第17話
木曜日の放課後。
俺は月曜日から今日まで欠かさず、牧さんのお見舞いに行っている。
今は牧さんの部屋にいる。俺と牧さん以外にもう一人いる。その人はおれが来る前にすでにいた。
俺が部屋に入ったときは牧さんとその人が抱き合っていた。
部屋に入ってきた俺に気づき、
「春香ぁー。私は二年の四季条四絵。はーちゃんの親友。君がはーちゃんの彼氏かい」
と四季条さんが言う。
「はっはい、牧さんと付き合ってる瀬尾です」
俺は四季条さんのドスのきいた声にビビりながら答える。
「しーちゃん、瀬尾君をびびらせないで。ごめんね、瀬尾君。今日も来てくれてありがとう。瀬尾君」
「ああ、うん」
牧さんが笑顔で言う。少しずつ笑顔が戻ってきた。よかった。
「ごめんごめん。はーちゃんを呼び捨てしたからつい」
手を合わせて謝る四季条さん。
「こっちもすみません」
頭を下げる俺。
少しずつ前の牧さんに戻っているが傷は残り続ける。心に刻まれた傷は身体の傷と違い治らない。
俺は牧さんのケアをこの先していく決意を決めていた。
牧さんの話を聞き、牧さんを抱きしめる。
「瀬尾君と共にいれて嬉しい。しーちゃんもだよ」
「ありがとう、春香」
「はーちゃん、ありがとう」
「瀬尾君、しーちゃん。ありがとう。気をつけてね」
「また、明日ね。はーちゃん」
「明日も来るよ。春香」
俺と四季条は笑顔を浮かべ、牧さんの家を出た。
「はーちゃんは一年の頃にいじめられてた。陰口はいつも、徐々にエスカレートしていき突き飛ばされたり。はーちゃんは可愛くて周りの女子から妬まれてた感じだったの。私ははーちゃんを助けて友達になった」
四季条さんは牧さんのことを話し始めた。
胸くそ悪い話だった。
反応が出来なかった。
「その後もいじめはあったけど、少しずつ収まってたんだ。けどまだ陰口は続いている。今も」
ため息を吐く彼女。
「はーちゃんを守ってあげてね。よろしく、はーちゃんの彼氏」
彼女と別れる際に頼まれた。
「守りますよ、四季条さん。春香をずっと。大切な彼女ですから」
俺は四季条さんに力強く言いきる。
「この世から、はーちゃんがいなくならないように」
四季条さんの最後の言葉に胸がざわつく。
前から強い風が吹いてきた。
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