14「冒険の終わり」

 捕食の結果であるが、擬態化が可能になった事。

分身枠が増えたこと、いくつかのスキルの追加と、

既存のスキルの強化といつも通りと言う感じ。


 ここで既に目を覚ましていたグレンが、スピーカーで呼びかけてくる。


「君は、いったい何をしたんだ?というかゴールドラグはどこに行った?」


そう言われても、正直に話していいか分からなかった。

一応、良い人と認識していても、レイカールトとの繋がりがあるので、

そっちに話されたら困るから、


「さぁ?」


と誤魔化しつつ、


「それより、ゴールドラグは倒した。どうする?戦いを続けるかい?」


するとグレンの返事は、


「もう降参。撤退するから、だから見逃してくれないかな?」


というもので、達也はこんな回答が返ってくるだろうと思っていて、


「ええ見逃します。あなたのボスを連れて、帰ってください」

「ごめん、それは無理。

でも僕がいなくても、あの人たちは勝手に帰ることができるから」


と言って、最初に来た時のように転移ができないのか、

メガザンソのブースターを吹かせると、

超級雷煌斬でできた穴から出て行ってしまった。


「ちょっと!」


レイカールトを連れて行かなかったので、思わず呼び止めていたが、

わざわざ追いかけていく必要性はないように思えたので、そのまま見送った。


 正直、レイカールト達を連れて行ってほしかったが、

勝手に帰れるというなら、それでもよかった。


(それにしてもレナさん……)


気配から、レナ達は健在だ。レイカールト達も無事のようだが、

いい状態ではないようで、


(僕が行かなくとも、レナさんだけで大丈夫だよね)


