第10話 奴隷救出作戦 助け出すと言うこと

次の日、、、

俺は朝からバラッド卿屋敷の見える、少し離れた場所に来ていた。

まずは様子見だ。


・さてと、とりあえず朝飯を食うか、、、


一瞬、、、本当に一瞬だけ人の気配を感じる。

この場所でタイミング、、、

屋敷からつけて来たことになる。


・おい、ライルの指示か?

出て来いよ。


俺はあくまでも冷静を装い小声で言ってみる。

恐らく隠密みたいな者だろう。


・???

「よく、、、わかりましたね。」


・まあな、たまたまだ。

んで、アンタは味方か?


・???

「味方と思ってくれて大丈夫です。」


・そうか、、、今の俺は色々と余裕が無い。

敵対するなら即潰す。


・???

「承知しました。」


背後から気配が消えた、、、

凄い奴も居たもんだ。

どんな奴だったのか、、、見とけば良かったか?

俺もまだまだだな。

まあ、どうでも良い、、、

今は屋敷に集中だ。


・まだ獣人達は運ばれていないな、、、

護衛の数を把握しておかないとな。

奇襲で制圧しなければ、、、、


暫くここで様子を見ていると、

後ろから気配がする。


・???

「もうじき、獣人の方達が運ばれて来ます。」


・そうか、報告感謝する。


そして、報告の後再び気配が消える。

獣人の方達と言ったな、、、

俺達側なのは確かか。

とりあえずは自身の確認からか、、、


ステータス

レベル19 所持金無し

筋力 455 +100

知力 392 −50

俊敏性 468 +100

魔法

光魔法

特性

勇者 全ての能力大幅アップ

魔剣補正 筋力+100 知力−50 俊敏性 +100

技能

剣術レベル 19 補正値レベル3 筋力6 敏捷性 6


走り続けたからか、俊敏性が筋力を抜いたな。

スピードタイプの俺はそちらの方が良い。

ライルやオーランドには程遠かったが、この能力でどこまで出来るか、、、、

、、、、、来た。


・???

「仕掛けますか?」


いつの間にか後ろに現れる気配。


・いや、地下牢の子達も助けたい。

手を借りても良いか?


・???

「はい、」


・名は?


・ハヅキ

「ハヅキとお呼び下さい。」


・所属は?

聞いても良いか?

言えないのならば言わなくて良い。


・ハヅキ

「申し訳ありません。」


・まあ、良い。

先ずは地下牢に潜入する。

地下牢の子達を保護し入り口付近で待機だ。

そこから、俺が派手に今日運ばれて来た獣人達を逃がす。

その後は全員が逃げ切るまで俺が派手に立ち回る

ライル達レジスタンスが中枢を抑えれば街の外に逃げる必要はなくなるだろう。

どう思う?


・ハヅキ

「奴隷達が逃げる先は?」


・レジスタンスの屋敷にしようと思う。


・ハヅキ

「賛成しかねます。」


・何故だ?

、、、、いや、わかった。

ならば、地下牢の子達を保護したらバラッドの屋敷を制圧する。

そこに籠城することにする。

外の奴隷達は解放後、屋敷に入って貰い、中枢を落とすまで俺が守り切る。


・ハヅキ

「貴方の負担が大き過ぎるのでは?」


・他に何か作戦あるか?


・ハヅキ

「、、、、、、ありません。」


・籠城した時、あの子達を任せたい。

ハヅキ、頼めるか?


・ハヅキ

「私を信じるのですか?

敵かもしれませんよ?」


・いま、俺はちょっと人間不信だ。

だが、何故かな?

君は信じて良いと俺の心が言っている。

何より、ここでこの場を離れたら奴隷の子達が悲惨な目に遭う。

それだけは許せない。


・ハヅキ

「報酬は、、、貴方の命を頂戴します。」


少しの時間、沈黙が流れる、、、


・交渉が下手だな。

それに、俺を試しているのが見え見えだ。

もっと順序良く話していかなきゃ。


・ハヅキ

「申し訳ありません。」


・君は、人族ではないだろう?

感情が偏り過ぎている。

まあ、どちらでも良い、、、

俺を信じろとは言わない。

あの子達を守ってやって欲しい。


・ハヅキ

「、、、、、、」


・無言は肯定と思って良いか?


・ハヅキ

「獣人国、ハイランド共和国、隠密

ハヅキ・バーラ。

裕輝様、、、お力をお貸し下さい。」


俺は振り返る。

初めてハヅキの顔を見た。

、、、美しい顔に獣の耳

間違いない、獣人族だ。


・風間裕輝だ。

俺の方こそ宜しく頼む。

力を貸してくれ。


2人はお互いに頷く、、、

そして、行動に移す。


・おはよう門兵君!

バラッド様かヤード殿はいらっしゃるかな?


・門兵

「おはようございます。

ナイル様ですね?

話は伺っております。

バラッド様より、ナイル様は通せとの通知が来ておりますのでお通し出来ます。

敷地を歩く注意事項は覚えていますか?」  


自分で言うのもあれだが、

かなり気に入られてるな、、

今夜の事、相当楽しみにしてるんだろうな。

良いだろう、死ぬ程楽しませてやるよ。

物理的にな!


