◇第33話◇ ” いいひと ” という呪縛
元々小心者だし、やっぱり人情的にも、誰からにしても ” キラワレタクナイ ” と思うタイプ。
振り返れば今までの、わたしの人生。
良い子でいることに、かなりの神経を使って生きてきた気がする。
おばあちゃんっ子でもあったから尚更。
タバコと言われたら灰皿とライター、じゃないけど(例としてよく言われた)ちゃんと相手の先を読んで気を利かすこと。
それから『謙譲の美徳』も、かなり厳しく言われて育った。
” 他人を先に立てて、自分は出しゃばらないこと ”
ある意味、神経質なくらいに。
これらが、いけないとは今も思っていない。
結局、相手を思いやって相手の気持ちを考えるようにって教えだもの。
大切なことだと信じているし、それを手放すつもりはない。
でも……
皮肉だけど今の世の中、それだけじゃ追いやられて踏みにじられてしまうんだってことも嫌ってほど思い知った。
” いいひと ” のように見せることは、反対にいえばとても簡単。
絶やさぬ笑顔と程よい熱心さと適度な日和見主義と迷いの無い正義感。
Oh. Wonderful life!
望まれる通りの役割。
心底のお人好しじゃ結局、踏みにじられるだけ。
嫌なら仮面を被ること。
笑顔の仮面。そうして望まれる役割を果たせば……。
でも
でも
もうそんなのいいじゃないか、って。
そう思う、わたしがいたんだ。
どう思われるか、を気にして、何とか気にいって貰おうと必死になって……。
それで?
だから、アノヒトが死んだ後、わたしは多分、変わりたいと思った。
それでも、長年の染み付いた生き方は簡単に変えられなかったけど。
踏みつけられたから踏みつけたいとは思わない。
でも、嫌われることを怖れて、自分を殺すことはもう沢山だ。
去りたいヒトは去ってくれていい。
わたしは ” いいひと ” なんかじゃない。
義務もきちんと果たせてないだろうし、期待にも応えられていない。
だから、それに幻滅してくれてもかまわない。
本当は白状すると、こう言い切ってしまうのは、小心者のわたしにとっては身体が震えるほど怖い。
でも、敢えて言い切る。
今のわたしには生きることが最優先だから
ジブンの攻撃から自分を守る為に。
敢えて、こう言い切る。
わたしはいいひとなんかじゃありません。
利己主義にもなります。
時にはヒトのココロも傷つけるでしょう。
気づかなかったというイイワケや開き直りも、みっともなく卑怯でも言うと思います。
愚痴もこうやって書くし
悪態もこうやって吐く。
この程度のニンゲンにすぎません。
◆◆◆
まだ丸虫みたいに縮こまってるが
そのうち仰向けに大の字になって
空を見ながら
叫べるようになれたらいいと思ってる。
ワタシハイイヒトナンカジャアリマセン
それが出来た時に初めて
わたしは何かの呪縛から
解放されるのかもしれない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
*この頃のこと*
夫が亡くなった後、色々な葛藤がありました。
そしてその中で、長年、信じて生きてきたことを一度手放して、ある意味、開き直らないとやっていけないと思いました。
とはいえ、生きてきた中で染み付いたものが一朝一夕に変えられるはずもなく、手放し切れないものも相変わらず沢山ある現在なのですけどね(苦笑)
必要以上に卑下したり卑屈になることはしたくないけれど、自分の卑小さとヘタレぶりは自覚しておくこと。自分をちゃんと疑って振り返ってみること。
その上で、生きていこう、と。
そう、思ったのでした。
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