そう思った達也は、カオスセイバーを車形態にして、

遺跡の奥に停めてあるアルテーアの車の側に停めて、

二人が戻ってくるのを待つのだった。








 一方、迷路を走り抜けるレナとアルテーア。

なお今いる迷路の攻略法は一つではなく、

古文書には、すべての攻略法が載っていた。

ただ一つ気になる事としては、どのルートが早いかは書いていないのである。


「レイカールトもなんだかの方法で、攻略法がわかるだろうから、

ここは急がないと」


とアルテーアは言い、とりあえず早く着きそうなルートを選択し、

できるだけ早足で進んでいた。


 しかし、以前に記したとおり、迷路は罠とかはなく、

仕掛けは隠し扉くらいであり、謎解きの手間はないものの、

入り組んでいて、古文書があっても迷いそうなうえに、

レイカールトの事を気にして、慌てていることもあって、

何度が道を間違え戻るという事をした。


 ただ迷宮のどこからか、


「ちょっと、ボスそっちに行かないで」

「そっちは違うよ奥様」

「だから私は、独身だ!」


という連中の声が聞こえてくるので、

向こうも、道に迷って困ってる様子なので、

それを聞いて、レナ達は安堵することがあった。


 でも油断はできないので、二人は急ぎ足で、進んでいく。

しかし、そうこうしていると、


「見つけた!」


と連中と鉢合わせることもあった。

ただ目的の物を手に入れるのが優先なので、

会っても逃げるの一択で、迷路の複雑さを利用して撒くのであった。


 そんなこんなで、迷路を抜け遺跡の奥にやって来た。


「最後は鍵を開けるだけなんだけど……」


と困惑しながら言うアルテーアに、


「鍵穴だらけじゃない」


と言うレナ。扉は一つだが、壁や床、天井に至るまで鍵穴だらけなのである。

古文書には、鍵を入れると扉が開くとしか書いていない。

何処に鍵を入れればいいか分からないのである。

ちょうどこの時、遺跡が大きく揺れた。

なおこの揺れは、超級雷煌斬を使った時の物であるが、そんな事を知らない二人は


「なに、今の?」


レナは言い不安を感じる中、アルテーアは、


「適当に入れてみるしかないか」


取り敢えず、扉の横の鍵穴へと入れてみる。

なお回す必要はないとの事だし、それ以前に回らない。

鍵を入れてみたが、扉は開かない。


「外れかしら?」


鍵を抜くと、鍵穴部分が引っ込んで穴となる。


「まずい!」


と声を上げたかと思うと、レナを引っ張って鍵穴から離れる。


「ちょっとどうしたの!」

「良いから!」


次の瞬間、穴から矢が飛び出した。咄嗟に離れた事で二人は無事だったが、


「ちょっと待って間違えたら、罠が発動するって事!」


と声を上げるレナ。


「これまでは、罠の事は載っていたのに……

やっぱり自分以外の人間が読むことを想定しているのね」


と言うアルテーアに対し、


「最後の最後で、こういうことするなんて性格悪すぎでしょ。全く……」


と文句を言うレナ。


「けど、これじゃあ、適当にと言う訳にはいかないわよね」


今回は矢だったが、次は何が出て来るかは分からない。


「せめて何かヒントがあればいいけど……」


と言いながらアルテーアは古文書を読み返すが

その辺に関しては、何も書いていない。


「考えるから、連中が来たら頼むわ」

「わかった」


アルテーアは、古文書を何度めくりながら、

考えるような仕草をして、レナはレイカールトが追いついた時の事を考え、

武器を手に身構える。


 しばらく考え込むアルテーアに、レナが


「ホントに意地が悪いわよね。最後の最後で……」


と言うと、アルテーアは、


「そうね。正解はここを作らせ、金細工を隠した古代の王子だけが、知って……」


と言いかけて、


「変ね。これまでは謎解きは穴があっても、罠に関してはキチンと書いてたし、

それにこれだけの、鍵穴よ本人だって、覚えていられるかな?

