◇第39話◇マーマレードホットケーキ
三連休はどこに行くわけでもなく。
それは、そんなに珍しいことではないんだけど。
ただこの処、三つ巴で歯車が軋んでいるような感じで。
子供らも。
わたしも。
実家の両親も。
それぞれ想うキモチはそこにあるのに、変な具合にボタンの掛け違い。くい違い。
特に下の二人の子供らは反抗期の真っ最中。
反抗期と甘えん坊が同居してて、ちょっとムズカシイ。
上の子も思春期。それなりに色んなことを考えてる。
家庭環境のせいか、考え方も大人っぽいし、しっかりしてるが、それでもまだまだ子供は子供。
これは何も解ってないという意味じゃなくて、その年齢になって初めて見えてくるものもあると思うので。
16歳なのに仙人みたいに悟りが開けてたら、やっぱりそれは歪な気がする。
だから、わたしはそれはそれで、失敗やら挫折やら我慢も、それをすることで得られる喜びも気づきも、いっぱいして欲しいと思うのだけど。
両親には、その辺がなかなかわかって貰えない。
両親は昔気質の真面目な真っ当な人たちで
そうしてわたしという一人娘を全身全霊をかけて育ててくれた。
愛されてきたと思うし、わたしもまた愛している。
感謝してる。とても大切。
ただ
贅沢なことかもしれないが。
失敗しないように。
こうあるべきだという期待に応えるように。
いつもそれを意識してきた。させられてきた。
そして、それはやっぱり重かった。
ましてや結果的に、わたしは両親に応える事ができなかったのだから。
夫と死別し、その後のゴタゴタ……挙句、体調もハッキリせず、家事も子供らのことも充分にしてやれていない。
ポロリとこぼされる失望の言葉や無意識の皮肉はかなり辛辣で、グサリとわたしの心を抉る。
抉るけど、わたしはなるべく受け流すようにしている。
一度、爆発した時に、わたしの気持ちをわかってもらうのは年老いた両親には酷いことなのだと思い知ったから。
息子達は息子達でわたしの病気のことは知っていて、それぞれに考えてないわけではないのはわかるんだけど、そこはまだ子供。
親というものは、どれだけぶつかっても倒れない大木みたいなつもりでいる(苦笑)
でもそれはそれでいいんだと思う。
時がくれば子供は親離れしていく。
だから子供の時代くらい親は子供にとってのスーパーマンで、受け止めてやれるだけ踏ん張ってやりたい。
これはこれでかなりキツイんだけどね。
親だってやっぱりニンゲンで。
だから、むしろ弱かったりするんだってことを、わたしはこの歳になって、こんな風になってみて、やっとわかったような気がしてる。
変な言い方だけど多分、わたしよりも父のほうが、よほど繊細だ。
わたしは打たれ強い。望んでなったわけではないけど。
それでも、ヘタレながらシブトイ。
子でもあり親でもあることの苦しさにめげそうになるのは、どちらのキモチもわかってしまう時。
どちらからも責められるとキモチの行き場がなくなる。
わたしは器用ではないので、この辺の感情処理がうまくできなかったりして、それが過去の出来事やトラウマに重なって、どうにもこうにも、身動きができなくなってしまう。
それでも、これはウヌボレかもしれないけど、息子達にも両親にも、わたしというクッションが必要な気がするんだ。
正直、もう解き放たれたいと何度となく思った。
でも結局、わたしは愛しているんだと。
確かにこのポジションは、わたしの小さな器では溢れて、ボロボロと取りこぼしばかりなんだけども。それでも。
でもって、そんなギクシャク三連休の最終日に、なんとなく思い立ってメチャメチャ久しぶりに手作りおやつを。
ホットケーキミックス100円×2袋に1パック88円の卵4つばかり。後は目分量で程良く牛乳158円を入れて。
水はまったく使わず(ここポイント)
かき混ぜてフライパンで弱火にて焼く。
ポツポツ穴が開いてきて回りが乾いてきたら、ひっくり返し時っていうのは、お約束。
そんなふうにして一枚焼きあがると、大きめお皿に乗せて、表面に大瓶198円で買ってきた、子供らが好きなオレンジマーマレードを薄く塗る。
次が焼きあがると上に乗せてまたマーマレードを塗っていく。
この繰り返しの至って簡単なのがケーキモドキ。
でも、これでも5枚くらい重ねて一番上にたっぷりともう一度
マーマレードを塗るとソレっぽくなる。
久々なので記念撮影してたら下の二人が来て、手だけの出演(笑)
お兄ちゃんも加わって4人で、ちょっとしたお茶会。
不思議にホカホカホットケーキが何となく場の空気も和やかにしてくれた。
美味しいね~って、みんなで笑って。
久々の穏やかな午後。
わたしは最近過食気味なので自己規制かけたけど、後でみたらキレイに完食されてた。
嬉しかった。
まだ、してやれることある、って。
明日から学校も始まって
日常の諸々が動き出して
凹んだり、機能停止したり、重力倍増したりするんだろうな~とか思うけど。
ちいさなちいさなシアワセ。
不格好だけど、それでもこの手で生み出すことができる。
また作るからね。
マーマレードホットケーキ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
*この頃のこと*
このホットケーキを重ねて間にオレンジマーマレードを塗ったケーキもどき?は、この頃よく作ったものです(笑)
重ねた上から、生クリームを塗って、果物の缶詰で飾ってお誕生日のケーキにしたり……。
豪華なことは出来なくても、あるもので工夫するとその過程も楽しかったりして(笑)
日常生活は、かなりいっぱいいっぱいで悩みは尽きなかったけど、こういう小さなホッとする時間に救われていた気がします。
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