説とか、伝説とか、伝承とかが好きで、

まあ、今は家族の為に冒険者をしてるけど……」


この後二人は、古代の伝説、伝承とか、考古学的な話をして、

妙にもうに盛り上がり、その様子を見て、

レナは妙に安堵したが、同時に嫉妬したことへの自己嫌悪に襲われる。


 そして宝の運び出しは何の滞りもなく終わり、

運搬も何事もなく終わった。

仕事終わりにボックスホーム内の旅館での打ち上げとなり、

大広間で宴会のような事をしていると、


「それにしても、レイカールト一味が来なくてよかったわね」


とレナが達也に言ったが、


「いや実は来てましたよ」

「えっ!」

「すいません。直ぐに帰って行ったもので、言いそびれてしまいました」


連中は修理を終えたメガザンソで、

やって来ていたのだが、途中まで来て直ぐに帰って行った。


「恐れをなしている気配がしましたから、

多分、魔機神が4体もいるんで、勝ち目がないと思ったんでしょう」

「そんな事が、まあ発掘は無事終わったからいいけど、

直ぐに話してね」

「すいません」


と謝る達也。


 とにかく、博物館への宝の輸送の護衛を終えて、

カジノの一件から始まった出来事は終わりを告げるが、


(奴らとまだ会いそうだね)


と皆と大広間での打ち上げの中、そんな事を思うのだった。

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