第13話 必殺技
・セリス
「よう、ライオット。
工房の職人連中が朝からお前を寄越せってうるさいんだが、何かやったのか?」
ギルドに来た俺に、セリスさんが話しかけて来た
・「ん〜昨日の糸草採取の後で加工方法を教えて貰ったからかな?」
・セリス
「そうなのか?
その割には熱が凄かったぞ。
冒険者には勿体無いだとか、
職人こそアイツの生きる道だ、
とか言って迫ってくるんだわ。」
そんな事があったのか。
・「何だかごめんよセリス。」
・セリス
「冒険者、辞めるのか?」
少し寂しそうに尋ねてくるセリスさん
・「辞めませんよ、
採取しながら加工が出来たら楽だなって思って始めただけですから。」
・セリス
「そうか、良かった。
そうだ、近々アタシのパーティーが揃う予定だから、その時一緒に原初の果実取りに行ってくれないか?」
・「俺で良ければ大丈夫ですよ。」
・セリス
「おお、ありがてぇ。
ライオット、頼んだぜ忘れるなよ。」
セリスさんはそう言って嬉しそうに奥の部屋に戻って行った。
・「さてと今日の依頼はどうしようかな。」
・ギルド工房受付嬢
「見付けました、ライオットさん。
直ぐに工房に来て下さい。」
・「へっ?
うわぁぁぁぁぁ」
工房の受付嬢に手を掴まれ、
凄い力で引っ張って行かれた。
バタン
・ギルド工房受付嬢
「連れて来ました!」
・ギルド工房職員
「来たか、ライオット!
待ってたぞ、さぁこの書類にサインして職人の仲間入りするんだ!
さあ、さあ、」
職人達に囲まれる。
ちょっと怖いです。
オラオラ系に囲まれてオロオロしてますよ。
・セリス
「おいおい、
ライオットの悲鳴がしたから来てみれば、
無理強いは良くないぜ。」
セリスさんが来てくれた。
助けてセリスさん。
・ギルド工房職員
「たとえギルド長でもこれだけは譲れねぇ!
コイツは職人になるべきだ。
これ程の才能はまず見ねえ。
間違いなく天才だ!今から鍛えりゃ必ず天下一の職人になる筈なんだ」
どれだけ持ち上げてくれるんだ。
俺はまだ低レベルのペーペーですよ。
・セリス
「それ程か、、、
全くお前は直ぐに何かに巻き込まれるな。
たが、ダメだ。
ソイツは冒険者になりたいと言っている。
本人の気持ちを尊重してやるのも大事だろ?」
・ギルド工房職員
「気持ちに関してはわかってる、わかってるが、
アンタは何もわかっちゃいない。
アイツの才能を自覚させてやるのも大事なんじゃねぇーか?あれ程の才能を自覚していないなら教えてやるのもギルドの務めだろう?」
・セリス
「まあ、そうだわな。
だが、冒険者としての才能も計り知れないぜ。
アタシが保証する。
今はまだ雑魚だがな。
だが、伸び代は凄い。
アタシなど手も足も出なくなる程だと見ている」
・ギルド工房職員
「マジか、
ギルド長がそこまで言う逸材は初めてだ。」
工房内が凄い騒ついてるぞ。
しかしセリスさん。
俺を守るためとは言え言い過ぎですよ。
ハードル爆上がりじゃないですか!
そして、さりげなく雑魚と言わないで。
・サリーヌ
「なんの騒ぎ?
あらセリスちゃんじゃない、珍しいわね。」
・セリス
「ちゃんて言うな。
ギルド長と呼べ。」
サリーヌさんが工房に入って来た。
周りの職人達から説明を受けている。
・セリス
「おい、ライオット。
お前は一体何をしたんだ?
職人達がこんなに食い下がるのは初めてだぞ?
