◇第29話◇「命」

     「命」


 生きることから始まる。

 生きることから始める。


 命。



 ただ生きてるだけなら

 屍と変わらないじゃないかと

 何度も思った。


 でも、違ってると今ならそう言える。

 何が誰が、どう言おうとも。

 何より自分自身が、

 斜めにわらってそう言おうとも。



 苦しみ、掻き毟る、砕かれる、痛み。

 理屈じゃない、感情。


 希望持っては、まだ苦い鉄の味。

 噛み締めすぎた奥歯から。



 それでも、それはやっぱり生きているあかし


 だって今、確かに痛いって叫んでる。

 声にならない声でも、えてる。

 俯いて、

 虚無に支配されそうになるってことは

 まだ、其処に、何か、が、

 あるからじゃない?



 生きることから始まる。

 生きることから始める。


 今、生きていることを思い出せ。



 ドンキホーテ

 風車に向かって突撃でもいい。

 痛みと愚かさをしっかりと知覚して、

 時には其処から目を逸らしてもいいから

 なぁ、アタシ。



 与えられた時間の最期の瞬間まで


 いこう、往こう、生こう。



 生きることから始まる。

 生きることから始める。


 今、存在しているということ。


 この


 命。

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 *この頃のこと*


 ほとんど詩を書くことの無かった(書けなかった)時期には珍しく、それでもこの頃、日記の中に残していた詩のうちの一篇です。


*夏*梅雨から晩夏の頃のこと 

の日記の締めくくりに、この詩と、もう一篇を置いていきたいと思います。

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