◇第3話◇年月(としつき)回想
あと1時間半ほどで、子供を起こして朝の散歩に出かける。
今日の早朝散歩は6時からの予定。
わたしの方は、実は3時半過ぎに目が覚めた。
やっぱり昏い風景の夢をみて、眠れたという感覚がなく、脳天のあたりが鈍く痛んで、ひたすら全身がだるい。
寝汗で、ぐっしょり濡れたTシャツを着替えて顔を洗って……。
薬飲んで暫くしたら、やっと少し頭が現実に対応してきた感じ。
連続早朝散歩は、さすがにわたしの身体には堪えるようで、やっとの木曜日。
でも末っ子、すごく楽しみにしてるのがわかる。
顔が違うもの。宿題も積極的に頑張って済ませるようになってて。
生活リズムも子供にとっては良い感じになると思うんだ。
昨夜は、PC立ち上げられず、仕事できないままダウンしてしまった。
今日は日記書いて頭はっきりさせて早朝散歩に出て、子供達の朝準備の後、無事全員送り出したら、洗濯物干す。
それからとにかく仕事に集中するつもり。
PC立ち上げたら何とかなる……はず……というか、せねば。
代わりに掃除の方は壊滅的で、掃除機出す気力なく、拭き掃除もできてないから、仏壇にさえ薄っすらと埃。
バチアタリな奴め!と言われそうだけど、空のアノヒトは結構、まぁ仕方ないよと言ってくれそうな……ってこれはわたしのイイワケかな。
でも現状見てるよね?とか、つぶやきつつ……
朝の水とお茶あげながらゴメン!と手を合わせといた。
◆◆◆
早いもので、来年はまた法要の年がくる。
この年月が 、”もう” なのか、”まだ”なのか……。
少なくともわたしの中で消えることのない情景はいくつもある。
再発を聞いたあの日。
入退院と手術を繰り返し、合間に放射線や抗癌剤での治療。
電話で呼び出されて余命告知された雨の日。
最期になった、まだ動ける時に家族で行ったピクニック。
脳に転移して、いつ逝ってもおかしくないので覚悟していてください、と言われた白い壁の部屋。
それから……。
本人へ余命告知しなかったのは良かったと今でも信じてる。
その為に、ひとりで抱えなければならなかったものは重く苦しかったし、アノヒトは薄々気づいていたのかもしれないけど。
だったなら、尚更。
ひとりで病院帰りに毎日通ったラーメン屋で黙々とラーメン啜りながら、一緒に沢山のものを呑みこんだ。
人間は自分で考えていたよりも、いざとなると、強くもウソツキにもなれるもんだな、と思った。
◆◆◆
人それぞれ。
強いばかりが良いわけでもないし、
強いばかりの人間も、反対に弱いだけの人間もいない。
いろんなものが、いろんなことが、いろんな想いが絡み合って、人生の時は紡がれている。
それぞれのやり方で生きていくしか。
正しいか、間違っているか、
あの時、もし……。
今だから思うことも沢山あるけど。
その時には、そうするしかなくて。
それが、わたしの精一杯に下した決断だったから。
生きてきた人生。
その中の苦しさや辛さを、全て誰かのせいにすることだけはしたくないと思ってる。
自分の信じているものが全て正しいなんて考えるほど、自信家じゃないし、いつも矛盾とヘタレを内包しながら無様に生きているけど。
たったひとつ、人生を誰かのせいにしてしまうことだけはしない、と誓ったんだ、自分に。
やっぱり、わたしはヘタレの癖に頑固者なのかな。
こんなところだけは(苦笑)
ああ、もう6時になる。末っ子を起こして早朝散歩に行こう。
今日も晴れて暑くなりそうだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
*この頃のこと*
末っ子が学校に行きたがらない時期がかなり続いていました。
何とか少しでも朝の楽しみを作って気分を明るくできないかなと考えたのが朝の散歩。
近くのコンビニまで一緒に歩いて行って、好きなお菓子を一つ選ばせて(お兄ちゃんたちにも一緒のを)買って帰ってくる(この朝の散歩は基本、末っ子だけでしたが、
それだけなんですが、わたしにとってもいい気分転換になってました。
子育てでも壁にぶつかって、親としても試行錯誤していた頃です。
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