基本的に無関心の奴が多いのに。」
小声でセリスさんが話しかけて来た。
・「俺にも分からないよ。
どうなってんの?」
・セリス
「アタシが聞きたいわっ!」
盛大に大声で突っ込まれた。
その直後、職人達に説明を受けていたサリーヌさんが全員に聞こえるような声で話し始めた。
・サリーヌ
「なる程、そう言うわけね。
ライオットちゃん貴方はどうしたいの?」
サリーヌさんが問いかけて来る。
・「俺は冒険者でいたいです。
冒険しながら採取して加工して、自由気ままにゆっくり成長して行きたいと思っています。」
・サリーヌ
「どちらかに絞れば巨万の富も名声も手に入れる事が出来る、そうだとしたら?」
・「それでも、自由で居たいかな。
眠れる場所と美味しいご飯、大好きな仲間が居れば他に必要な物はないよ。」
工房内がざわざわし始める。
セリスさんは俺に笑顔を向ける。
可愛い。
サリーヌさんは優しく俺を見つめてくる。
怖い。
・サリーヌ
「分かったわ。
貴方の好きな様にするのが1番ね。」
・ギルド工房職員
「しかし、ドサリガンドよ。
これ程の才能、諦めるのか?」
・サリーヌ
「無理にやらせてもいい物は出来ないわ。
冒険も一緒、無理やらせても死ぬだけよ。
ならば両方ともやらせれば良いじゃない。
両方やっちゃいけないって誰が決めたの?
ライオットちゃんなら出来る。
アタシはそう思うわ。
アタシ達はライオットちゃんが必要とする時に支えれば良いじゃない、それじゃダメなの?
アタシ達で冒険者としても職人としても一流にすれば良いのよ。選んだのはライオットちゃん。後悔させてあげるから!」
いつも以上にクネクネとしながら俺を見詰める。
怖いよ、サリーヌさん。
でも、
・「ありがとう、サリーヌさん。
俺の我がままだって分かってはいます。
でもやっぱり自由にやりたいからさ。
あれこれやって困ったら聞いて、
そんな風に成長していくのが好きなんだ。
皆さんにもご迷惑をかけると思いますが、
何卒ご教授ご鞭撻の程、宜しくお願いします。」
工房内が盛り上がる。
セリスさんに腰を小突かれて、
サリーヌさんには肩を叩かれる。
肩が痛い。
・サリーヌ
「よく言ったわね。
いつでもいらっしゃい。
アタシ達も全力で教えるわ。
それよりも、
さっき、アタシの事なんて呼んだ?
アタシはサリーヌって名前だろうがよ!
違う名前で呼んだやつ、出てこいやぁ!」
あ、これヤバいやつだ。
その瞬間、セリスさんが俺の手を掴む。
セリスさんに手を引かれて工房を後にする。
・サリーヌ
「出てこいっつってんだろがぁぁぁぁ」
扉が閉まる瞬間サリーヌさんの怒号が聞こえる
扉の向こうで凄まじ破壊音がする。
想像する事すら恐ろしい。
・セリス
「ふぅ、危なかったな。
あれに巻き込まれると大変だからよ。」
やっぱりセリスさんも逃げるんだな。
サリーヌさん、恐るべし。
・セリス
「その、なんて言うか、
アタシも支えるからよ、仲間として。
困ったら言ってくれ。」
・「俺も、セリスを支えれる様になるよ。
困ってたら教えて欲しい。
仲間としてさ。」
セリスが嬉しそうに笑顔になる。
・サリス
「ギルド内でイチャイチャされると困るのだけど」
サリスさんが話しかけて来た。
イチャイチャなんてしてませんよ。
・セリス
「さ、サリス、いつからそこに。」
・サリス
「扉から出て来て私の前に来たのは貴方達。
周りが見えない程ライオットさんで頭が一杯なのかしら?ギルド長としてそれはどうなのかしら。」
ニヤニヤしながらセリスさんを責めるサリスさん
セリスさんがタジタジになるのは新鮮だな。
・サリス
「ねぇ、どうなのかしら?
ギルド長のセリスさぁん?」
・セリス
「うぅ、、、
お、覚えてろよ」
モブキャラの様なセリフを言いながら奥に走って逃げて行くセリスさん。
それを見てケラケラ笑うサリスさん。
サリスさん楽しそうだな。
・サリス
「あ〜楽しい。
セリスのあんな反応見るの初めてだわ。
嬉しいな、、」
・「では、俺はこれから依頼を見に行くので。」
さり気なく、その場を離れようとするが、
・サリス
「あ、ライオットさん。
実は貴方に用があるの。」
何だろう?
・サリス
「糸草の群生地まで行ってたわよね?
