第3話『ポツリと立つ男』

(最近、世界は住みづらくなったなー)

俺は雨降る道路で傘もなくポツンと立っていた。

街ゆく人々は俺に目もくれない。

「あの人ちょっと不気味ー」

「やめなよ」

と俺のことを馬鹿にしてくる奴もたまにいる。

ふと、俺の前に老人が現れた。

「お前はもう……ここから消えてもらおうかね」

お爺さんが俺に話しかけてきた。

シトシトと降る雨はだんだん俺の体を溶かしているようだった。

雨が頬をつたい涙のようになる。

「最初は可愛かったんだがのー」

(やめてくれよ。そんなことを言うのは…。なぁ、親父)

俺はこの老人を知っているのだ。この人は俺の親父。

高度成長期の古い考えを纏っている親父。

雨はさらに俺の体を溶かす。

「じゃあな」

親父は俺から離れていく。

(待ってくれ。俺は)

不意に親父がばたりと倒れた。

何者かに殴られたようだ。

周囲には誰もいない。

降りしきる雨はまだ止まない。


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