第21話 調査開始

俺達は今、マデオ火山に来ている。

毎年行われていると言うファイヤーリザードの調査依頼の件で来ているのだが、、、


・ハナ

「ねぇ、裕樹。

魔物がやたらと多くない?」


・「始めて来た場所だから何とも言えないが、確かに多いな。」


山の3合目辺りでキャンプを張り、現在5合目辺りに来ているはずだ。

ここまでの道のりで相当数の魔物を撃破している。

ここがそういう場所なのか?

それとも異常事態なのか?

今の俺達に知る由もない、、、


・「とりあえず進めるだけ進んでみよう。

これも調査の一環だな。」


既に50匹以上の魔物を倒している。

素材は12匹程度まで剥ぎ取っていたが途中から魔石のみに絞っていた。

なんせ討伐数が多いから時間が掛かりすぎると判断したのだ。しかし、6合目辺りまで来るとパタリと居なくなる魔物たち。

、、、どういうことだ?


・「少し、ここで休もう。」


そう提案する俺に頷くハナ。

ここまで来るのに、ハナにはあまり戦闘に参加しないで貰っている。

回復薬のハナの魔力は貴重なのだ。

魔物が多く、囲まれた時のみ『魔弾』で数体倒す事でここまで来れた。


・ハナ

「裕樹、体力はどう?」


・「問題ない、少し休んだらもう少し進もう。

この魔物の異常な偏り方、、、、

ファイヤーリザードが関係しているのかもな。」


恐らくだが、今まで戦った魔物はファイヤーリザードの捕食対象なのではないか?

捕食者の生息区域が広がれば捕食対象は逃げてくるのは必然。

つまり、今まで生息していた場所から下に逃げてきた魔物達が5合目付近に集まっていた、そう言う事なんじゃないかな?


・「この先、、、ファイヤーリザードが居る可能性が高い。慎重に進もう。」


頷くハナ。

お互いに気を引き締めていこう。

そして二人は進みだした。

魔物の姿が無くなってから数十分が経っただろうか?山の7合目辺りまで来たとき、それらしき魔物を見付けた。

一匹でこちらにゆっくりと歩いてきている。

真っ赤な鱗に覆われ、短い手と強靭な足腰。

鋭い牙がここからでも見てとれる。


・「トカゲって言うか、、、ティラノサウルスじゃねぇか!サイズは俺の2~3倍程度か?

見た目が怖ぇぇ。」


赤い鱗たが、見た目がティラノサウルスそっくりな魔物。映画や資料でしか見た事ない生物だが、恐怖心は芽生えてくる。


・ハナ

「珍しいね、裕樹が怖いって言うの。」


・「俺だって怖いと感じる事は多々あるよ。

前の魔族の時なんて恐ろしくて生きてる心地はしなかったし。

今回はファイヤーリザードの姿が俺の知っている生物にそっくりなんだ。

はるか昔に生息していた陸の肉食獣にね。

まぁ、詳しくは知らないが、子供のころに憧れた記憶はある。」


・ハナ

「へぇ、裕樹の世界にも魔物が居たんだ。」


・「ん~、まぁそういう感じかな?」


少し訂正しようかと思ったが、ふと思った。

魔力を帯び、人間に害を及ぼす存在を魔物と呼んでいるんだったな。

俺の世界でも野生動物達は魔物と同じ様な存在なのではないか?