・門兵

「そちらの方は?」


・うむ、昨夜調教した小娘だ。

約束通り目の前で楽しんでやろうと思ってな。 


俺が担いでいるハヅキを、昨日連れて行ったリナとして誤魔化してみる。


・門兵

「そうでしたか、失礼しました。

では、お通り下さい。」


俺とハヅキは門を突破する。

よし、難関突破だ。


・ハヅキ

「調教って、、、、どういう事?」


・何もしてないよ。

リナは薬でやばい状態だったから先に助けた。

昨夜、魔法で治したから今は元気なはずだ。


・ハヅキ

「むう、、、嘘だったら殺す。」


獣人国の人達怖いよ。

すぐに殺そうとすし、、、


・さて、もうすぐで屋敷だ。

君は病気の役だからな、動くなよ?


・ハヅキ

「わかってる。」


2人は屋敷の入り口まで来る。

向こうでは今日、新しく仕入れた奴隷達が次々と牢屋に入れられて行く。


・くそ、、、


・ハヅキ

「裕輝様、殺気を抑えて下さい。」


・すまん、

ありがとう


俺は深呼吸をする。

必ず、必ず助けるから

もう少しだけ待っててくれ。


屋敷に着くと中からバラッドが出て来る。


・おはようございます

バラッド卿、今日は良い天気になりましたな。


・バラッド卿

「おぉ、ナイル殿では無いか!

昨夜は楽しめたかな?」


・はい、お陰様で!

ただ、今日の事が楽しみ過ぎてつい朝から来てしまいました。

もし宜しければ、地下牢に行って先に楽しみたいのですが、、、。


・バラッド卿

「ひゃはぁー!

ヤードの言った通りの強欲さ!

もちろん良いぞ!

あぁ、お主は最高だ!

他の奴隷も気に入った奴がいれば金次第で買わせてやるぞ?

勿論、お値打ちにしてやるからな」


・ありがとうございます!

またお声を掛けさせて頂きます。

ヤード殿にも伝えてください。

貴方のお陰で素晴らしい人生を送れそうだと。


・バラッド卿

「ひっひっひっ、

わかった伝えよう。

ヤードは今、奴隷小屋の指揮をしているからな。

後でこちらに来るように言っておこう。

地下牢の場所はわかるな?

好きに楽しんできてくれ。」


バラッド卿は屋敷の奥に去って行く。


・ハヅキ

「貴方、ホントに何もしてないの?

相当信頼されてるみたいだけど?」


・あぁ、俺でも不思議だ。

あと、誓って何もしてないからな。


・ハヅキ

「ホントに?

むぅ、、、、、」


うわぁ、これ信じてないな。

仕方ないか、証拠とか無いし

会ったばかりで信じろってのが無理な話か。


・この先が地下牢だ。


俺達は地下牢に降りて行く。

そして地下牢に着く直前、、


・まずはハヅキが入れ、

俺が入ると騒がれる。

1番奥に目の死んでいない子が居る。

その子に俺は敵じゃ無いと伝えてくれ。

今、騒がれると作戦がダメになりかねん


・ハヅキ

「わかった。

では、少ししたら入って来て。」


ハヅキが牢に入って行く。

まずは安心させてから、屋敷の制圧。

その後はド派手に行くぜ。

しかし、ハヅキの話し方が凄い変化した。

ドンドン怪しまれていってる気がする。


・ハヅキ

「裕輝様、もう大丈夫です。」


あ、戻ってる。

仕事の出来る人は違うな、、、

俺は牢に入る。

みんなが俺と目を合わせてくれる様だ。

ハヅキ、うまく話してくれたか。


・みんな聞いてくれ、

解放するにはまだ時間が掛かる。

外にも奴隷の獣人がいるからだ。

助け出す為に協力して欲しい。


・???

「裕輝だったな、、、

リナは無事だろうな?」


・あぁ、無事だ。

病気も治しておいた。


・???

「本当か?嘘だったら殺すぞ。」


やっぱり、獣人怖いです。


・名は?


・???

「テメエなんかに言うかよ!」


・ハヅキ

「彼女はハープ。」


・ハープ

「何でそんな奴に言う?

人間なんかに何も言うな!」


・ハヅキ

「彼は信頼できる。」


・ハープ

「出来ん。

人間は誰も信じない。

全員、、、、殺してやる」


凄まじい殺気が俺を襲う。


・待て、後でいくらでも相手してやる

だが今は不味い。

もう少しだけ俺に時間をくれ。


・ハープ

「貴様、今更何を言いやがる!

今すぐに殺してやる、、、人間!」


俺に飛び掛かろうとするハープをハヅキが押さえ込む。


・ハヅキ

「落ち着きなさい!

今、貴方が暴れてこの人間を殺したとしてどうなりますか?

折角の逃げるチャンスを逃してどうするの?