その奥に採石場が有るんだけど、
そこに岩小僧が大量発生したらしいの。
スカウトとして優秀だとセリスから聞いたわ、
だから貴方の能力で採石場の岩小僧を倒して来てくれないかしら?勿論、依頼料は払います。
どうかしら?」
ふむ、ギルドからの依頼って事か。
糸草でのレベル上げも終わったし丁度良いかも。
サリスさんの依頼だから無理な物じゃないだろう
・「やります、やらせて下さい。」
・サリス
「助かるわ。
採石場の奥に銅鉱が取れるポイントがあるの。
そこで銅鉱も採取してくれるとありがたいわ。
ギルドで買い取ります。
アイテム鞄が無いと効率が悪くてね。
在庫がちょっと心配なのよ。」
成る程、
アイテム鞄を持ってる俺にやらせれば確かに効率は上がりそうだ。サリスさん、中々の策士ですな。
・「了解しました、早速行ってみますね。」
・サリス
「あ、つるはし持っていくのよ?
手では掘れないからね。
つるはしは受付に話しかければ借りられるわ。」
・「ありがとうございます。
では、行ってきます。」
俺はつるはしを手に入れて新たな狩場に向かう
レベル上げがまた出来るかな。
岩小僧か、どんな敵だろう?
怖いけど楽しみだ。
岩小僧か、、、岩小僧ね。
本当に小僧だよな?
リトルボアの時みたいにデカいの来たら逃げよう
俺は糸草群生地を越えて採石場まで走る。
レベル1の頃に比べるとかなり早く走れる。
強くなってる実感があると嬉しいな。
そして採石場にたどり着いた。
・「さてさて、マップオープン
ふむ、結構な数が居るけど目には見えないな。
とりあえず近づいてみるか。」
マップの赤点まで来てみるが見当たらない。
・「あれ?
此処なんだけど居ないな。
どう言う事だ?」
徐にマップを見ながらキョロキョロ、
そして後ろを向く。
すると背中に強めの衝撃が、、、
・「うおっ、痛ってぇ
何だ?何が起こった?」
急いで振り返ると、
そこには岩に手足が生えた謎の生命体がいた。
て言うか目と鼻と口は何処だ?
・「コイツが岩小僧か?
成る程な、
そこらの岩に擬態して隠れてたってわけか。」
岩小僧の真ん中辺がパカッと割れる。
牙らしきものがありそこが口だと理解した。
見た目がすっごい怖い。
・「喰われたらめっちゃ痛そうだ。
さて、俺に出来ることは相変わらず斬撃か殴るかのどちらか。だが流石に岩を殴る気にはなれん。」
俺は剣を抜く。
岩小僧はゆらゆらしながら少しずつ近づいて来る
・「超怖い、、、
どんな攻撃があるかわからないし、
最初は余り近くには行かない方が賢明だな。
食われたく無いし、、、
石でも投げてやるか。」
俺は近場にある石を取り思いっきり投げつけた
・射撃スキルを取得
・「思わぬ副産物ゲット!
色々とやってみるもんだ。
ドンドン投げて行こう。」
手当たり次第に石を掴んで投げまくる。
岩小僧は石が当たっても平気な様だが、
少しずつ削れていってる気がしないでもない。
・「痛覚がないのか?
しかし岩小僧と言うだけあって硬いな。
一度斬ってみるか。」
俺は剣を構え、一気に詰めて斬り切る。
ガキン
・「うおっ、硬い!手が痛い。」
余りの硬さに手が痺れる。
そしてスキが生じる。
・岩小僧
「ギィィ」
岩小僧が体当たりしてきた。
ドガッ
直撃する。
・「めっちゃ痛えし、めっちゃ硬え。
リトルボアの体当たりより効かないが、
痛みはこっちの方が上だな。
めっちゃ痛え。」
体の芯に来るリトルボアの体当たりとは違い、
体の表面を攻撃してくる岩小僧。
・「こっちの方が流血する分、
見た目のダメージがキツい。
さて、困ったな。
気を付ければ体当たりは避けれるが、
コッチの攻撃が効かない、、、多分。
数多く石を投げればその内倒せるかな?」
とりあえず離れて投石を繰り返す。
石を投げながら考える。
・「おかしい、策士のサリスさんが勝ちの薄い戦いをさせるとは思えない。
何か意図があるはずだ。
何か伝えたい事があるから俺にお願いした。
何を伝えたいのか考えるんだ。」
距離を取りつつ石を投げる。
・「まてよ、この敵は近接だと強いが遠距離だと一方的に攻撃が出来るよな?」
・射撃レベルが一定値まで上がりました
補正レベルを解除します。
・「あ、はい、ありがとう。
じゃなくて、要は遠距離攻撃を覚えろって事か。
さらに物理攻撃に強い相手には魔法攻撃に弱い。
これが定石だな。
つまり、遠距離の魔法攻撃を覚えろってサリスさんは伝えたかったんだ。」
サリスさんの意図を理解した気がした。
早速考える。
・「俺が使えるのは風魔法だ。
イメージは切り裂く。
風の刃を飛ばして切り裂く。
コレだな。」
俺は岩小僧との距離を更に空ける。
・「糸草を加工する時のイメージで、
魔法変換を風の刃にして。
そして岩小僧に飛ばす場面をイメージする。」
プシュ
風の刃がフワフワと飛んで行く。
そして岩小僧に当たって消えた。
・「よわっ!でも出来たな。
もっとスピードが要る。
後は貫通力が必要だ。
硬い岩を貫いて行くイメージ。
スピードは圧縮して発射するイメージだ。
貫通力は回転させるんだ。
形状も刃より針の方が良いか?