魔力は感知出来ないから魔物とは呼ばない。

しかし、人間よりも強く、時には人を捕食する事もある。

昆虫たちも菌を媒介しながら人間たちに害をもたらす時もある。

呼び方が違うだけで似たような存在なのかもしれないな、そんな風に考えていた、、、、

どちらにせよ、人間が安全に生きる為には狩るしかない。

意思の疎通が出来ないのであればそうなる。

向こうの世界の様に、生きる事に余裕があるのならば保護とか管理が出来るのだろうが、そんな余裕はこの世界にはない。

俺自身も今を生きる事で精一杯なのだ。

悪いが、討伐させてもらうぞ。


・「周囲に警戒しつつ、魔力を温存してくれ。

まずは俺が戦闘して敵の能力を探る。

危険だと感じたら『魔弾』で援護射撃を頼む。

ハナの『魔弾』を確認したら即退却だ。

敵の素早さがこちらより上だったら『フラッシュ』を使って逃げる。」


俺はハナに待機の指示を出す。

戦闘が劣勢になったと感じたら即離脱、対策を練ってから再戦。

まずは安全を確保するのが最優先だ。

魔物の特徴も解らないのだから、慎重に行こう。

俺はまだ少し遠くに居る魔物に向かって隠れながら回り込む。


・「気付かれてはいないか、、、」


20メートル辺りまで接近した時、ファイヤーリザードは顔を上にあげた。

違うな、鼻上げた?

その瞬間、大きな咆哮と共に俺の方を見た。


・「匂い、、、そうか、こちらは風上。

臭覚で敵の位置を感知するのか。

確かに野生動物でも風上に立ってはいけないと聞いた事がある。」


俺は妙に納得した。

場所はバレた、今ここで背を向けて逃げたら追いかけてくるだろう。

まぁ、逃げるつもりはないがな。

俺はファイヤーリザードの前に立つ。

奴の息使いが一気に荒くなる。


・「さて、どこまでやれるか試してみるか。」


俺は剣を抜かずに腰を落として深く構える。

魔物は再び大きな咆哮を放ち突進してくる。


俺はまだ動かない。


ドンドン近づいてくる魔物、、、


俺はまだ動かない。


既に魔物は目の前だ、、、

魔物は大きく口を開けて俺を捕食しようとする。


・「ここだ!」


俺は静から動に切り替える。

全身に纏わせた魔力を一気に爆発させ加速する。

魔物の攻撃を最小限の動きでかわし、横をすり抜ける、、、刹那、剣を滑る様に抜く。

剣の一閃、、、、居合だ。


魔物が俺をすり抜け、数歩進んだところで上下二つに斬れて倒れる。

剣を一度振り、鞘に戻して振り返る。

そして大きな深呼吸をして、勝利を確信した。


・ハナ

「裕樹!大丈夫?

怪我はない?」


慌てて出てきたハナ。

右手には魔力を大きく溜めた痕跡が感じられた。

寸前まで動かなかったからかな?

『魔弾』の準備をしていたのだろう。


・「心配させたみたいだな。

だが、大丈夫だ。」


俺はハナを安心させる言葉を伝える。

ハナも俺の無事を確認してから笑顔になる。


・「さて、こいつの捌き方が解らないがハナは知ってるか?」


二つに斬れたファイヤーリザードを前にハナに質問する。しかしハナは首を横に振る。


・「何処の部位が貴重なのか聞いてなかったな。

とりあえず今日はここまでにしてキャンプに戻ろう。欲張っても良い事ないしな。」


・ハナ

「そうね、そうしましょう。

魔力をあまり消費してないから、帰りの魔物は私が倒すわ。裕樹はサポートお願い。」


俺はハナの提案を快く受けた。

同じPTだ、助け合っていかないとな。

帰りは俺がサポートに徹しよう。

ファイヤーリザードをそのまま担いで下山する。

鞄に詰め込めるサイズまで切り刻むと捌き方が分からなくなるし。

とは言え、初日でそれなりに調査報告が出来そうだから良しとするか。

帰りの道のりは不思議と魔物に遭遇しなかった。

登る時はあれだけいたのに、、、

結局魔物との戦闘は無く、すんなりとキャンプまで戻る事が出来た。お陰で日は既に傾き始めていたが、予定より早く帰還できた。


~キャンプ地にて~


・ハナ

「帰り道は魔物が居なかったね、、、。」


そう言って少し寂しそうにするハナ。

『魔弾』を覚えてからは戦闘も進んでするようになった。自分が強くなったと言う自覚がそうさせるんだろうな。


・「ハナの魔力が充実してると俺が動きやすいからな、いつも一緒に居てくれて感謝してるよ。」


回復役であるハナの魔力は大事だ、、、

無駄な戦闘は避けるのが好ましいだろう。

でも、もう少しは戦闘に参加させてあげようか。

強くなったと言う実感を得る事は良い事だと思うから。そんな話をしながらコースの元に歩いていく。


・コース

「おかえりな、、、、

そ、、それはファイヤーリザードですか?」


俺の担いでいる魔物を見てそう呟いたコース。

違ったのか?