しかるべき時が来るまで待ちなさい。」


・ハープ

「うぐぐ、、、

クソが!」


ハープがなんとか自分を抑え込む。


・すまない、、、

今だけは俺では無く、ハヅキを信じてくれ。

必ず、必ず逃して見せる。


・ハープ

「、、、、失敗した時は、お前を殺す。」


・あぁ、約束しよう。

失敗したらお前に殺されよう。


・ハープ

「、、、、、ハープだ。

ハープと呼べ裕輝。」


・ありがとう、、、ハープ。


・ハヅキ

「では、皆さん集まって下さい。

今から作戦を伝えます。

現在、レジスタンスと呼ばれる組織が我が王国の命で動いています。

狙いはこの町の中枢。

私達はその混乱に乗じてこの屋敷に潜伏します。

仲間達も同じく潜伏して戦いの終結を待ちます。

他の仲間達は既に運び込まれてしまい一刻の猶予もありません。

ですので、私達はここに籠城し時を稼ぎます。」


・ハープ

「外の仲間は?

今日運ばれたって言う仲間たちは誰がここまで案内する?

この屋敷もどうやって抑えるんだ?」


・俺が助けに行く。

そして、俺が牢を破壊したらハヅキにここまで案内させて待機だ。

地下牢に続く道は一本道だ。

入り口にハヅキを待機させて侵入を止める。

俺は屋敷の外で揺動して敵を引き受ける。

レジスタンスの勝利が確定するまで戦い続ければ俺たちの勝ち、、、自由を手に出来る。


・ハープ

「お前に命を預けろと言うのか?

籠城などしないで混乱に乗じて逃げれば良い。」


・怪我人や病人が犠牲になる確率が高い。

全員を助けるには籠城しか無い。


・ハープ

「人間、、、甘いぞ。

全員を助けようとして全員死ぬより、犠牲を払ってでも数人が助かる方が良い。」


・わかってる、、、

俺はアマちゃんだ、

だがら誰にも死んで欲しく無いんだよ。

リナと約束した。

全員助けると、、、


沈黙が流れる、、、

時間にして数秒だろう

だが、ひたすらに長く感じられた。


・ハープ

「、、、、私との約束、忘れるなよ。

失敗したら、私がおまえを殺す。

1人でも死んだらお前を殺す。

死ぬ気で守って見せろ。」


・そのつもりだ。


・ハープ

「ふん、、、、なら良い。

お前の策に乗ってやろう。

みんな、ここで待機だ。

ハヅキ頼んだぞ?」


・ハヅキ

「わかりました。

では、裕輝様、、、行きましょう。」


俺とハヅキは地下牢の入り口まで移動する。

すると、


・ハープ

「んで、、、ここからどうやって屋敷の制圧をするんだ?」


何故かハープも付いて来てた、、


・ハープ

「文句は言わせねぇ。

私の仲間を助けるんだ、協力させろ。

それに、おかしな動きをしたら即逃げる為にお前の行動を監視する。

問題あるか?」


・いや、協力に感謝する。

では、ハープはここを守ってくれ。

ハヅキは先程渡した見取り図で屋敷の制圧後、ハープと合流してここを死守。

良いか?


・ハヅキ

「わかりました。」


・ハープ

「ここで待て、、って事か、、

まあ良いだろう。」


・あと、ハープ。

これを、、お前の得意な武器は知らないから、とりあえずスタンダードな剣を持ってきた。


俺は魔剣では無く、レジスタンスの屋敷からチョロまかしたショートソードをハープに渡す。


・ハープ

「良いのか?

これでお前を殺すかもしれないぞ?」


・好きにすれば良い

もう時間がない。

揺動と制圧、同時にやる。

ハヅキ問題あるか?


・ハヅキ

「大丈夫です。

一気に片付ける。」


よし、これで後はやるだけだ。

うまく行くかなんてわからない。

後は、、、、全力で行くだけだ


・よし、

行くぞ!


俺は勢いよく屋敷の外に出る。

屋敷から意識を外させる為、牢屋小屋まで走る。

警備の魔物が追いかけて来るが関係ない。

このまま一気に進む。


・1、2、3、、、、、

奴隷の警備が数人居ない、、

中にいるのか?

急がねば、、、

ひょっとしたら先走るアホが居るかも知れん。

もう迷っている暇はない!

正面から行くぜ。


小屋の扉を盛大に破壊する。

そして叫ぶ。


・オラァ!

死にたくなけりゃ金目の物全て置いて行け!

強盗だコラァ!


奴隷を救出に来たなんて言ったら人質にされかねんからな、あくまでも俺は強盗で行こう。


・護衛

「正面から来る強盗がいるかぁ!」


・うっせぇ!

金目の物寄越せやコラァ!


そのまま斬り伏せる。


、、、、、人を、人を斬り殺した。


今は、考えるな。

助けるんだ!


・面倒くせぇ!

皆殺しだコラァ!


俺は敵に向かい走り出す。

もう戻れない、やるしかない。

自分で決めた事だ、、、

俺は、助ける為に、

自分の自己満足の為に、

、、、、、殺す!


自分ではわからないだろう。

気付いていないだろう。

裕輝の目から涙が流れ落ちていた、、、

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