あと、たとえ覚えていても、うっかりっていう事もあるじゃない」


しかも失敗したら、危ないという状況だから、いくら第三者の事を考えたとして、

自分にわかる程度で、書いておく必要が有るんじゃないだろうか。


「どういう事かしら……」


するとレナが、


「本人には絶対大丈夫って、自身があるのかな」


と言うと、アルテーアが


「絶対に引っかからない……」


ここでハッとなって、


「もしかして最後の記載自体が嘘だとすれば……」


そしてアルテーアは、鍵を手にして、


「間違ってたら、恥ずかしいけど……」



アルテーアはドアの前に立ち、


「開けゴマ!」


と言った。


 すると、扉が音を立てて開いた。


「えぇっ!」


と声を上げるレナ。


「鍵穴を使うこと自体が嘘だったのよ。それにこのやり方なら、

覚えるのも容易いしね」


とアルテーアは言う。そうここまでと同じように、

鍵を手にした状態で、呪文を唱えるという方法を使ったのだ。

彼女の言う通り間違っていたら恥ずかしいが、どうやら正解だったようだ。


 そしてアルテーアは、


「それじゃあ行こう」


二人は先に進むと、台があって金色でエメラルドで装飾された鍵があった。


「これが第二の鍵……」


とレナが言うと、アルテーアはロープを用意し、先に鳥もちをつける。


「用心のためにね」


そういってロープを投げると、先に着いた鳥もちが鍵に引っ付く。

そしてロープを引き、鍵を引き寄せる。

古文書に書いてないが鍵に触れたら、

何か起きるのではと気を付けたからである。


「これでよしっと」


罠はなく無事に鍵を引き寄せ、手に入れる事ができた。


 これで目的は達成であるが、先には複数の扉がある。


「この先に宝があるの?」


とレナが言うと、アルテーアは


「ええ、でも今日は鍵だけ、他を持ち出すのは後日よ」


と言いつつも、


「でも確認くらいは良いわよね。レイカールトが来る前に」


と言って、古文書に従って鍵を手に、念じる事で扉を開けて中に入る。


 中に入ると、アルテーアは、


「すごい……」

「………」


レナは驚きで声が出なかった。

そこには、金で作られた物ばかり、人形や食器、装飾品などが置かれていた。

発光する石が照明になっていて、金の輝きを余計に強調していた。


「こんな部屋が、あと幾つかあるわ。

さっきも言ったけど、持ち出すのは今度ね」


とアルテアは言うが、レナは興味本位で宝に触れようとすると、


「えっ!」


結界が張って会って触れる事ができなかった。


 するとアルテーアは


「この鍵を使って、結界を解除しないと持ち出せないの」


それも古文書だけでなく、伝承として伝わっている。


「もう行きましょ、宝は次来た時に……」


と言いかけた時、


「そんな事いわずに、今日持って帰りましょう」

「!」


アルテーアは咄嗟に鍵を、レナの方に投げる。

直後、首にナイフを突きつけられる。


「レイカールト……」


連中が追いついたのだった。


 投げられた鍵を、レナは受け取る事は出来たが、


「コイツの命が惜しければ、鍵を寄こしなさい!」


レイカールトがアルテーアの首にナイフを突きつけている状態で、

その両端には、スラヴェナ、スヴィがいる。


 かなり深刻な状況だが、レナは思わず


「そっちこそ、アルテーアを話しなさい変態」

「誰が変態よ!」


するとスラヴェナは、


「否定できないですよボス……」

「そうそう奥様も、そんな色っぽい下着で決めてちゃ~」

「だから、私は独身よ!」


このときレイカールトは、ここに来るまで罠の所為で、

服が破れ、下着姿であった。しかも、勝負下着というのか、

妙にエロいデザインの黒いブラジャーにショーツ。

さらにガーターベルトに網タイツと、なんともセクシーな格好である。


 レイカールトは顔を真っ赤にしながら、


「とにかく、鍵を渡しなさい!」

「渡しちゃダメ」


と声を上げるアルテーア。


「自分の置かれてる立場、分かってる?」


と首元にナイフを近づける。


「大人しくした方が身のためよ」


と言うレイカールト。


 レナは迷った。渡したところで、アルテーアを解放するとは思えないからだ。

レナは、三人を倒せるだけの力はあったが、

このままではアルテーアに怪我を負わせることは間違いなさそうだったからだ。

しかしこの時、


(!)


レナはアルテーアの手元に気づいた。

するとレナは


「わかった。1、2の3で、アルテーアと交換よ」


と言うと、


「わかったわ」


と言って、レナが


「1、2……」


と言いかけて、


「ちょっと待って、心の準備が……」

「はぁ?」


その後も


「そこの二人近づきすぎ、離れて」


とスラヴェナとスヴィにいちゃもんを付けたりと、

適当な理由で、先延ばしのような事を続けた。


 その様子にレイカールトが怪しむ。


「お前何を……」


次の瞬間、アルテーアは、


「ウィンドカッター!」


と叫んで、風の魔法を下に向けて使った。

アルテーアは攻撃魔法はほとんど使えない。

仕えるものも弱く。大したダメージを与えられない。

だが、下着をズタズタに引き裂くくらいはできる。

そして布が足元に落ち、


「キャアアアアアアアアアアアアア!」


悲鳴を上げ手を放す、レイカールト。

その隙に離れ、レナの元に行くアルテーア。

二人の部下も、レナの要求で離れていたので、直ぐに対応できなかかった。


 実はレナが、時間稼ぎのような事をしたのは、このことに気づいたからであった。

アルテーアが解放されたので、


「ウィンドシュート!」


レナは同じく風魔法で、三人を吹き飛ばし、部屋の外に飛び出す。

その際に偶然にもレイカールトのブラジャーが飛んで行った。


 このまま、三人と戦う事も出来たが、


「今は、ここを離れましょう」


アルテーアは鍵を持ち帰るのが今は重要だった。

レナから鍵を返してもらった後、その力で部屋の扉を閉め、

通路で三人が伸びているうちに、この場を後にした。


 帰りは迷路では迷いかけたが、鍵の力ですべての罠が解除されたので、

すんなりとも戻る事ができた。


「レナさん、アルテーアさん」


遺跡の奥から来た二人を達也が迎えた。


 そして地下都市の様子を見たアルテーアは


「ゴールドラグと戦ったのね」

「はい」


カオスセイバーとゴールドラグとの戦いで、地下都市はボロボロとなっていた。


「すいません。遺跡を」

「良いのよ。ゴールドラグ戦うとなると、こうなる事は分かっていたから、

目的は達したしね」

「それは良かったです」


ここでレナは、


「もう一体のマキシは?」

「逃げました」


レナとアルテーアは、達也の力を見て、恐れをなして逃げたと思い。

深くは聞かなかった。実際その通りである。


 そしてアルテーアは、


「早くここを出ましょう。奴らに追いつかれないうちに」


アルテーアは、自分の車に、レナと達也は、車形態のカオスセイバーに乗り、

地下都市を後にした。

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