とりあえず目の前に魔物をおろす。


・コース

「間違いない、ファイヤーリザードだ。

しかし、、、これは、、、」


なにやら考え込んでいるコース。

俺達が帰って来た事に気付いたジズがこちらにやって来た。


・ジズ

「おかえりなさい、裕樹様、ハナ様。

既にお休みの準備は整っています。

おやすみになられ、、、、、って嘘でしょ?」


ジズも魔物を見るやいなや驚く。

何故驚くのだろう?

何か間違えたか?


・「何か問題でもあったか?

捌き方が解らなかったから持ってきたが、持って帰ってきたら不味かった?」


・コース

「いえ、捌き方は教えますが、問題は大きさです。

こんなに大きな個体は初めて見ました。」


そうなのか、、、

他に居なかったから比べる事も出来ないしな。


・コース

「ジズ、至急ダン隊長を呼んできてくれ。」


一気に慌ただしくなったキャンプ地。

ジズは空中に向けて魔法を放つ。

恐らく呼び戻す時の合図なんだろう。

何か悪いことした気がする。

俺とハナは若干ソワソワしていた。

すると、暫くしてダンとリズが戻って来た。


・ダン

「何があった?」


少し慌てながら聞くダン。

出迎えたコースが説明をして魔物を調べだすダン。

俺とハナ、ずっとここで立ってるのですが、、、

やっぱ不味い事したか?


・ダン

「不味いな、、、」


やっぱりか。


・「なんか、すまんな。」


何か知らんがとりあえず謝っておこう。


・ダン

「へ?ど、どうしました?」


あれ?


・「いや、、、何か不味い事やっちまったかと思ってな。」


・ダン

「あ、、、すみません。

ずっと立っていらしたんですね。

いえ、裕樹様が持ってきたファイヤーリザードですが、、、大きすぎるのです。」


・「大きすぎる?」


・ダン

「はい。

普通は我々よりも少しだけ大きいサイズです。

しかし、この個体は我々の2倍以上、、、

よく2人で倒せましたね。

ダメージ痕が魔物の身体に見当たらないのが不思議ですが。どうやって倒したのですか?」


・「えっと、スパっと、、、、」


・ダン

「スパっと、、、、?」


・「一刀両断でだな。」


俺の言葉で場が凍り付いた。


・リズ

「すごい、、、」


・ダン

「想像以上の強さです。

裕樹様が居てくれて助かりました、、、

我々だけだったら危なかった。」


そんなやり取りの後、暫く話して捌き方を教えて貰い食事となった。

食事の時に本日の報告を済ませる。

報告して分かった事がある。

今回の調査で異常だと思える事が多すぎる事だ。

まずは生息地。

通常、ファイヤーリザードは山頂に居る。

10体ほどの群れを形成して集団で生活する。

群れはそれぞれが縄張りを持ち、踏み入れると攻撃性が増し一気に襲い掛かってくると言う。

今回の様に単体で居る事は稀らしい。

道中の魔物の群れも異常だそうだ。

どうやら推測通り、他の魔物が上から降りてきて5合目辺りに溜まっているのだろうと言う見解となった。明日からはもう少し奥まで調べてみよう。

それから、倒した魔物の素材と魔石を渡した。

倒した魔物の量にかなり引かれてしまった。

襲って来るんだから仕方ないじゃないか!


明日はファイヤーリザードの狩場までスムーズに行けたら良いな、、、。

実は秘策を思いついたのだ!

少し作戦を練りつつ、今日は休むことにした。


〜裕輝ステータス〜


裕樹 レベル34

筋力 745 +100

知力 701 - 50

敏捷性 732 +100


勇者特性

「全能力大幅アップ」


魔剣補正

筋力+100 知力-50 敏捷性+100


魔法

・光魔法


特技

・剣技一閃 ・魔闘衣


技術

剣術レベル 49

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