第16話

翌日の月曜日。

牧さんは学校を休んだ。

放課後になると教室を飛びだし、牧さんの家を目指す。

牧さんの家にお邪魔した。

インターフォンを押すと牧さんのお母さんが出た。

扉が開いて、挨拶を交わす。

お母さんはスリッパを用意してくれた。

俺は牧さんの部屋の前で呼吸をととのえる。

俺は扉をノックする。

「牧さん、入ってもいいかな」

「いいよ。瀬尾君...」

彼女のかぼそい声が聞こえた。

扉を開けて入る。

扉を閉めて、牧さんのもとに駆け寄る。

ベッドに寝ていた。

彼女は虚ろな目を俺に向ける。

「心配だったんだ、春香のことが」

「私のこ、とを......しんぱ、い...てくれて、あり......とぅ」

彼女は途切れ途切れ言葉を伝える。

彼女は脆く儚い人だった。

俺は彼女の手に触れながら、彼女に想いを伝える。

「昨日は春香を守れなくてごめん。辛い想いをしたんだな。わかってなかった、これから君を一人にしない。ずっと君の味方だよ。無理をしなくていいんだよ。いつでも君の想い、吐き出したいことを受けとめるよ、俺は」

俺の頬になにかが伝う。涙だった。

涙が溢れてくる。

「俺は春香を誰よりも愛してる。春香の味方だよ」

俺は一日も早く、春香の素敵な笑顔がみたい。春香の笑顔を取り戻したい。春香が涙を流しているのをみると胸がぎゅーっと締め付けられる。春香の悲しんでいる姿をみると胸が張り裂けそうだ。

俺は彼女の手の感触を刻む。

「私も...瀬尾君が......大好き、だよ。あい...してる」

彼女の目からも涙が溢れていた。彼女が想いを伝えてくれた。

俺は春香の想いを受けとる。

「ありがとう、春香。明日も来るから、春香のそばにいるから」

俺は牧さんの部屋を後にした。

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