いや、弾丸でいくか。」
パシュ
風の弾丸は岩小僧に小さな穴を開ける。
俺はしっかり岩小僧との距離を取り思案する。
・「良い感じだ。
だがまだ足りない。
スピード、貫通力、回転。
全ての工程を一気に仕上げて放出する。
爆発的に一瞬で作って放つ、これだ!
一瞬で風の弾丸を作り上げて、
次の瞬間放つイメージだ。行くぞ!」
ライオットの右手に風と魔法が集まる。
次の瞬間。
ドンッ
・岩小僧を倒しました。
レベルが上がりました。
穴の開いた岩小僧がゆっくり倒れて行く。
・「出来た!上手くいったぞ。
初の攻撃魔法!
気持ちいい!
レベルも上がったし最高だぜ。
ステータス確認!」
レベル4 所持金 1244c
筋力 39 +10(特
知力 41 +10(特 +20(加
敏捷性 38
・スキル
自動マーカー、マップ、精神自動回復、順応力
・魔法
癒しの波動
風魔法 レベル3
・技能
剣術レベル8 補正レベル1 筋力 2 敏捷生 2
杖術レベル1
盾術レベル1
体術レベル5 補正レベル1 筋力 2 俊敏性 3
射撃レベル9 補正レベル1 筋力 2 俊敏性 2
・特殊技能 補正値パッシブ(特
採取レベル12 補正レベル2 筋力 10 知力 10
・加工技能 補正値パッシブ(加
裁縫レベル10 補正レベル2 知力 20
・「よしよし、良いぞ、上がってるぞ
この調子でドンドン岩小僧を倒して行こう。
と、その前に、岩小僧の素材は何だろう?」
倒れた岩小僧をツンツンしてみる。
普通の岩だ、硬い。
岩小僧を叩いてみる。
普通の岩だな、手が痛い。
・「こりゃ放置かな?
口の中の牙らしきものでも取ってみるか?」
ひっくり返して牙を取ってみる。
うん、取れない。
尚も引き抜こうとしてみる。
1番大きな牙だけがスポッと取れた。
お?口の奥に光るものがあるぞ。
見たことある。
これ、魔法石だ。
リトルボアのと色が違うけど多分そうだろう。
とりあえず鞄に入れておくか。
・「さて、取れそうなものはこれくらいかな。
よし、気を取り直して殲滅開始だ。」
ライオットはマップを見ながら岩小僧を発見して風魔法を放つ。
・岩小僧を倒しました
・「一撃で倒せるのは気持ちいな。
折角だし、必殺技っぽくしたいよなぁ、、
セリスさんも氷塊って唱えてたしな。」
ライオットは2体目の岩小僧の素材を取りながら考える。
・「よし、決めた。」
早速、次の岩小僧を探す。
・「見付けたぜ!
魔力を溜めて溜めて、もっと溜めてもっと!
行くぜ、必殺、、、
ウィンドバレット!!」
キューイン、、、、シュン
、、、ドゴーン
・岩小僧を倒しました
・岩小僧を倒しました
レベルが上がりました
・岩小僧を倒しました
ボーナスが入ります。
・「はっ?とんでもない威力になったぞ。
岩小僧が消し飛んだ。
かなり魔力を溜めたからかな?
とにかく撃つ方向を考えないと危険だぞ。
そして素材が取れない。」
凄まじい威力の風魔法が誕生した瞬間だった。
この世界には物体を高速回転させると貫通力が上がると言う思考は存在していない。
更にセリスがやっていた様に魔法に名前を付ける事でイメージし易くなり、威力を大幅に上げる事が出来る。
そして最大の要因として、魔力の節約を考えなくて済むライオットだからこそ魔力を溜めて撃つと言う思考が生まれた
数々の偶然が重なる事により、
ウィンドバレットは完成した。
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