◇第4話◇深海日記

 やっとパソコンを立ち上げてみたはいいが、気がつけば、ぼんやりと、ただ画面を見るとは無しに見ている。


 頭の中をひとつの歌だけがエンドレスで流れ続けていて、まるでストップのスイッチが壊れてしまったみたいだ。


 一週間、金曜日まで何とか辿りつこう、と最近はいつもそればかり。


 下二人は確かに一つのトンネルを抜けた。

 ひと頃の毎日戦場にいたような状態からすれば、どんなにか違う。

 一日休むことがあっても続けての欠席は無くなった。


 それでも、それぞれにまだまだ揺れる不安定さは内包していて、それは当たり前といえば当たり前なのだけど、学校も先生も ” 戻ってしまうこと ” を恐れているのが伝わってくる。

 決して、あからさまにではないのだけど。


 わたしには、これがかなりプレッシャーになっている。

 いや、何より、わたし自身が ” 戻りたくない ” んだと思う。

 だから、微妙な空気を読んで気にしてしまうんだ。

 今こそわたしこそが、もっと大らかな目で見て接してやるべきだとわかっているのに。


 わたし自身が自分に対して焦って恐れている。

 気を張り詰め続けること、気を配ること、自然にではなくて、作られて条件反射神経的に出てしまうモノ。

 そんなジブンに自分がイライラして押しつぶされそうになっている。

 空回りばかり。

 内部崩壊は続き、手からまた零れ落ちていく。


 子供らを潰してしまうのが怖い。

 精一杯、気をつけているつもりだけど、抑えているつもりだけど。

 もう疲れたよ……と叫び散らしてしまいそうで。


 この子達に寂しい目をさせたくない。

 もう充分、見なくてもいいものまで見てきたのだから。



 矛盾ばかり。


 わたしは親としては情けないほど弱い。

 人としても決して強くはないけれど。


 苦しくて堪らない。

 自分自身すら持て余していて。


 それでも


 この手

 やっぱり離したくない。


 うまく言葉にできない



 それでも



 ◆◆◆



 こんなんやけども

 どうしたらいいのかもわからんで

 迷いばかりやけど


 のた打ち回りながらでも

 あんたたちと。


 いつ

 この雨があがるのか

 太陽が昇る日がくるんか

 わからんけど



 親やから わたし。

 へなちょこ母さんでも


 親やもん。


 最後の砦でありたいと思うんや。


 親と子として

 こうして出逢ったんやから。


 クタクタや、もう知らん、って

 何度、思っても


 悔しいけど

 やっぱり


 愛しとる。


 三人とも、わたしの大切な息子たち。


 わたしの

 命。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


*この頃のこと*


前回の日記でも少し触れていますが、末っ子と、そして次男も、それぞれに学校に行けなくなっていた時期がありました。


次男と末っ子は勿論、そういうことが無かったお兄ちゃん(長男)も気を揉むしかなくて辛かったと思います。

みんなが迷い道に入っていて、トンネルの中を手探りで出口を必死で探していました。

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